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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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九十六頁    悪魔 弐   『悪魔の黙示録 ⑦』

 九十六頁

 

 悪魔 弐

 

『悪魔の黙示録 ⑦』

 

 私の人生の主人公は、誰だったんだろう? いつからか、こんな人生を俯瞰で見る様になっていた。

 

 可哀想だな。父親からあんな扱いを受けて、何で生きていようと思うの? あの日から、家の中は地獄でしか無かった筈なのに、何を? 何の希望なんて持って生きて来たの? 死ねばいいのに。

 

 小学生の時は、無闇に人を傷付けたよね? 周りの人間が憎くて仕方無かったんだ。平凡に、愛されて生きて来た同級生が憎かったんだ。私が異常なだけなのに、周りの奴が憎たらしくて、どうしようも無くて、他人を傷付ける事でしか生きる意味を見出せなかった。そんな奴、死ねばいいのに。

 

 鬼釜と小泉に出逢って、二人は、私に夢をくれた。「それなら、あなたを笑顔で殺してくれる友達を作ろう」その言葉を貰って私は、一人で死ぬ事を諦めたんだ。

 

 それから私は、友達をたくさん作ったよ? なのに、楽しい事なんて何も無かった。だって、私には欠けてるの。他人と居て、楽しいと思う心が無いの。

 

 何をもって友達と言えるのかが分からなかった。だから、ドラマとか小説とかの友達の定義を押し付けた。必死で、頑張っている私の言動に、苦笑いする同級生の名前をノートに書き連ねた。

 

 だって、このまま大人になったら、地獄だよ? 私が十代までに死ねなかったって事は、周りに居たオマエ達が不甲斐無かったって事だよね? 私がこのまま死ねずに大人になったら、ノートに書いてあるお前ら全員に復讐する日々が始まる。

 

 結婚でもするのか? 私を殺してくれなかったくせに。家に火を点けて、笑い声を悲鳴に変えてやる。私にしたらどっちも同じ音にしか聞こえ無いんだよ。

 

 キャリアウーマンって道もあるなぁ? 私を殺してくれなかった癖に。近しい奴らリサーチして、あらぬ噂でも流してやるか? 面倒臭いな。家燃やすのが手っ取り早いか。

 

 そんなノートが、不必要になる事を願ってたんだ。その前に誰かが私を殺してくれれば、そのノートは必要無くなるんだ。三上、恵理奈だと思ったんだ。あの屋上で初めて出逢った時、一目見た時に、ビビッと感じる物があったんだ。初めて出逢った時彼女は、心の友達とお喋りしていた。私と同じだった。きっと彼女も……

 

 

 ————————

 

 

「悪いね? 私の名前は、小鳥優子っていうんだよ」

 

「はぁァァァッ⁉︎」

 

「なにが、あったんだよ?」

 

「わ、訳分かんないよ……あなたが、運命の人だと思ったのに‼︎ 説明してよ⁉︎」

 

「こっちも訳分かんねぇんだよ⁉︎ 三上⁉︎ 説明しろよ!」

 

「小鳥ィィィィィイ? 上から物言ってんじゃねぇよ? 説明して下さいだろ?」

 

「チッ、なら説明してくれなくて良いよ」

 

 なんなのこの二人? 私が三上恵理奈だと思っていた人が小鳥優子……? そしてこの子が………

 

「あなたが、三上恵理奈さんって事?」

 

「あぁ、そうだよ」

 

 って事になるよね?

 

「殺人衝動は、あなたの身に宿ってるって事?」

 

「何でそんな事まで知ってんだよ?」

 

 私がその事を知っている事を知らない? それじゃあ……

 

「手紙は? 手紙は誰に渡っていたの⁉︎」

 

「手紙は三枚ともわたしが持ってるよ。わたしは内容意味分かん無くて、途中で読むのを止めたんだよ」

 

「はっ? どういう事? 返事来てたんだよ? 何が、どうなってるの?」

 

「オイお前ら! 入って来いよ」

 

 本物の三上に呼ばれて、牛嶋晶と嶋牛さやかが教室に入って来た。

 

「あ、阿久津、さん……すいませんでした……」

 

「う、ウチらが返事を書かない三上さんに代わって、手紙を書いて渡していました……」

 

 はぁっ? お前ら、何してくれちゃってんの?

 

「どういう事か聞かせてよ? ほら? こっちまでおいで? そんな離れてちゃ、声もよく聞こえ無いし、顔も見えない」

 

 晶とさやかが、私の目の前まで歩み寄って来た。

 

「ご、ごめんなさい! ウチら、返事を持って行かないと酷い目に遭うと思って……だから、三上さんから来ない返事を偽造して、渡しました……」

 

「ごめんなさい……最後の手紙も、ウチら読みました。そこで初めて、阿久津さんがとても傷付いて、生きて来た事を知りました。ウチら、前までは阿久津さんに怯えていました。でも、今は少し、違うんです! 阿久津さんが幸せになれる道を、一緒に探したいんです」

 

「嘘吐いて、裏切ってた癖に、私の事を憐れむのか? いい加減にしろよ。死ねよ」

 

 私は向かって右側に居た嶋牛をハイキックで狙った。嶋牛は避ける事もせず、私の蹴りを首元に受け倒れ込んだ。その後牛嶋の襟首を掴み、何回も右手を固く握り殴打した。牛嶋も、ガードすらせず打たれ続け、手を離すとズルズルとその場に崩れ落ちた。

 

「キャハハハハハハハハハハハハ‼︎ 良いじゃん⁉︎ 面白ぇじゃん阿久津ゥゥゥゥウッ⁉︎」

 

 三上が同級生がボコられるのを、高らかに笑った。違う……私は、こんな奴に殺して貰いたかったんじゃ無い。

 

「何が面白いの? あなたのクラスメイトだよその子達。なんで、あなたが笑うの?」

 

「だって面白ぇんだもん! コイツ等、マジでお前の事心配してたんだぜ? なのにボコられて、無念で無念で、ア、アハハ⁉︎ 目も当てらんねぇくらい惨めだよコイツらァァァァァァァァァッ‼︎」

 

「煽んなよ三上‼︎ コイツ等、ちゃんと謝ったじゃん? そして、蹴られる事も殴られる事も受け入れた。それって、本当の友達に近付いたって事じゃないのか?」

 

「んだ小鳥テメェ⁉︎ お前の事クラスでちょこちょこ見てっけど、お前誰とも仲良くねぇじゃねぇか‼︎ んな奴に友達がどうとか言われたくねぇんだよ‼︎」

 

「はぁぁぁぁぁアッ⁉︎ 私にはねこ……いや、お前だって最近天羽とつるんでねぇから大体一人じゃねぇか⁉︎ 人の事言えんのかよ⁉︎」

 

「わたしは一年の時だってずっと周りに友達の様な奴がいつも居たんだよ‼︎ テメェと一緒にしてんじゃねぇよ‼︎」

 

「友達の様な奴って自分で認めてんじゃねぇか‼︎ そもそもそんな奴ら友達でも何でも無かったんだよ‼︎ そんなしょうもねぇ事でマウント取ってんじゃねぇぞ⁉︎ だからお前が嫌いなんだよ‼︎」

 

「話し相手すら居ねぇお前に言われたくねぇんだよ‼︎ わたしだって、お前の事大嫌いなんだよ‼︎」

 

 勝手に二人で喧嘩始めんなよ? 側から見てたら、常にお互いの動向探り合ってて意識しまくりな様に感じるんだけど?

 

 二人が話しに夢中になっている間に、小鳥に捨てられ放っとかされたフルーツナイフを拾い上げた。

 

「お前には本当に友達って言える奴が居ないんだろ⁉︎ 本当に大切だと思える友達が出来れば、お前も変わる筈なのになぁ」

 

「そんな奴要らねぇんだよ‼︎ お前も居ねぇだろぉがそんな奴!」

 

「私には居るもん‼︎ 今のお前には、一生分かんねぇよ!」

 

「嘘吐いて惨めにならねぇか? 哀れな女だよ」

 

「テメェマジで煽んのだけは一丁前だなぁ⁉︎」

 

「んだテメェこら⁉︎」

 

 放って置いたらいつまでも喋ってんなこの二人。いい加減、蚊帳の外も飽きたよ。

 

「ねぇ? 誰を、殺したら良いかな?」

 

「はっ?」

 

「あっ?」

 

「もういいの。こんな人生、どうだっていいから、誰かを殺して、私も死ぬ」

 

 誰でも良い、一緒に逝きたいんだ。

 

「阿久津? お前それ、本気で言ってんのか?」

 

 勿論だよ。

 

「私は、どうしても今日、死にたいの」

 

「へぇー? わたしにはお前が、自分が死ぬのを誰か止めて下さいって言ってる様にしか見えねぇな」

 

 はっ? 三上?

 

「何、言ってるの?」

 

「だってそうじゃん? 死にたいなら、帰ってから一人で死ねよ。何故他の奴を巻き込む必要がある? それは、他の奴に合わせてる事になるよな? そんなに死にたいなら自分の都合の良い時に死にたくない? お前、言ってる事が意味不明なんだよ」

 

 私は……私は独りで、死ぬ事を選べ無い……って事?

 

「だから煽んじゃねぇよ三上⁉︎ 阿久津もさ、ナイフ離せよ。それで今回は、一件落着だろ?」

 

 一件、落着? 嫌だ。ここまで来たのに、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ⁉︎

 

「そんなの、嫌だ」

 

 私は、ナイフを持った手を大きく振りかぶり、倒れている牛嶋を刺し殺そうとした。

 

「待てよ‼︎」

 

 小鳥に手首を抑えられ、軌道は逸れて床に倒れ込んだ。

 

「だから言っただろ小鳥? そいつ、人を殺す事なんか出来ねぇよ。意味も無く大きく振りかぶりやがって、誰か私を止めて下さいって魂胆が見え見えなんだよ。お前が黙って見てりゃ露わになったのによぉ?」

 

「馬鹿にするなよ……お前を、お前を殺してやる⁉︎」

 

「やってみろよ?」

 

 体制を立て直し、三上にナイフを向け突進した。

 

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオッ‼︎」

 

 三上が、咄嗟に手で私のナイフを持つ手を払った様に、感じたんだ。

 

「アッ、かはっ……」

 

「三上⁉︎」

 

「えっ……」

 

 ナイフは、三上の下腹部に刺さり、柄を握る私の人差し指が腹に当たる程まで深く抉っていた。両手で握っていたナイフはもう見えない。それどころか、三上の返り血で、私の両手さえも真っ赤に染まってしまった。

 

「お前、振り払われ様と思ってわざとモーション大きくしただろ? 実はなぁ? わたしあの時、振り払うフリして何もしなかったんだよ。やっと本性出したな? お前は、誰も、自分も本当は殺したくなんかねぇんだよ‼︎」

 

「あ、あ……そんな筈無い‼︎ 私は、私は‼︎ 心の底から、死を願ってるんだ‼︎ あなたの事だって、殺したいから、刺した……」

 

「話し聞いてたか? わたしは何もしていない。つまり、そもそもお前は心臓を狙って来てねぇんだよ?」

 

「えっ……?」

 

「殺すつもりなら、心臓狙えよ‼︎ それか脳味噌。急所も狙えねぇ奴が、格好付けて殺すとか喚いてんじゃねぇよ」

 

「わ、私は、本気で、本気で‼︎ 殺そうとしたんだ‼︎」

 

「でも出来無かったんだろ? ってか、まだ殺す事は出来るんだよ? 刺してる刃を上に向けろよ? それで、マグロを解体するみたいにギコギコ刃を動かしてみろ? 心臓に届くかもしれねぇぞ?」

 

「あっ、あっ……」

 

 言われるがまま、私はナイフの柄を力強く握り、三上の腹の中で回そうとした。

 

「ギ、ギィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ‼︎」

 

 あっ、やっぱ痛いんだ……駄目だ。これ以上、動かせ無いよ。

 

 私は、ナイフを離した。

 

「あぁぁぁ、痛ってぇ……なぁ? 認めろよ? お前は、死にたくなんて無いんだよ」

 

 私が、死にたく無い? じゃあ私は、何の為に生きて来たの? 「友達に殺されたい」って希望まで捨ててしまったら、これから私は、何の為に生きて行けば良いの?

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