第30話 一宿一飯の恩
僕は目の前の男に急に倒れられたので驚いたけど、流石にこのまま路上に放置しておくわけにもいかない。
「アーロン……担いでギルドに連れ帰ってくれないかな」
「御意」
一応アーロンに担がせてギルドに戻ることにした。
それで今ギルド近くの食堂でご飯を食べさせているのだが……
「美味い美味い美味い!」
めっちゃガツガツ食うじゃん……
「いやぁ、助かったでござる」
「そ、それは良かったよ」
僕は感謝される。拾った男は僕とあまり変わらない背をしているが人間族ではなく猫の頭がついていた。本人曰く猫の獣人族だという。東の島国では一般的だという着物を着こなしてこちらを見てくる。
「まさか飯を三人前も奢っていただけるとは」
「その三人前の内一つは僕の分だけどね?!まぁちゃんとお金払ってよ?ただじゃないんだから」
「え?奢ってくれないでござるか?」
「三人前も奢れるわけないよ!ね?マリア」
「そうだな。最近は物価も高いしレンに奢られるなど本来100年早いな」
そう言う意味でも無いけどね。と思っていたらまた倒れこんだ。
「うわあ!急に拙者の意識が奪われ……」
「狸寝入りは止めろ。猫男」
「猫男と言う名は止めろ!拙者には既にネコマールと言う立派な名が存在するのだぞ!」
ネコマールと言った男は少しだけマリアに怒る。
「拙者は東方からやって来ていてな。この土地に来るのは初めてなのだ。しかし良い方々に巡り合えた!飯もうまいし部屋は暖かいし最高でござるよ」
ネコマールはそう上を向いて言ってきた。
その時
「おい!このマズい飯が食えるかよ!」
椅子を蹴飛ばす音が響いた。見てみるとそこにいたのは札付きの悪人の男だった。
店員が寄って来るが男たちはそれを睨みつける。
「な、何か混入していましたでしょうか……」
「マじぃんだよ!毒でも入れてんのか!これでこの金額はぼったくりだろうよ」
「そうだそうだ!アニキはなァ……今競馬で負けた恨みで気が立ちまくってんだよ。近づくと死ぬぜ?」
他の男も威張り倒す。
「し、しかし……そんなめちゃくちゃなことを言われても」
「土下座すれば許してやらんことも無いがな」
札付きの男たちはそう店員を睨みつける。
「し、しかし……」
「うるせぇんだよ!」
そう言って男どもは暴れだす。こうなっては僕らが止めるしか方法もない。
「やめてくださいよ。皆怖がってるじゃないですか」
とりあえず簡単な話をしてみる。がそれも逆鱗に触れたらしい。せっかくの説得術も本物のバカ相手には意味なしか。
「これでも食らいやがれ!」
男は僕に皿を投げつけてくる。痛いだろうなぁ……一瞬で激怒したマリアとアーロンが反応し迎え撃とうとするが。実際にそれを止めたのは別の笠だった。
ネコマールは笠を盾のようにして皿を防いだ。
「何だ貴様は!」
「レンと言ったでござるな。ここは手出し無用。ここはこの男ネコマール一宿一飯の恩を返させていただく」
「何だとチビ猫!」
男たちはネコマールに剣を振り下ろす。しかしそれは笠で防がれる。
「この笠は鉄線葦で編まれた代物。素人剣士のナマクラなど通さんでござる」
そしてネコマールの手に握られていたのは鞘に収まった日本刀。東の果てに伝わっているとも言われるもので実際に目にするのは初めてだ。
「行くでござるよ『三毛丸』」
そして一瞬でならず者を一閃して倒した。
「峰打ちに留めたので心配は無用。ただ5分は昏倒するかもしれないでござるが」
ネコマールはそう言って刀を収めた。




