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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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六十七頁    猫 拾肆   『猫も欲しい』

 六十七頁

 

 猫 拾肆

 

『猫も欲しい』

 

 天羽と二人で蛇喰商店街の入口に立った。ってか猫の人生に度々現れるんじゃ無いよこの商店街!

 

「ね、猫宮さん? 本当にここに琴子ちゃんが居るの……かなぁ? なんて……」

 

 天羽が疑問を投げ掛けて来た。

 

「はぁ? 天羽よ、お前猫の事が信じられぬか?」

 

「そ、そういう訳じゃ無いんだけど……」

 

「猫が面倒事を避けたくて、嘘吐いていると言いたいのだろう?」

 

「ち、違うくて‼︎ なんでわざわざ琴子ちゃん、こんな不気味な商店街に足を向けたのかなと思って……」

 

「知らないんだよ‼︎ 猫だったら絶対立ち寄らないんだよ‼︎ わんちゃんは結構天然な所あるから。猫は嘘など吐いていない! 心外なんだよ‼︎」

 

「ご、ごめん! 琴子ちゃんを、探そ?」

 

「ここに来てしまった時点でそのつもりなんだよ‼︎ お前がごちゃごちゃ言うからいけないんだよ‼︎」

 

 なんなんだこの女⁉︎ やたらと猫の逆鱗に触れ様としてくる‼︎ それもこれも全てわんちゃんのせいなんだよ。いや、元を辿れば兎咲のせいなんだよ‼︎

 

「み、美穂ちゃん。元気かな?」

 

 急になんだこの女⁉︎ 美穂とは兎咲の事だよな?

 

「天羽よ? 急に兎咲の話しなどするなよ縁起悪い‼︎」

 

 丁度心の中で、兎咲をディスった後だったから驚いたではないか!

 

「縁起悪い? な、何で? 心配だよ。ずっと学校休んでるし……」

 

「はぁ?」

 

 今はわんちゃんの心配する時だろぉが‼︎ 本当なんなんだコイツ⁉︎ 兎咲が首輪して鬼釜に散歩させられてた事なんて、猫にとっちゃどうでもいい事なんだよ‼︎

 

「えっ? それって……」

 

 それって……って何? コイツ、猫の心の声に反応してないか?

 

「な、なんなんだよ? それってってどういう意味か⁉︎」

 

 気味が悪いんだよ。

 

「あっ‼︎ 美穂ちゃん……」

 

「は? 天羽よお前いい加減に……って……」

 

 兎咲だ‼︎ トボトボと下を向いて、蛇喰商店街の入口のアーチを潜って来た。

 

「み、美穂ちゃ……」

 

 天羽の口を塞いだ。

 

「バカお前‼︎ やめておけ! 人には見られたく無い場面もあるだろう‼︎」

 

 兎咲は三メートル程しか離れて居ない猫達に気付かず、この世の終わりの様な顔をして呪われた商店街の中に入って行った。

 

「えっ⁉︎ 美穂ちゃん、佑羽に知られたく無かったのかな⁉︎ ゆ、佑羽は、また余計な事をしちゃったのかな⁉︎」

 

 手を離した途端にこの女は‼︎

 

「大声を出すなよ⁉︎ 兎咲に気付かれるではないか‼︎」

 

「こ、こういう時、気付かれちゃいけないんだ⁉︎ あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

「トリップするんじゃ無いよ‼︎ ってか全然兎咲気付かない‼︎ 振り向きもせず商店街の奥へと歩を進めているんだよ‼︎」

 

「何で美穂ちゃんが……鬼釜さんに何の弱味を握られているの⁉︎」

 

「知るか‼︎ 取り敢えず、尾けてみるんだよ」

 

 天羽の乱れた呼吸が整うのを待ち、兎咲の後を付けて行った。あれ? 何でコイツ、兎咲が鬼釜に弱味を握られているって発想になってる? えっ……猫言ったっけ? 言ったのかなぁ……怖っ……自分でも気付かない内に言ってしまったのか。兎咲よ、悪かったんだよ……

 

「美穂ちゃんに、話し掛けたらダメかな……?」

 

 トボトボと歩く兎咲を尾行している最中に、天羽が提案して来た。

 

「やめておくんだよ‼︎ 先程猫が言っただろう? 人には知られたく無い事もあるのだと。お前はなにか? 猫の言葉は右から左に受け流す仕組みになっているのか?」

 

 流石に、想い人に自分の無様な姿を見られるのは可哀想なんだよ。

 

「そ、そういう意味じゃ無くて……」

 

 その時、兎咲が立ち止まった。

 

「ヒィィィィィィッ‼︎ 気付かれたではないか‼︎」

 

「ち、違う‼︎ 美穂ちゃんの先……」

 

 兎咲の先に、鬼釜とわんちゃんが居た。

 

「へっ? 取り敢えず身を隠すんだよ‼︎」

 

「でも……」

 

「何故お前はいつも消極的で自分の意見が言えない癖に、こういう時だけ意固地になるのか⁉︎ 今は状況を把握する為に身を潜めて、理解出来たら乱入するのが賢いやり方なんだよ‼︎ 何を無鉄砲に、二十七時間テレビの時の爆笑問題の太田さんみたいに突っ込んで行こうとするか⁉︎ 無駄死になんだよ‼︎」

 

 まぁ、あれはあれで猫は大好きなのだけれど。

 

「そ、そっか……ご、ごめんなさい……」

 

 ってか別荘の時、恥ずかしい事言ったな……天羽は友達想いとか。恥ずいんだよ。覚えて無いか? あの時トリップしてたしな。なんだかんだ言っても、悪い奴じゃ無いんだよ。

 

「落ち着いて、今は成り行きを見届けるんだよ」

 

 猫と天羽は物陰に隠れ、三人の様子を伺う事にした。

 

「遅ぇーんだよ‼︎ オイ兎ィィ? 息も切れてねぇなぁ? 歩いて来たのか? 舐めんなタコスケがぁ‼︎」

 

 鬼釜が兎咲を叱った。

 

「な……なんだよコレ? 何で⁉︎ 犬養君がここに居るんだ⁉︎」

 

「あぁ? んだテメェその口の利き方はよぉ⁉︎ 良いんだ? お前の想う奴にまでバラしちゃって良いんだ? 良いんだったら良いんだぜ? 良いのか? あっ? 良いのか⁉︎」

 

 兎咲の想い人とは天羽の事なんだよ。兎咲は天羽に聞かれたく無い筈だから、このやり取りを天羽に見せる訳にも聞かせる訳にもいかないんだよ!

 

「天羽よ! お前は帰れ」

 

 取り敢えず、正攻法で行こう。

 

「へっ? なんで⁉︎ 佑羽の大切な友達が‼︎ 大変な目に遭うかもしれないのに、帰れる訳無いじゃない‼︎」

 

 まぁ、納得しないか……ってかこんなにはっきり友達とか公言するか⁉︎ なかなか言え無いんだよ。相手はそう思って無いかも? とか思って友達とか言え無いんだよ。なんか、羨ましいな。友達だからって、胸張って言ってくれる人、猫も欲しい。

 

「天羽よ、お前の為じゃ無い。兎咲の為に帰れと言っている。後の事は猫がどうにかしてみせる。だから……」

 

「……分かった。でも、帰る事なんて出来無い! みんなの声が聞こえない所まで行くから。それで、納得してくれないかな?」

 

 天羽よ……

 

「分かったんだよ。それじゃあ距離取って、何も見え無い所……あそこで待っているんだよ」

 

 こちらの様子が死角になる場所を指定した。

 

「分かった」

 

 天羽が猫の指定した場所に向かいながら問い掛けて来た。

 

「猫宮さん……?」

 

「んっ? なにか?」

 

 猫の問い掛けに、天羽は顔だけこちらに向けて応えた。

 

「ばーか、マヌケ!」

 

「ハァッ⁉︎」

 

 そのまま猫の指定した位置に佇んだ。

 

 ハァッ⁉︎ 少しくらい株上がったのになんなんだお前⁉︎ めちゃくちゃ嫌いになりそうなんだよ‼︎ もうどうでも良いわ‼︎ 取り敢えず、今は兎咲の事気にしないといけないんだよ。

 

 ……いや、なんなんだよアイツ‼︎ 気味が悪いんだよ。

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