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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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六十九頁  兎 伍  『もういいよ』

 六十九頁

 

 兎 伍

 

『もういいよ』

 

 「な……なんだよコレ? 何で⁉︎ 犬養君がここに居るんだ⁉︎」

 

 クラスメイトには、バラさない約束だったのに……

 

「あぁ? んだテメェその口の利き方はよぉ⁉︎ 良いんだ? お前の想う奴にまでバラしちゃって良いんだ? 良いんだったら良いんだぜ? 良いのか? あっ? 良いのか⁉︎」

 

「やめてくれよ……約束が……違う」

 

「テメェの様なストーカー野郎に人権なんて無ぇんだよ‼︎ 犬養だっけお前? コイツがわたしのクラスの前でうるせぇから捕まえて話し聞いたら、お前が学校休んでるからわたしの事調べようとしてたらしいぜ⁉︎」

 

「えっ⁉︎ 犬養君……?」

 

「兎咲、ごめん……見ちゃったからさ。あの時……目、合ったよね?」

 

 うわぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎ 地獄だっ‼︎ 地獄だ地獄だ地獄だ、地獄だぁァッ‼︎

 

「わ、分かってた……見られた事に気付いてた……でも、でもでもでもでもでもでもでもでもォォッ‼︎ こ、こんなの……無いよ」

 

「無いのはテメェだよ? お前自分が何してたか分かってんのか? 犬養? コイツなぁ」

 

 言うんだよね? そういう事だよね? だから、僕を呼んだんだよね。鬼だよ……君は、間違いなく、そのあだ名と違わぬ鬼だよ。

 

「あ、あの……言わなくて大丈夫です……ただ、心配してただけなんで……兎咲? 明日からちゃんと学校来いよ?」

 

 犬養……くん?

 

「はっ? なにそれ? お前見たんだろ? コイツが首輪付けて散歩させられてる姿見たんだろ⁉︎ 気になってたからわたしのクラスの前で屯してたんだろぉが⁉︎ 理由教えてやるって言ってんだよ‼︎」

 

「あっ、大丈夫です。兎咲、嫌がってるし……」

 

 君は本当に、犬養君なのか?

 

「だからなんだよ‼︎ お前、わたしに名前覚えて欲しいのか?」

 

 僕の知っている犬養君は、自分の保身の事しか頭に無い人だ。

 

「こ、光栄です。名前だけでも、覚えてもらえるなんて……」

 

 サンドウィッチマンみたいな事言ってる……それって……もしかして僕の為なの?

 

「名前覚えたら、お前の事調べ尽くして、弱味握って卒業までイジメてやるからな?」

 

 この女は、そういう奴なんだ。

 

「な、なんの事ですか? あ、あたしはただ、時間無くて……門限あって、帰らないといけないだけで……」

 

 犬養君、ごめんなさい……

 

「親に叱られるのと、わたしに付き纏われるの、どっちが嫌か選べよ」

 

 僕の、せいだ……

 

 鬼釜尚子はイカれてる。三上君も相当ヤバいけど、ベクトルが違う。この女は、人のウィークポイントをまず探す。それを使って脅し、ターゲットを平伏させるのに快感を覚えているのだろう。僕には到底理解出来ない。でも、僕が全部悪いんだ。

 

「犬養君は関係無いだろ‼︎」

 

 僕のせいだから……これ以上、被害を拡大させたく無い。

 

「はぁっ? お前ら仲良いんだぁ? まぁ良いよ、犬養だっけ? 帰れよ」

 

 何を考えてる? この女が、これで終わる訳無い。

 

「それじゃああたしはこれで……」

 

「明日から一組の奴に一人ずつ、兎咲の秘密バラしてやる。いつ、噂が広がって天羽に届くか楽しみだなぁ?」

 

 そういう事か……それに、さっきまで想い人と名前は伏せていたのに、さらっと天羽という名前を出して来た。

 

「あ、あの……」

 

 犬養君が、鬼に話し掛けた。

 

「なんだよ?」

 

「なんで、そんな事するの……それの何が、楽しいの……?」

 

「お前マジでイジメてやるから、楽しみに待ってろよ」

 

 やめて……僕のせいで、犬養君まで不幸にさせたくない。

 

「い、イジメ……とかやめようよ? あと、猫宮? そんな所に隠れて、何をしているのかな?」

 

 猫宮君? 近くに居たの? 犬養君、なんで隠れてる事バラしたの?

 

「猫宮?」

 

 鬼が犬養君に聞いた。

 

「ほら! バレてっぞ! 顔出せよ」

 

 犬養君それって……

 

「まだ誰か居んのかよ?」

 

「おい! 猫宮! 呼ばれてっぞ!」

 

 自分だけ地獄に堕ちたく無くて、猫宮君を道連れにしようとしてる?

 

「ニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ‼︎ 何故バラすか⁉︎ もうみんな帰ろうかしてたではないか‼︎」

 

 確かにそうだね。犬養君、庇ってくれたのは嬉しいけど、さすがにやる事がさ……いや、僕が言えた事じゃ無いか……

 

「お前廊下に居た奴だな? なんだよ? お前も混ざりたいの?」

 

「へっ……ね、猫は、猫は……」

 

「猫宮か? 名前、覚えたからな?」

 

 被害者が、次々と増えていく。

 

「覚えたからなんなんだよ?」

 

 えっ? へっ⁉︎ 小鳥君⁉︎ あーもう‼︎ どうなってんだよ⁉︎

 

「はっ? お前誰だよ? ってか何で髪ちょっと濡れてんの?」

 

「いや、ってか……お前が誰だよ⁉︎」

 

 小鳥君は鬼釜の事を認識していなかった様だ。ってかそりゃそうか……何かこの子も鬼釜とか三上君くらい圧凄いもんな。あんま絡んだ事無いけど、別荘の時にめちゃキレられた事だけは覚えている。あと、何で髪ちょっと濡れてるの?

 

「へっ! ぴ、ぴぃちゃん⁉︎」

 

 猫宮君が小鳥君の方を向いて言った。ぴぃちゃんって前にも言ってたけど、それあだ名なの? 怒られない? あんまり言われて嬉しいあだ名じゃ無いと思うのだけど……

 

「あっ、猫ちゃん……またそのあだ名で呼んでくれたね……」

 

 めっちゃ嬉しそう‼︎ こんな顔の小鳥君見るの初めてだよ! えっ? なに? 小鳥君と猫宮君って仲良かったの⁉︎

 

「んだよ鬱陶しぃな‼︎ もういいわ……イライラすんだよ。お前らしょうもねぇ仲間意識で集まったんだろ? よく聞けよ? このストーカー野郎の秘密知ったら鳥肌立つぞ?」

 

 あ……あ……もう駄目だ。この鬼に全てバラされる。でも、秘密にされた所でイジメは無くならない。僕は、学校に行けない。もう、とっくに詰んでたんだ。

 

「もういいよ……」

 

 もう、どうでもいいんだ。

 

「カハハ……諦めた? 諦めたァァァァァァッ⁉︎ もういいんだ⁉︎ もう人生どうでもいいんだァァァアッ⁉︎ これからどうすんのぉ? 学校辞めるのぉ? 学校辞めてどうすんのぉ? 引き篭もるのぉ? 親のすねかじって生きてくのォォォォォォオッ⁉︎ 家族が可哀想だなァァァ‼︎ 自立しねぇお荷物になったガキ抱えて生活していかないといけないんだもんなぁ‼︎ 疫病神だなお前ェェェェェ‼︎ きっと、ウッ、フフッ、きっと家族も、ウフッ、ウフフフッ、死ぬ間際にお前の事産まなきゃ良かったって後悔するぜぇぇ? きっとナァァァァァァアッ‼︎」

 

「何この人……めちゃくちゃキモいんだけど?」

 

 あの小鳥君でさえ引いてた。

 

「じ、じ、カハッ……自殺する時は、連絡ちょうだい? その時は、大爆笑して見送ってやるからさァァァァァァァアッ‼︎ カハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 

「狂ってる……」

 

「コイツ、兎咲美穂はなぁ‼︎」

 

「やめて‼︎」

 

 えっ……こ、この声は⁉︎

 

「あ、天羽君⁉︎」

 

「あらあらぁ。さっき廊下に居た奴じゃん。そうか、コイツが天羽って奴だったのか? 丁度良いなぁ? 兎、お前の人生、今日で終わり」

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