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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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五十六頁    牛 弐   『偵察』

 五十六頁

 

 牛 弐

 

『偵察』

 

「アイツ‼︎ マジヤバ過ぎなんだけど⁉︎」

 

「ヤバいよ……もう、関わらない方が良いのかも……」

 

 前日の放課後に、三上の狂気を垣間見て、二人は教室で震え上がっていた。

 

「しかも何も無かったみたいな顔で授業受けてるし‼︎」

 

「ウチらじゃどうしようも無いよあの人‼︎」

 

「でも、希望を捨てる訳にはいかない……ウチはまだ、この学園生活を諦めたく無いんだよ‼︎」

 

「……晶ちゃんがそこまで言うなら。分かった。目には目を歯には歯を、女神に対抗する為、鬼と悪魔の手を借りよう」

 

「鬼と悪魔……ごめん、ウチそういうスピリチュアルなやつ受け付け無いんだ……」

 

 牛嶋は嶋牛にそういった嗜好が出来たのかと勘違いした。

 

「あっ、違う違う。黒魔術とか言いたい訳じゃ無いから。一年の時に同じクラスだったんだよ!」

 

「鬼と悪魔が⁉︎」

 

「あだ名ね? 鬼釜尚子と阿久津真央、周りから鬼、悪魔と呼ばれ恐れられていたんだ」

 

「そんなあだ名、よくその二人受け入れてたね?」

 

 それをいうと、女神と天使などというあだ名を普通に使っているのも異常だ。

 

「二人は喜んでさえいたよ。でも……この二人に頼るのは、蛇の道を進む事になりかねないよ?」

 

「どういう事?」

 

「はっきり言って、性格が悪過ぎる。人の不幸を糧に生きてる様な人間なんだ。関わりを持って、もしもウチらが目を付けられる事になってしまったら……」

 

「じゃあ、何でさやかはそんな提案を……?」

 

「晶ちゃんが、この学園生活を諦めたくないって言ったから……ウチの出せる案はその位。決めるのは、晶ちゃんだよ?」

 

「さやかは……どうしたい?」

 

「晶ちゃんが、望む様にしたい」

 

「……分かった。一緒に、スクールカーストの最上位まで行こう!」

 

「うん!」

 

 この学園には、学年毎に四クラスずつあり、本人にその意思は無いのだが、女神の牛耳るこの二人のクラスは二年一組だった。鬼釜尚子と阿久津真央はどちらも二年二組に居るとの事だった。

 

 二人は昼休み、隣のクラスを覗きに行った。

 

「あっ、晶ちゃんあれ! あの子が鬼釜だよ!」

 

「あの机に座ってる奴だね?」

 

 嶋牛は指をさしたりしなかったのだが、牛嶋はその女の異様なオーラを感じ取り、三、四人程で屯しているグループの中から、鬼釜を一発で的中させた。

 

「うわぁ、知らない子も居るな。鬼釜とはほとんど喋った事なんて無いから、どうやってコンタクト取ろう……」

 

「……ま、まぁ、今日は下見で来ただけだし、方法はまた後々考えれば良いじゃん?」

 

「そ、そうだね……」

 

「悪魔はどれ?」

 

「今は居ないみたい」

 

 二人は、本当はビビっていた。この日、昼休みのこの時に、二年二組の教室の前に居なければ、ずっと遠目で眺めるだけで声も掛けられず、鬼、悪魔と関わる事も、女神や小鳥と関わる事すら無かったのだろう。

 

「ねぇ? 私の話ししてる?」

 

 二人は振り返り、嶋牛の顔は青褪めた。

 

「あ、あく、つ、さん……?」

 

「あれ? さっきまで悪魔って呼んで無かったっけ?」

 

 嶋牛は牛嶋の右手を咄嗟に握った。

 

「あ、あの、その……」

 

 嶋牛の恐怖に震える姿を見て、牛嶋はその左手を強く握り返した。

 

「あくぅんまぉさんですよね? すいません。ウチにゃちょっと滑舌悪きゅて!」

 

 牛嶋はあくまでも、フルネームで呼んでました感を出した。

 

「あぁ、そうなの? で? 私に何か用?」

 

「あ、あの……」

 

 こういう時、嶋牛はいつも口籠もってしまう。

 

「う、ウチら! 鬼釜さんと阿久津さんと、仲良しになりたいんです‼︎ そ、それで、こうやって覗きに……」

 

「へぇー、仲良くなりたい子の居るクラス覗きに来るんだ? 気持ち悪いね!」

 

 阿久津は笑顔で応えた。

 

「う、ウチら、あの……」

 

「冗談だよ! 仲良くなりたいって、言ってくれたもんね? だったらこんな冗談も、通じる筈だよね?」

 

「え? は、はい……」

 

「笑いなよ? もしかして、面白く無かった?」

 

「お、面白かったです……」

 

「良かったぁ! さぁさぁ‼︎ 笑って? 面白かったんでしょ? 笑って? ね? 笑って笑って! 笑って笑って‼︎」

 

「あ、あ、あ、はい‼︎ アッハッハッ、アッハッハッ‼︎」

 

「もっと笑って? あなたは? 笑って? 笑って⁉︎」

 

「は、はい。あ、あ、アッハッハッ、アッハッハッ‼︎」

 

「笑って笑って? ねぇ笑って⁉︎」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎」

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハッ‼︎」

 

「別に滑舌良くない?」

 

「えっ?」

 

「へっ?」

 

「滑舌悪いとか言って無かったっけ? 普通に喋れてるよね?」

 

「あ、あの……」

 

 二人はこの時、もうスクールカーストがどうとかどうでもよくなっていた。

 

 逃げたい。二人で穏やかに過ごしたい。そんな想いで満たされていた。

 

「別にいいの! 悪魔って呼んでくれて良いんだよ? 慣れてるから」

 

「そ、そんな、それは……」

 

「ただね? 裏でだけ呼び方変える奴苛つくんだよね? 分かるよね?」

 

「わ、分かります……」

 

「良かった。分かってくれるんだね? で? 二人は何組なの?」

 

「一組です……」

 

「一組の子は一組の子と仲良くすれば良いんじゃ無いの?」

 

「そ、それが……ちょっと色々あって……でも、ご迷惑なら別に!」

 

「分かった。話し聞くよ?」

 

「そ、そんな、無理なさらず……昼休み終わっちゃいますし」

 

「そうだね。放課後、ゆっくり話しましょう」

 

「えっ……」

 

 二人は、放課後阿久津とゆっくり話しをする事になった。

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