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第40話 一触即発

 数トンはあるメカを急に持ち上げられたので僕はビックリした。どんなバカ力だよ……


 恐る恐る後ろを振り返るとそこには女性の顔があった。


「うわぁ!あなたがもち上げたの?!」


 その驚きはすぐに納得へ変化した。なぜならこの女性は赤髪褐色の大柄な女性でいわゆる大鬼族だったからだ。いや大鬼族でも十分ビックリするけどね。


 ウチに大鬼族のアーロンがいるから慣れてる気がするけどそもそも都市でなかなか目にするものではないし。何なら大きさで目立つし。身長に関しては僕より大きい……と言うだけでは参考にもならないので具体的な数値を言うと多分240㎝くらいじゃないだろうか。アーロンより少し小さいくらいか。どちらにせよ僕は今危機に瀕している。これだけの存在が持ち上げているんだよ?下ではサラとネコマールが慌てている。


「お、大鬼族?!何でそんな巨大な種族が……」


「分からんでござる。あ!カナタ殿。貴方様はギルドマスターだから何か分かるのでは?」


「まぁ大鬼族だね。彼女でも小さ目のサイズだし、その上の巨人族に至っては大鬼族すら霞む大きさだよ」


 下を見るとサラとネコマールは既に武器を構えている。カナタの周りにいた女性たちは騒ぎの大きさに怯えて逃げ去っていったものが多い。逃げてないのは同じ冒険者かな?



 一同が騒ぐ中。大鬼族の女性が口を開く。


「アンタらが騒ぎの元凶?」


「さ、騒ぎの元凶て僕らはただ喧嘩をカナタに吹っ掛けられただけで」


「えぇ?僕らが喧嘩を吹っ掛けたことにするのかい?」


「女子会の邪魔なんだけどさぁ……」


 彼女は親指で後ろの店を指す。そこは酒場を模したカフェらしい。のぼりには「酒!」の代わりに「ミルクティー!」と豪快に書かれている。確かに僕らの世代ではこういう店が人気だけども……


 その店の中から他の大鬼族の女性がぞろぞろ現れる。


「ん?何々?」


「アタシらの女子会邪魔したのこのガキなの?」


「うん。コイツこの背でギルドマスターだってさw」


「は?その身長でオモチャに乗ってるのに?」


 オモチャに乗る子供……彼女たちのサイズから見たらそうなのかもしれない。でもこれは古代技術のメカなんだ!


 サソリメカのダッシュボードのボタンを押すとサソリの尻から一本の太い鉤付きワイヤーが飛んで行って向かいの店の壁に刺さった。そしてレバーをゆっくり引いていくと、ワイヤーが巻かれていく。大鬼族は怪力を誇るがこのウインチと綱引きして勝つことはできまい……そう思っていた時期が僕にもありました。



「ん?チッこのメカ案外力つえーぞ?」


 眼かを持ち上げていた女性との綱引きには勝てそうだった。しかし僕の頭の中に複数人で引かれるという発想は何故かなかったのである。


「オイお前らも一緒に引けよ」


「りょーかい!」


 金髪の大鬼ギャルや大人しそうな同族も共に引く。すると今度はウインチの方が耐えられない。とは言ってもこの鉤爪は高い高度を誇る壁をよじ登る時に使うんだから当然だ。と思っていたら力がありすぎて鉤爪を壁ごと引き抜かれてしまった。


「えぇ!!!これ早速故障?!」


「よ~し。たっぷりと分からせてやろうな?」


 僕はビビって下を見る。カナタに何とかしてもらおうとしたのだ。すると彼は……


「あ、レン。僕に協力を仰ぐつもりかい?悪いけど僕はレディーに手を上げる趣味は無くてね」


「嘘つき。前の城ではアーロンとマリアのけんかを止めた癖に。その真実は?」


「キレたメスゴリラ数匹を相手にする訓練は積んでないからデス」


 カナタァァァ!

 もう一方は頼りになる。ネコマールは刀に手をかけていた。


「レン殿。我が主殿よいつでもご命令を。東洋の書物にあります。鬼を狩るのはいつでも侍だと……」


「ウチもいつでも行けるよ。雷の精霊の力見せてやんよ!」


 二人は既に臨戦態勢。僕も機械に搭載された武器を思い出す。一触即発の空気である。

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