九十三頁 女神 拾 『悪魔の黙示録 ④』
九十三頁
女神 拾
『悪魔の黙示録 ④』
いつもの様に教室から出て帰ろうとすると、いつぞやの眉毛の二人に引き止められた。
「三上……さん。話しを、聞いてもらいたいんです」
「はっ? またお前らかよ? 手紙か⁉︎ やめろよ‼︎ 返事も出してねぇのに流石に気持ち悪ぃんだよ‼︎」
「でも、この手紙は、どうしてもあなたに読んでもらわなくちゃいけないんです」
いつもの、この二人の何処か物怖じしている雰囲気は無かった。覚悟を決めた様な、そんな表情を二人はしていた。
「……説明しろよ。何故コイツはわたしに手紙を書いて来る? 何故返事もしていないのに何通も手紙を送って来るんだよ?」
「まず、質問をしても良いですか?」
「はぁっ? わたしが先に聞いたんだよ! そういうのは早い者勝ちだろ?」
「簡単な質問です! ウチらも、何が何だか分かって無いんです」
「チッ、まぁ良いよ。なんだよ?」
「屋上であなたは、阿久津と何を話したんですか?」
「屋上?」
「手紙で、屋上に呼び出しましたよね?」
「あぁーあれか。あの時わたしは屋上に行かなかったんだよ。小鳥が代わりに行ってくれたんだ」
「小鳥⁉︎ 小鳥って同じクラスの小鳥優子の事? 仲良かったんですか⁉︎」
「仲良くねぇよ‼︎ めっちゃ嫌いだわアイツの事なんて‼︎」
「えっ? じゃあなんで……?」
まぁあの時はわたしも相当落ち込んでたからな。藁にもすがる思いだったんだよ。
「たまたまだよ。ってか同じクラス? お前ら二年一組なの?」
「えっ⁉︎ そうですけど⁉︎ 教室で話し掛けた事もありますけど⁉︎」
そうなの? 記憶にございません。
「そんな事はどうでもいい。わたしの質問には、いつ答えてくれるのかな?」
「そんな事はって……まぁいい。ってか、やっと謎は全て解けました」
「説明しろよ」
「怒らないで、聞いてもらえますか?」
「いいからさっさと説明しろよ!」
「晶ちゃん?」
「うん。まず、ウチらは阿久津に三上さんを屋上に呼び出す様に言われました」
「何でだよ?」
「あ、あのっ……何でだっけか忘れたけど、それで、三上さんの机の引き出しに、放課後屋上へと誘う手紙を書いたんです」
「あー、確かにあれお前らが書いたって言ってたもんな?」
「そうです。阿久津と一緒にウチらも屋上に行ったんですけど、阿久津は屋上の手前でウチらを返して、屋上に居るらしき人物と仲良くなったみたいなんです」
「それって?」
「さっきの三上さんの話しで分かりました。その人は、小鳥優子です」
「でもアイツは、屋上に手紙の差出人は来なかったって言ってたんだぞ? 何故そんな嘘を吐く必要がある?」
「それは、阿久津が手紙の差出人じゃ無かったからではないでしょうか?」
「はっ? どういう事? 阿久津はわたしの事知ってたんだろ?」
「噂だけ。顔を知らなかったんです。そして、手紙で呼び出した事も知らなかった。だからそこで、歯車は狂ってしまったんです」
「じゃあお前らから受け取った手紙も?」
「小鳥に宛てた手紙です」
「こっちはシカトしてんのに返事が来たのは?」
「そ、それは……ウチらが、三上さんからなかなか返事が来なくて、阿久津に詰められていて、それで……」
「それで?」
「手紙を、偽造しました……」
「はぁっ?」
何してくれちゃってんのコイツら?
「すいませんでした‼︎」
それまで交互にしか喋らなかった二人の声が、初めて揃った。
「二通目の手紙、子供がどうのとか言ってたのは?」
「ウチらが! 何か、何か頭オカシクなってて、トリップしながら書いたら、あなたとの子供が欲しいみたいな事書いちゃってました……」
「お前らイカれてんのか⁉︎ しかもそれ、わたしが書いたって思われてんだろ⁉︎」
「そ、そうです。すいません……」
「チッ、まぁ別にどうでもいいけど。謎が解けてスッキリしたくらいだわ。ってか、何でそんな事わざわざわたしに言いに来た訳? 黙ってりゃバレ無かった事じゃん?」
「……二通目の手紙を三上さんに渡しましたよね? その返事も、ウチらが書いて阿久津に渡しました」
「まぁそうなるよな。わたしは手紙なんかシカトしてたんだから」
「二通目の阿久津からの手紙の返事は、当たり障りの無い内容にしました。先週の土日潰して二人で考えて、出来るだけ事が大きくならない様な内容にしたんです」
この二人の様子から察するに、面白がってそんな事してたんじゃ無いんだろうな。わたしが返事を書かないからって代わり書いてやるって、よく考えりゃめっちゃ良い奴じゃんコイツら。十六文字と無策で屋上行った時も、たまたま居たコイツらはわたしに口裏合わせてくれたしな。
「まぁ、お前らが良い奴らだってのは分かったよ。で、その手に持ってる阿久津からの三通目の手紙が問題なんだろ?」
「えぇっ⁉︎ 何処で良い奴ら認定されたの⁉︎ あ、新たな謎がまた一つ増えたんだけど⁉︎」
そういうのいいから。
「その手紙には、何が書かれてたんだ?」
「……本当は、阿久津からは、この手紙だけは絶対に中を見るなって言われてたんです。でも、手紙のやり取りをしていたのは実質ウチらだったから、見ない訳にはいかないと思って。でも、この手紙には……」
「なんだよ?」
「ウチら、後悔したんです。人の、こんな辛い過去を、勝手に覗き見して……阿久津に、申し訳無い事をしたって……せめて、この手紙を、届かなければいけない人の元へ届け様と思ったんです!」
「それで、わたしに?」
「……でも、この手紙が届かなければいけない相手は、小鳥優子なんですよね? それを、あなたと話して知りました」
「まぁ大体の成り行きは分かったよ。前にお前らから受け取った二通の手紙もちゃんと残してあっから、まとめて小鳥に渡しといてやるよ」
「えっ……意外に良い人……」
おい? 心の声が漏れてんのか? えっ、わたし、どう見られてんの? 結構外面良くみんなに接しているつもりなんですけど?
取り敢えず、その手紙を受け取っておいた。
「でも、大丈夫かな……?」
「今もきっと、待ってるよね……?」
最後の最後に気になる事を言って来やがった。
「なんだよ? まだ何かあんのか?」
「……実は、手紙の最後に、今日の放課後二年五組の教室で待ってるって……」
「今日必ず、私の事を殺してねって……」
「はぁァァッ⁉︎ んだよそれっ⁉︎ どんな手紙だったんだよ⁉︎」
「それは……」
その時、五組の教室から叫び声が聞こえて来た。
「おい三上ィィィィィィィィィィイッ⁉︎ 近くに居んだろ⁉︎ こっち来いよ‼︎」
「小鳥の声ッ⁉︎ オイッ‼︎ どういう事だよ⁉︎」
「ヒィィィィィィィィィィィイッ‼︎ し、知らない! なんで、何で小鳥の声が五組から聞こえるの⁉︎」
「阿久津って奴も五組に居んだろ? 激ヤバじゃん? 面白くなって来たなァ?」
おっと危ない。こういうトラブルを楽しんでるってバレちゃったら、よく知らねぇ奴に、変な人って思われちゃうじゃん?




