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第50話 アーロンvsサイ

 アーロンは身を挺してサイの化け物を押さえつけていた。


「コイツの突進力はスゲェな。下手打てばこっちが押されちまう……」


 アーロンはギルドメンバーの中で一番筋力があると自負している。


 だが相手の突進力は異常だ。まるで戦車のように突っ込んでくる。


「サイってこんな押してくんのかよルドルフ!ってアイツは今空の上か……」


 アーロンが恵まれていたのはこの魔物の攻撃手段が今のところ突進くらいしか無いことか……今の状態で波動砲なんて撃たれたらそのまま腹に風穴があいてしまう。とは言えこのまま相撲を取っていても仕方がない。


「だが俺様にも意地がある。絶対に譲らねぇ。でないと……」


 アーロンはそう意地を張った。頭の中に浮かぶのはレンを始めとした仲間たち、そして……


「俺様の子供に良い所見せられねぇだろうがよ!」


 アーロンはそう叫んで肩透かしでサイの突進を受け流す。


 そして背中を向けた一瞬に手に持ったハルバードの斧の部分を叩きつけた。


(斬れねぇ……この斧と俺様の怪力が合わされば巨人族でも血を流すというのに)


 サイの身体には丈夫な鎧が付いていることは分かった。


(しかもこれはハズレ個体だな。異様に丈夫すぎる……マスター辺りが従魔にすれば立派な盾として機能するだろう。だが敵としてはハズレくじだ!)



 しかも彼にとって意外だったのはこのサイのスピードが常軌を逸していたことだった。


 サイはすぐに方向転換し突っ込んでくる。


「おっ!」


 サイの角とアーロンの刃が交差し金属音を立てる。


「流石魔物のサイ。角も脅威ってか……っておい!」


 アーロンが気づくとそのサイは口を開けエネルギーを溜めていた。


「おいおいこれ撃ってくるのかよ。まさに戦車じゃねぇか!」


 アーロンは避けることも考えたが後ろを見て止めた。動き回っていたせいで場所が最初の想定からズレ後ろにはリザードマンが避難していたからだ。


「避けちまえばアイツらは灰だろうな……困った役回りを押し付けられたもんだぜ全くよ……」


 アーロンは笑っていた。ここまで絶望的な状況なら逆に笑えるというのは本当らしい。


「さぁさぁ!俺様にどこまでぶつかれるか試してやるよ!」


 アーロンはそう叫んで向かい合う。流石のサイも疲労したらしく呼吸が荒いのは動いている腹を見ても分かる。


 サイはまた突進してきた。アーロンはそれをまた受け止めるしかし……


「頑張れー!オーガのオッサンたち!」


「頑張れー!」


「やっちまえ!」


 後ろからリザードマンの子供たちだろうか応援の声が届いてくる。それはアーロンだけに向けられたものではないだろうが娘を持つアーロンの心には強く響いた。


「俺様が止めなきゃマスターや娘、そして何よりこいつ等に迷惑がかかる……ここは親父の雄姿を伝えさせるか!」


 アーロンは一世一代の馬鹿力を出した。


「うおおおおおおおおお!」


 アーロンはサイを持ち上げた。


「うおおおおおおおおお!」


 アーロンはそのままサイを横に押し倒す。サイは横たわった。


 そのまま近づいていき、腹を触る。やはり背中が堅い分腹には鎧が無いようだ。


「さっきの腹の動きから推察していたがまさかこんな弱点があるとはな……」


 サイは起き上がれなかった。アーロンはその隙をついてハルバードを振りぬいた。サイの腹から血が出る。


「一発で楽にしてやる」


 アーロンは冷静に歩みを進めるとハルバードを振り上げ、一気に頸を切り落とした。

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