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第41話 雷神サラと風神ネコマール

 最初に動いたのはサラだった。『雷神の脚』で地面を高速で蹴り上げ飛び上がる。青髪の大鬼族の方は今まで見下していた相手が急に見上げる高さになったので動揺するが振り下ろされるナイフを腕の防具で受け止める。その防具の先には鉤爪が付いており近接戦闘もできるようになっているらしくそのままサラを引っ掻こうとする。しかしそうは問屋が降ろさない。


「サラ殿喧嘩を売られたならば援護するでござる!」


 居合の型を取ったネコマールが刀を振りぬく。それを見た緑髪の大鬼族は侮る。こんな下からの攻撃など何度も受け慣れているからだ。


「こんな斬撃でアタシの身体に傷がつくとでも?このまま踏みつけてやる!」


「これがただの斬撃であるならばな」


 ネコマールはほくそ笑む。


「避けろアスナ!」


「っ?!」


 後ろで見ていた赤髪の鬼の叫びでのけぞって避ける。いつの間にか彼女の背後の壁には巨大な刀傷があった。


「ざ、斬撃を飛ばした?どんな速さで刀を振りぬいてるのよ!」


「ニャハハハ!だから言ったでござろう。鬼狩りはこの侍ネコマールの仕事だと。この風来斬を見切れただけでも凄いことでござるよ」


 二人は上手くけん制しているようだ。僕はと言うとあの赤髪の担当かぁ……正直僕としてはあんま帝都で騒ぎたくないから傷が浅いうちに撤退させよう。


「二人とも!遊びはここまでにして早く戻るよ。慣らし運転は別のところでやろう」

「「御意」」


 そう言ってサラとネコマールを連れ、吠えるガルと軍曹を車に押し込んでスタコラさっさと別の道に走って行く……つもりだったのだが赤髪の腕が離してくれない。


「ちょ……僕のメカと張り合う力とか相当じゃん」


「相当って……これでもアタイの力は巨人族よりは弱いはずだぜ?」


「非力な僕にとってはどっちも一緒!」


「ねぇアンタ。ギルドマスターのレンだろ?」


「は、はぁ……」


 良く僕の名前を知ってるなぁ……僕は帝都に来てまだ半年も経っていないしマスターになってから大きなことと言えばタイガ関連のことくらい。後はその事後処理で他のマスターや皇帝陛下以下帝国中枢に少しは名前を売ったかもしれないが。それでも自分がマスターで名前まで知っているというのは珍しい。それこそ身内で話でも漏れてなきゃね。


「良く知ってますね」


「当然さ。だってアタイは……」


 彼女が何か言いかけたところで足音がしてくる。


「喧嘩をやめろ~!」


 勇ましい女性に率いられた衛兵集団がやって来た。いや何で衛兵なんて呼ばれなきゃならないのさ!こっちだって問題を押し付けられただけなのに。


「チッ、行くよ」


 大鬼族の集団は去っていくので僕らだけ残された。僕らもこのまま帰ろうとするが、流石に衛兵が見逃してはくれない。


「あのぉ……見逃してはくれませんか?」


「ダメです」


 最大限の懇願も効かず、そのまま僕らは女性衛兵長に詰所に引きずられていった。



 僕らは一時間くらい事情を聞かれてようやく解放された。


 そしたら騒ぎを聞きつけたのか目の前に紙袋を抱えたルドルフがいた。ルドルフめ僕らが取り調べられている間にパチンコ打って来たな?


「マスター。厄介な喧嘩に巻き込まれましたね……相手が悪すぎる」


「ルドルフは分かってくれるねぇ」


「まったくサイズが違う大鬼族と巨人族には手を出さないって言うのが帝都の鉄則ですぜ?」


「そんなこと言ったって車の慣らし運転をしてたらカナタに会ってその……」


 僕はルドルフに一連の経緯を話す。


「これなら俺と一緒にパチスロでも打ちに行った方が良かったでしょう。競艇でも良いですよ?マスターは幸運値も高いから大穴当たるかもしれません」


「えぇ競馬って楽しいの?」


「良ければ今度一緒に行きましょう。マリアとかエレーナには内緒で……っと今はそれじゃなくてマスターのことを呼んでいる人がいるって言うから呼びに来たんですよ」


「了解。じゃあその人の所に案内して」



 そうして僕らは帰っていった。



 しかしあの大鬼族の女性。どこかで見たことある気がするんだよなぁ……

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