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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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七十三頁    女神 捌   『条件』

 七十三頁

 

 女神 捌

 

『条件』

 

 まぁまぁ早く学校来ちゃったな。まぁ、どうでもいか。暇だな……まぁ家に居てもする事も無いし、どうでもいいか。本でも読むか? 携帯イジるか? どっちもつまんねぇから、どうでもいいか。

 

 虚無だよ虚無。わたしは、これから人生に何を求めれば良い?

 

「あっ、あの、恵理奈ちゃん?」

 

 佑羽? 来てたのか? 気付かなかったよ。

 

「なに? なんか用?」

 

 悪いけど落ち込んでるからさ、ってか佑羽には感謝してるけど、それと同時に苛立ちもあんだよ。わたしの、楽しみを奪った苛立ち。

 

「あ、あのぉ……放課後、残ってくれたりなんて……えへっ?」

 

 はっきり言えよ⁉︎ そうやって気ぃ遣われて話し掛けられる事で距離感じるんだよ⁉︎ やっぱ戻れないの? あの小学生時代の二人には戻れねぇのかよ⁉︎

 

「なんで?」

 

 こんな朝っぱらから核心に迫る質問ぶつけらんないよ。なんだっけ? あんま聞いて無かったわ。放課後残って欲しいんだっけ? まぁ別に良いんだけど。

 

「友達が、イジメられてるの……」

 

 そっかぁ。イジメあんだこの学校。そんな場面見た記憶無かったわ。友達? 佑羽友達居たの? まさか……別荘に居た奴の事言って無いよね? 誰とも仲良く見え無かったけど? でもこのクラスになってからわたしとばっか喋って無かった? 本当に居た? 友達なんて。わたしの知らない子かな?

 

「へぇぇ……誰?」

 

 ちょっと興味あるわ。

 

「あの……美穂ちゃん……」

 

 知らない奴だった。別にそいつの事などどうでもいいのだが、わたしの……今の悩みの種を解決して欲しい……

 

「いいけど、十六文字も呼んでくれない? 駄目なら帰る」

 

 悪いな佑羽。今、わたしの優先順位は佑羽じゃなく殺意なんだよ。

 

「十六文字さん? ……十六文字さんが来ないと、来てくれないの?」

 

「うん」

 

「……分かった! なんとかする‼︎」

 

 なんとかしてくれんの? イジメられてる友達の為とか言ってたっけ? ……なんか、少しだけ昔の佑羽の面影を感じる。大好きだった佑羽の面影の片鱗を感じる。人って変わってしまうものだけど、変わるなら、巡り巡って元に戻る事だってあるのかな? あの頃の佑羽って、もう会う事の出来ない人なんかじゃ無いのかな?

 

 もしもあの頃の佑羽に戻れたのなら、一緒に、ジェイソンを観ようね? あの時には言えなかった事を言いたいな。

 

 昼休みに十六文字も来る事を聞いたので、約束通りわたしも放課後教室に残る事を快諾した。

 

「兎咲さんがイジメ受けてるって話しですよね? わたくしを呼んだ理由はなんですか?」

 

 放課後、教室にはわたしと佑羽と十六文字と猫宮と犬養の五人が残った。十六文字が皮切りに放った言葉に、わたしは疑問を覚えた。

 

「兎咲? イジメを受けてる奴って、兎咲なの?」

 

 別荘に居た奴じゃん?

 

「えっ? そうだよ? 朝言ったじゃない?」

 

「美穂ちゃんって兎咲の事? 知らねぇよ下の名前なんて‼︎ ……まぁ、別に兎咲って分かってもどうでもいいけど」

 

「知らなかったの? 佑羽ずっと、美穂ちゃんって呼んでたんだけど……?」

 

「全然気付かんかったわ。そういやアイツ、佑羽のマンションからゴミ袋抱えてダッシュしてんの見たけどなんなの?」

 

「えっ⁉︎ あぁ……まぁ、それが原因だよ」

 

 それが原因なの? ゴミ袋が原因? どゆこと?

 

「説明してよ」

 

「な、なんか……佑羽の家のゴミを拾って漁っている所を写真に撮られたみたいで、それで脅されてイジメられてるの」

 

「気持ち悪っ。あれその場面だったんだ。まぁ良いじゃん? その時の兎咲の顔、悦に満たされた様な感謝の笑顔だったよ?」

 

 ってか、そんな被害受けてんのに友達で、しかも助けたいとか言ってんのか? マジ天使だな?

 

「へぇぇ……あ、あんまり、言わないで?」

 

 さすがに気持ち悪いか? まぁ、わたしにはどうでもいい事だけど。

 

「あの? わたくし、この話し合いに要ります?」

 

「十六文字さん! そして恵理奈ちゃん? 話しを聞いて……? 美穂ちゃんをイジメているのは、二組の鬼釜という人なの。その人は、とてつもない悪意に満ち溢れている。佑羽と猫宮さんと琴子ちゃんは、美穂ちゃんを助ける為にその鬼釜という奴に宣戦布告した。でも、佑羽達だけじゃ敵わない! 恵理奈ちゃんと、十六文字さんの力を貸して欲しいんだ!」

 

「敵わないって何? 殴り合いでもすんの? 別にわたし、強く無いんだけど? 人殺せる凶器だったら山程持ってるけど、ヤンキー漫画みたいな肉弾戦になってもなんも出来ないから」

 

「わたくしの力も無力ですよ? 動く相手に催眠術を掛ける事は不可能なので」

 

「違う……佑羽達には、圧が圧倒的に足りてない! だって、佑羽と猫宮さんと琴子ちゃんから圧を感じる? 感じ無いよね? 恵理奈ちゃんと十六文字さんの、力を借りたいんだ!」

 

 圧? そんなもんが何かの役に立つのか?

 

「まぁ、力貸すとか貸さないとかはどうでもいい。どうせ暇だし、手伝ってあげなくもない。たださ……今のわたしに、その圧ってやつが無いんだよ。抜け殻だよ今のわたし」

 

「そ、そうかなぁ……元気無いとは思うけど、圧はあるよ?」

 

 あるんだ? 佑羽にそう言われると、逆に傷付くんだけど? そんなにわたしと絡み辛かった?

 

「わたしの悩みにも協力してくれるなら、話しに乗ってもいいよ」

 

「本当に⁉︎ 悩みって?」

 

「十六文字の催眠が効かないんだよ。あの別荘の時みたいに、催眠の中でみんなをグチャグチャに殺してやりたいのに、効かなくなっちまったんだよ……なぁ? わたしにもう一度、あの夢の様な時間をくれよ⁉︎」

 

「あっ、まだそれ引きずってたんですね……」

 

「だって、だって……諦めちゃったらさ、その時って、お前らが死ぬ時だぞ? 催眠術で殺れないなら、現実で殺るしかないよね? 別にわたしはそれで構わないけど、みんなが困るんじゃないの?」

 

「こ、困るレベルの話しじゃないですよ⁉︎ 何言ってんですかあなた⁉︎ この間やって出来無かったじゃないですか? あ、諦めて、普通の生活送りましょうよ……」

 

「楽しくねぇんだよぉぉぉお‼︎ あ、あんなリアルな殺す感覚味わっちゃったら、もう、もう……戻れなくなってた……映画を観るんだよ。何回見てもクソ笑えた筈の内臓飛び散りまくりのシーンでも、興奮しなくなっちゃった……わたしから、日々の楽しみ奪いやがってクソがよォォォォォォォォォォオ‼︎」

 

「そ、そんなシーン見て笑ってるんですかあなた? ヤバくないですか? あっ、ヤバいのはとっくに知っていましたね」

 

「良くないって思ったんだ。人を殺すのは良くないって、思ったんだ。でも、つまんねぇんだもん。殺しちゃいけないって思えば思う程、十六文字の催眠の中で殺したお前らの屍が蘇ってくんだよ‼︎」

 

「怖っ……あんな事があってもまだ……ってか三上さん落ち着いて下さい! またあの興奮をとかって仰ってましたけど、催眠というのは、願いが自分の都合の良い様に進んで行くんです! だから、あなたが実際に人を殺したとしても、あの時の興奮を凌駕する事は無いのです‼︎」

 

「へっ……? そうなの?」

 

「そ、そうです! 殺してしまった時に気付きますよ? あれっ? こんなもんかって。あの時の方が楽しかったって、こんな事で私は人生を棒に振るってしまったのかって思うんですよ‼︎」

 

「マジかよ……じゃあ、わたしはどうすれば?」

 

「協力……してあげますから。また催眠が掛かるきっかけを、しょうがないから一緒に探してあげますよ」

 

「十六文字、心の友だお前……」

 

「へっ? 友……ま、まぁ、三上さんは、その殺人衝動に負けない趣味を持つべきだと思いますけどね?」

 

「趣味、か……あれっ? 何の話しだっけ?」

 

「あ、あの……美穂ちゃんの事……」

 

 引いてない? 圧弱いってこういう事か? 十六文字居なかったら会話すら成立しなくなかった?

 

「兎咲か。別にどうでも良いけど、進展あったら教えてよ? 何か気になるし、面白そうだったら混ざるよ」

 

「えっ、ありがとう恵理奈ちゃん!」

 

「ちょっとあなた達⁉︎ さっき三上さんとわたくしの間で約束ありましたけど、色々試してみようとは思いますよ? また催眠に掛かる様になるにはどうすればいいか。その時、誰か一人くらいは傍に居て下さい! 良いですね? 約束して下さい!」

 

「なにそれ? わたしは二人きりでも別にいいよ?」

 

「嫌ですよ‼︎ 殺されるかもしれないじゃないですか⁉︎」

 

「殺さねぇよぉ。なっ? 二人きりでもやろうよ?」

 

 そっかぁ、そっかぁ。コイツ、怖かったんだぁ。クッ、ヒヒヒッ、良い表情するなぁ。

 

「わ、分かったよ十六文字さん」

 

 邪魔すんじゃねぇ‼︎ って言い掛けたけど、佑羽か。ってか、話し大体終わったんだけど、猫宮? と犬養? お前ら一言も喋ん無かったな。

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