第49話 マリアvsゴーレム
マリアは横目で魚と格闘するネコマールを見ていた。
「そうか……ネコマールも頑張っているんだな。同じ剣士として負ける訳にはいかない」
マリアはそう呟きながら目の前の敵に向かい合う。敵はゴーレム、古代から戦闘要員として使われ巨体で敵をなぎ倒す人造兵器。マリア自身も長身であるとは自負しているが目の前のゴーレムはその倍以上4m弱はある。
マリアは両手で剣を持って構える。彼女の剣はずっと前の時代にとあるダンジョンで手に入れたAランクの両手剣であり寝る時でさえ寝台の一番近くに置くほど大事にしている。そのおかげか剣は彼女に適応し手足の延長線上として扱えるようになっていた。
ゴーレムは無言で腕を動かす。その腕は人間では考えられないほど太く、マリアは剣でそれを受けとめる。しかし倍近くある生物同士の力比べだ当然小さい方が弱いのは必然。
「くっ!」
マリアは吹き飛ばされ何とか足で踏ん張る。剣に目をやるとさすがは大業物これほどの衝撃を受けて刃こぼれ一つしていない。
ゴーレムの方もダメージが無いわけでは無く、身体の一部を構成する石がボロッと転げ落ちる。しかしグラントの「回復しろ」の合図ですぐに周囲の地面も巻き込んで集結してしまい、より大きさが増してしまう。
(ゴーレムを倒すには中にあるコアを突くんだったか。これでどう突けばいいんだ……)
マリアは自力で回復しながらそう思案した。
「だがここで止めたら絶対に帝都に侵攻される。この巨体に侵攻されたら決して少なくない被害が出る……」
皇帝の城、自分の家、いつも酒を飲んでいる酒場、そして……親愛なる主人と仲間のギルド。どれも決して奪わせてはならないものだ。
「ここで負けたらいつも共に修行しているネコマールとジョージにどういわれるか分かった物じゃない。特にネコマールに至っては確実に私をバカにするだろう……」
マリアはネコマールが加入してからいつも地下闘技場で剣を交えていた。マリアは両手剣、ネコマールは日本刀で剣術も何もかもが違うけれど他流の相手と斬りあうのは良い修行になった。戦績はいつもマリアが油断したネコマールを吹き飛ばして終わる。
その時ボンと音がしてゴーレムの反応が鈍る。マリアも視線を送るとそこではネコマールが魚を陸に吹き飛ばしている所だった。
「あの猫……もうそこまで剣を極めていたのか?!」
マリアは衝撃に包まれるとともに、頭の中に「え?マリア殿負けたでござるか?拙者は勝ったでござるがw」と半笑いの猫が浮かび上がる。
(負けるわけにはいかない)
マリアは再び足を踏ん張ってゴーレムに向かった。
「だが自分の得意なフィールドに持ち込むという点では参考になったな」
マリアはネコマールについてもう一つ思い出していた。
「マリア殿。貴殿に拙者の国に伝わるある剣術を伝授したい」
そう言われたことを……
マリアは剣の柄に嵌まっている宝石に触れる。
「覚悟しろ」
マリアは俊足でゴーレムに走りに行く。ゴーレムは反応したが生憎の巨体指示を出すのにもラグがあるらしい。
マリアは走りながら居合斬りでゴーレムを斬りつけた。
「まさかあの猫の技を借りることになるとはな……」
マリアはゴーレムを切り裂いたが核に届いてはおらず、これで致命傷にならない。ゴーレムが巨体で襲い掛かって来るがマリアは振り返らない。
ゴーレムの巨腕がマリアを殴ろうとしたところで腕が止まった。
マリアがゆっくり振り返るとゴーレムの色が変わっている。具体的には青々とした緑色に……
「地面から生まれたゴーレムなら植物も育つか」
マリアは斬ったのではない剣先に魔力で急速成長する植物の種を埋め、ゴーレムに埋め込んだのだ。植物はマリアから流し込まれた魔力で、やがてゴーレム自身の魔力を吸収し成長する。そして身体から植物が生えた時にはもう遅いゴーレム自身の意思に反し身体を縛り付け、やがてその圧力に耐えきれず身体が砕けていく。そして真ん中に赤々とした核が……
「ついに正体を現したな。食らえ!」
マリアはまた突進し剣先で核を捉えて砕き切ったのだった。
核を喪ったゴーレムはもう土塊に同じ、脅威ではなくマリアは剣を収めたのだった。




