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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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九十一頁    猫 拾陸   『悪魔の黙示録 ②』

 九十一頁

 

 猫 拾陸

 

『悪魔の黙示録 ②』

 

 この猫側の三人まるで役に立たないんだよ‼︎ わんちゃんは寝返ろうとするし、天羽はトリップするし、兎咲は一言も喋らないし。

 

 ね、ね、猫が……いや、猫に何が出来るかッ⁉︎ あぁーやっぱこの組み合わせ間違えてたんだよ⁉︎ こんな圧の弱い……いや、みんなは圧が弱いとかオブラートに包んでいるけど、こんなズッコケ馬鹿四人組じゃ何も出来やしないんだよ‼︎ 相手鬼釜一人になったのに余裕でその圧に負けてるんだよ‼︎ あれ? もう一人は何で居なくなった? アイツが阿久津という奴では無かったのか?

 

「そ、そうだよね……小鳥さんに電話してみる!」

 

 何故か⁉︎ って、そうだよねって何? ウチらズッコケ四人組は誰も言葉など発していないんだよ。

 

「おっ? 救援かぁ? 誰が来んのかなァァァ?」

 

 こっちの救援さえ楽しみにしているじゃないか⁉︎ 人数では有利な筈なのに、一ミリも勝てる気しないんだよ!

 

「あっ! 小鳥さん? ゆ、佑羽だけど? もう帰っちゃったかな⁉︎」

 

 小鳥が電話に出た様だ。鬼釜が来る結構前に小鳥は教室から出たから、わざわざ教室まで戻って来る事は無いだろう。一安心なんだよ。

 

「帰って無い⁉︎ 良かった! 今何処に居るの? ……ごめん聞こえ辛くて、もう一回言って? うん、うんうん。えっ、学校のトイレでう○こしてる? 良かった! ちょっと今、修羅場になりかけてるんだよ!」

 

 ぬァァァァァァァァァァァアッ‼︎ 何故学校に居るか⁉︎ う○この神様は何故こんな日に限って小鳥に放課後便意を授けたか⁉︎ 猫にはいつもその気にさせておいてそっぽ向くではないかッ⁉︎ う○この神様はもう少し猫にも寄り添って欲しいんだよ‼︎

 

「うん! そう! 鬼釜さんが仕掛けて来たの。何して来るか分からないから、小鳥さんにも手を貸して欲しい」

 

「ひでぇなぁ? わたしが何か酷い事するとでも思ってんの?」

 

「うん、待ってる! ……鬼釜さん? どうせあなた、何か悪い事を企んでるんでしょ?」

 

 天羽が小鳥との通話を切り、鬼釜に問い掛けた。

 

「キヒヒッ、ただ言いに来てやっただけなんだけどなぁ?」

 

「何を?」

 

「来週から、兎? お前の写真をこのクラスにバラ撒いてやるからな?」

 

 そう言うと鬼釜はスマホの画面をこちらに向けて、兎咲がゴミを漁っている写真と首輪を付けられて散歩させられている複数の写真を、メモリーで音楽に乗せて流し始めた。

 

「何をちょっとエモく見せてくれてるんだ君は⁉︎」

 

 兎咲がここに来てやっと喋った。確かに、これはなかなかキツいんだよ。

 

「鬼釜さん? そんな脅し、佑羽達にはもう効かないんだから‼︎」

 

 まぁそうだけど、あの手段を猫は本当は使いたく無かったんだよ。

 

「はっ? あぁそうか? 兎咲の事、見捨てるんだなぁお前ら?」

 

「違う。美穂ちゃんを見捨てるなんて、そんな事出来ない!」

 

「お前達の気持ちはそうでも、兎の本心はどうかなぁ?」

 

「人の心を弄ぶ様なあなたに、人の本心がどうとかなんて言われたく無い‼︎」

 

「傷付くだろぉなぁ? 本当に良いのかそれでぇえ? 間違った道に、進んでないかぁ?」

 

「心配でもしてるつもりなの? そんな陽動、通用しない事くらい分かってるでしょ? 意味の無い煽りはやめて。あなたと初めて会話をした日から、佑羽達は何度も何度も話し合いを重ねて来たんだ」

 

「その結論が、友達を見捨てるって事なんだ?」

 

「違う。友達と一緒に、地獄に堕ちるって決意だよ!」

 

 そう言うと天羽は、スマホを指でちょこちょこ操作し、あの朝にみんなで集まって携帯で撮った写真を鬼釜に見せた。

 

「はァァァッ⁉︎ なんだこれ?」

 

 なんだこれって、そりゃ思うよね? 猫も天羽からその案を聞いた時は、何言ってんだよコイツって思ったもんだよ。でも、どこまでも友達に尽くす事しか考えて無いこの女に、猫は根負けしてしまったんだよ。

 

「これが、佑羽達の覚悟だ‼︎」

 

 鬼釜に見せたスマホの画面には、天羽がゴミを漁りニヤついている写真が表示されていた。

 

「はっ? これが覚悟? 意味分かんねぇんだよ‼︎」

 

 確かに。天羽よ? その一枚だけじゃ、意味分かん無いんだよ。

 

 と思っていたら、天羽が鬼釜にスマホの画面を向けながら、指でスクロールして様々な写真を鬼釜に披露していった。

 

「これは琴子ちゃんがゴミを漁る写真。これはイチカちゃん! そしてこれは佑羽が首輪に繋がれて散歩させられてる写真。次のこれは琴子ちゃんで、この次のこれがイチカちゃん! 美穂ちゃんのも一応撮って、最後はみんなでゴミ漁りながらピースサイン! どうかな? あなたが美穂ちゃんの写真をばら撒くって言うんなら、この写真もばら撒く。名付けて、木を隠すなら森の中作戦! 美穂ちゃんの写真がばら撒かれても、全部佑羽達の茶番だったって事になるんだよ? 茶番じゃ無いって気付かれても、この四人は一心同体なんだ。このゴミ袋は佑羽の家からのゴミで、やらせではあるけれど、同じ過ちを犯した仲間になるんだよ!」

 

 マジ頭のネジぶっ飛んでるんだよ。天羽よ? 何故? ストーカー被害を受けた本人が加害者を身を挺して守るか? やる事が突飛過ぎるんだよ。まぁ、被害者のお前が熱望するから猫も協力しないと嫌な奴と思われるからやってやったのだけどな。

 

「……くだらねぇ。お前ら兎に足引っ張られてんの分かんねぇのか? 何でお前らがそこまでする? 一時の感情で、そのストーカー野郎に手を貸してやったっていう事を後悔する時が来るんだぞ?」

 

「来ないよ。だって佑羽達は、友達だから! その気持ちが分からないの? あれっ? ……もしかして? 鬼釜さんって、友達居ないの? ごめんごめん! 悪い事言っちゃった!」

 

 天羽よ? なかなか良い煽りではないか‼︎ これはいくらあの鬼釜でも黙っていられない筈なんだよ!

 

「友達? 居ねぇよそんなもん。友達ってあれだろ? 信用しないといけないんだろ? お前らマジで馬鹿だな? 自分以外の奴は信用しちゃいけねぇんだよ。周りの奴らは全て疑え。全員必ず、悪意で満ちてっから」

 

 あんま効いて無いっぽいんだよ。この人、全てを諦めてる顔してるんだよ。

 

「そんな事、絶対に無い!」

 

 天羽が言うと説得力あるな。いや! 騙されるな猫よ! 鬼釜の言った通り、コイツも心では悪い事考えてるかもしれないんだよ! 裏切られた時に傷付くのは、裏切られた方だけなんだよ。

 

「兎ぃ? かましてくれたなぁ? あんまやりたく無かったけど、お前の家族に、この事言ってやんよ」

 

 ……マジか。そこまでするのか。ニュースとかで見た事あるんだよ。家族に言え無くて、良くない最後を迎えてしまった人の話しを。兎咲? 死ぬなよ? 別にお前の事などどうとも思ってないが、今回ばかりは優しい言葉をたっぷり掛けてやるんだよ。

 

「……やめてよ。そんな事して、何が楽しいの⁉︎」

 

 天羽が声を荒げた。こんなに取り乱してまで、兎咲を守ろうとしている。

 

「天羽君? もういいんだ」

 

「美穂ちゃん? もういいって、どういう意味?」

 

 兎咲よ? 悪い考えを持つのは、やめて欲しいんだよ……

 

「ケッ! ヘヘヘェ⁉︎ もう良いんだ? 人生もうどうでも良いんだ⁉︎」

 

「煽るのはやめてくれよ鬼釜君。それに僕は、君の喜ぶ様な悩みなんて一つも無いよ? 大好きな家族が居る。そして、大切な友達が出来たから」

 

「その大好きな家族がお前の秘密を知ったら、どぉぉぉぉぉ思うかなァァッ⁉︎」

 

「知ってるよ? 僕のそんな間違いを、家族はみんな知っている」

 

「はァぁっ?」

 

「話したんだ。先週の日曜日に。だから僕らにはもう、君に脅される弱味は無い!」

 

 ……えっ? そんなはったりでこの女を撒ける訳無いだろ⁉︎ 鬼釜は物事を悪い方にしか考えられない様な奴なのだぞ? お前のその嘘が後々猫達を苦しめるんだよ! 大人しくしていろよ! 大丈夫だから‼︎ 猫達が守ってやるのだから! 今回だけだぞ本当に。

 

「嘘吐くなよ? いいのか? 家族に秘密バラしに行ってやっかんな?」

 

「いいよ! でも気を付けてね? その事で脅して来る奴が家に訪ねて来るかもしれないって言ったら、母さん、玄関先でマジギレしてやるって言ってたから」

 

「なんでだよ⁉︎」

 

 なんでだよ、はおかしいんだよ鬼釜? ってか兎咲よ? 本当に家族に言ったのか? まさかな……本当だとしたら、それは狂気の沙汰なんだよ。

 

「凄い……美穂ちゃんは、やっぱり強いよ! 佑羽だったら、そんな事絶対家族に言えないもん!」

 

 天羽よ? さっきからちょくちょく兎咲のメンタル削っているのに気付いてあげて欲しいんだよ。

 

「くだらねぇ友情ごっこ見せつけてんじゃねぇよ。苛つく、テメェら苛つくんだよ‼︎」

 

 鬼釜がお怒りだ……でも、これ以上猫達を追い詰めるカードなど持ってはいないだろう。

 

「……あれっ? 違う……」

 

「天羽? どうしたか?」

 

「鬼釜さんの本当の目的は、美穂ちゃんでも、佑羽達でも無い……」

 

「はぁ? 天羽よ? お前は何を言っているか? それでは一体、鬼釜は誰を狙っているというのか?」

 

「え、恵理奈ちゃん……」

 

 ……天羽よ。いい加減な事を言うのは、やめるんだよ。

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