五十五頁 女神 漆 『懇願』
五十五頁
女神 漆
『懇願』
何でだよ十六文字⁉︎ 何でわたしに協力してくれない⁉︎ 催眠術でまた人殺す体験させてくれよ⁉︎ 逃げんなよ‼︎
屋上で十六文字を逃してから、教室で会う度いつも懇願している。でも、いつも断られてしまう……
「き、今日はやってくれんだろ? なっ⁉︎」
「催眠を掛けるのは了承しました! でも、マジで怖いんです‼︎ だから、もう一人付き添ってくれる人を用意して下さい!」
「で、でも……恥ずかしいじゃん……?」
「何が恥ずかしいんですか⁉︎ ってか恥ずかしいんですか? わたくしにしかデメリットないと思ってましたけど、あなたにもそんな感情あるんですね?」
「あるよ‼︎ 催眠中の自分を見た訳じゃ無いけど、きっと悦に浸ってアヘアヘ言ってる訳でしょ? そんなの、他の子に見せらんないよ……」
「羞恥心とか、あったんですね?」
「どういう意味?」
「いえ、何でもありません……」
十六文字は、付き添い人を設けないとわたしの願いを聞いてはくれない。
居るか? 誰なら恥ずかしくない? 身近な奴、佑羽は……無理無理‼︎ そんな醜態、見せたく無い! 猫宮は? 何だろ、ちょっと嫌だ。兎咲や犬養、兎咲は最近学校来て無いし、でも犬養は良いかも?
休み時間に、近くの席の犬養に声を掛けてみた。
「ねぇ? 放課後、残ってくれない?」
犬養の表情が、一気に青褪めた。
「あ、あぷッ‼︎ あ、あの、あ、あ、あたし……よ、用事あるから……」
「はっ?」
「用事あるから⁉︎」
嫌われてる? 傷付くんだけど? き、傷付いちゃったらさぁ? あ、アヘアヘ、ど、どうやってコロ……コロ? コロコロコロコロコロコロコロコロコロンコロォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ‼︎ ダァァァァべエェェェェェェェェェェッ‼︎ 駄目‼︎ ダメダメッ‼︎ 殺しちゃダメ‼︎ メッメッ‼︎
えへへ……だっでぇ‼︎ 催眠で‼︎ 何回も‼︎ 何人も‼︎ ゴロぜるんだもなぁ⁉︎ 本当に殺したら、捕まって、誰も殺せない。
犬養は駄目なのか? あとは……小鳥……?
いや、マジかよ。アイツしか頼る奴居ねぇの? 確かにアイツなら、別にわたしの醜い部分見せたって構わない。でも、何か嫌なんだよな……つっても、一年の時仲良かった奴とか上辺だけだし、そんな姿見せたら、最悪通報されかねない。
背に腹は代えられない。小鳥に頼ってみよう。その前に、十六文字に声を掛けた。
「今日放課後、頼むぞ?」
近付き、小声で話し掛けた。
「ヒィッ⁉︎ つ、付き添い人、見つかったんですか?」
「アァ……」
クククッ……どれだけ待ち侘びた事かァッ⁉︎ きょ、今日‼︎ いける……果てまで、イける……
放課後、すぐさま小鳥の前まで立ち寄った。
「こ、小鳥ィィィィィイッ?」
「はっ? 何?」
コイツ、本当に物怖じしねぇな?
「今日さぁ? これからちょっと付き合ってくれないか?」
「嫌なんだけど?」
断られたし。
「ち、違う! 悪い意味じゃ無いんだ‼︎ 頼むよ! お前しか頼める奴いねぇんだよ⁉︎」
情に訴え掛けてやる。
「はっ? ……分かったよ」
ヒハハッ‼︎ 単純だなお前? でも、ありがとよ。
「それじゃあこっちに……」
「明日ね」
「へっ?」
「今日無理なの。明日だったら大丈夫だから」
アァァァァァァァァァァアッ⁉︎
居るかッ⁉︎ 放課後どうしても無下に出来ない用事のある女子校生なんて居んのかッ⁉︎
「今日が良いんだよぉォォォォォォォォッ‼︎ 頼むよ‼︎ もう、おあずけは懲り懲りだよ。限界なんだよ……」
「何言ってんの⁉︎ 私だって用事あんだけど‼︎ 子供じゃ無いんだから我慢しなさい‼︎」
「そんなァ……」
小鳥は帰ってしまった。でも、ワクワクしてたのに。今日催眠でだけどいっぱい人殺せると思ってワクワクしてたのに‼︎ ……取り敢えず、十六文字を屋上に連れてくか。
もしかしたらやってくれるかもしれない。縄も用意してたんだ自分を縛る縄を‼︎ ……頼むよ。もう、もうさ……本当にやってしまおうかとか思っちゃうレベルな訳よ。
十六文字を連れ、屋上まで来た。
「三上さん? 付き添ってくれる方というのは?」
もォォォォッ! 何でも良い‼︎ 殺す‼︎ お前を殺す‼︎ そうされたくなければ催眠掛けろオラァッ‼︎ なんて言ったら、今回は催眠掛けてくれたとしても、二度と催眠掛けてくれないよね? どうしよ……ねぇどうしよ……?
「さ、催眠……」
「だから、付き添い居ないとやらないって言ってるじゃないですか‼︎」
その時、十六文字の後ろの屋上へ続くドアが開いたり閉じたりしている事に気付いた。
「あそこ‼︎」
「へっ?」
わたしはドアまで駆け寄って、ノブを掴み開いた。そこには……よく知らない二人組が居た。
「えっ⁉︎ 牛嶋さんと嶋牛さん⁉︎」
十六文字は名前を知っている様だった。
「えっ、えっ、あの……」
「ウチら……なんていうか……」
顔はなんか見た事あんな? たまたま屋上来たのか? ってかよく来たァァァァァァァァァァアッ‼︎ お前らが‼︎ 付き添い人になってくれよ‼︎
「よく来てくれた‼︎ お、オイ十六文字? コイツらだよ呼んでた奴は‼︎ なァッ⁉︎ やってくれんだろ⁉︎ 催眠してくれるよなぁ⁉︎」
「えぇっ……本当に三上さんに呼ばれて来たんですかあなた達? 何かめっちゃしどろもどろでしたけど?」
「だよなぁ⁉︎ お前ら‼︎」
何処の誰かも知らんけど。
「そ、そうです……」
「え、あの? つ、付き添い人? として来ました……」
グッジョブ!
「分かりました。それでは三上さんを縄で拘束して下さい」
あっ、あっ、あっ、やっだァァッ……あ、アハハ、アハハハハ……
「えっ?」
「えぇッ⁉︎」
疑問持つなし⁉︎ 黙って言う通りにやれよ‼︎
催眠状態のわたしが暴走しない様に縄で縛ってもらい、その時は訪れた。
あ、アァァァァァァァァァァァァアッ‼︎
嬉しい。うれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいうれしいッ‼︎ み、み、み、皆殺しィィィィィイッ‼︎
「チックッタックチックッタック」
……はぁっ?
「あなたは、これから大量殺人を行います。準備は良いですか?」
……はぁっ⁉︎
「十六文字?」
「えっ⁉︎ 掛かってない……?」
「掛かってねぇよ」
楽しみにしてたのによォォォォッ⁉︎
「ちょっ! わたくしにも理由分かりません‼︎」
「ふざけんなっ‼︎ それでも催眠術師かよッ⁉︎」
「あの……? これ何しようとしてたんですか?」
牛が聞いて来た。
「皆殺しにする催眠掛けてもらう筈だったんだよ‼︎ それが何だこれ? 茶番じゃねぇかクソがッ‼︎ 縄解けよ‼︎ オラッ‼︎ 縄解けよ⁉︎」
「み、皆殺しって……あの?」
「わたくし本気でやりましたもん‼︎ ってか、縄は付き添いの人に解いてもらうという事で‼︎ わたくし、帰らせてもらいますからね‼︎」
「んだテメェ⁉︎ あ……あ、あ、あ……殺すぞ? ってもう居ねぇじゃねぇかクソ野郎がよぉ⁉︎」
は、は、はぁ? もう、あの体験は味わえないの?
「う、ウチら何も悪く無いですからね⁉︎」
「ま、また明日ァァァァァァァァアッ‼︎」
縄を解いてくれた二人に言われた。そして、縄を解いて速攻で帰って行った。
顔はなんとなく覚えた。名前は……なんだっけ? でも、縄解いてくれてありがとね?




