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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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六十五頁    天使 捌   『対峙』

 六十五頁

 

 天使 捌

 

『対峙』

 

 猫宮さんと琴子ちゃんの心の声が途切れ途切れ聞こえて来た。その鬼釜さんという子が美穂ちゃんが学校を休んでいる原因なのだと確信した。何故二人がそう思うのかはまだ分かっていないけど、一年の時から佑羽に優しくしてくれた美穂ちゃんは、きっと今苦しんでいる。佑羽にも何か出来る筈だから、行動に移したい。

 

「話し掛けに行こう」

 

「えぇっ⁉︎」

 

「ちょっ! わんちゃん静かに‼︎ あ、天羽よ! 突飛な発言をするんじゃ無いよ‼︎ わんちゃん驚いて情け無い声を出してしまったでは無いか⁉︎」

 

「でも、このままじゃ帰れないよ」

 

 美穂ちゃんが休む事になった理由くらい知るまでは……

 

「昨日は尻尾巻いて帰った癖に、こういう時だけイキがるんじゃ無いんだよ!」

 

 そんな言い方する⁉︎ 昨日の事まるで悪びれて無いんだね。

 

「それは猫宮さんがエロい事したいとか言って来たから! ゆ、佑羽……そういうの分かんないんだもん……」

 

「はっ⁉︎ 天羽、そんなストレートに言うな……」

 

「おいクソ猫? お前、天使に何しようとしやがった⁉︎」

 

 あっ、そこまで話すつもり無かったのに……猫宮さんが煽るからつい……

 

「あっ、あっ、琴子ちゃん? 佑羽は、平気だから、ねっ? もう、終わった事なんだから……」

 

 これで、誤解解けたかな?

 

「天羽よ⁉︎ そういう言い方をするなよ‼︎ お前はそれで火に油を注いでいる事に気付かぬか⁉︎」

 

 ち、鎮火させたつもりなんだけど……?

 

「天使が辛かったらしいじゃねぇかよぉ⁉︎ ぶち殺してやろぉかエロ猫がぁぁぁあ‼︎」

 

「ちょっと? うっせぇんだけど⁉︎ よそもんが何わたしのクラスの前で騒いじゃってくれてんだよ‼︎」

 

 あ、手間が省けた。鬼釜さんの方から話し掛けて来てくれた。

 

「お、お、ニャアァァァァァァァァァァァァァァァアッ‼︎ だ、だってこれは、わんちゃんが悪くて……」

 

「はぁっ? お前何言って、って、ワオォォォォォォォォォォォォォォオッ‼︎ お、鬼釜さん⁉︎ は、はじめまして‼︎ じゃなくて、こ、コイツが悪くて……」

 

 猫宮さんと琴子ちゃんが、鬼釜さんと対面してお互いに罪を擦り付け合った。

 

「んな事ァどうだって良いんだよォ‼︎ テメェら二組じゃねぇだろ⁉︎ ナニわたし達のクラスの前で大声出してやがる⁉︎」

 

「あ、あの……」

 

 佑羽が何とかしないと!

 

「ゆ、佑羽達は、お、鬼釜さん、あなたに話しがあって来ました」

 

 い、言ってやった! そうだ! 佑羽もちゃんと戦える様になったんだ!

 

「はぁぁっ⁉︎ 声が小ちゃくて聞こえねぇんだよ‼︎ んな奴論外だから下がってろ‼︎」

 

 ゆ、佑ウハァァァァァァァァァァァァァァァァアッ⁉︎ つ、強くなったつもりだったのに、ろ、論外、ですか?

 

「何が理由でわたしのクラスの前で騒いでたのか言えよ⁉︎ 舐めてんのかオラァ‼︎」

 

「に、逃げよう‼︎」

 

 琴子ちゃんが情け無い事を言った。

 

「うん‼︎」

 

 猫宮さんが同調した。ってか、琴子ちゃんは佑羽達の返事を聞く前に背中を向けて走って逃げてった。

 

「アァァァァアッ⁉︎ 逃がすかよ‼︎」

 

「ゆ、佑羽は‼︎」

 

「天羽よ‼︎ ここは逃げるんだよ‼︎」

 

「えっ?」

 

 猫宮さんに手を掴まれ、琴子ちゃんとは逆方向に走り出した。

 

「アァッ⁉︎」

 

 鬼釜さんは一瞬こちらを振り返り威嚇して来たのだが、琴子ちゃんの逃げて行った方向に走り出していたので、踵をわざわざ返して佑羽達を追うのを嫌ったのか、そのまま琴子ちゃんを追いかけて行った。

 

「あーあっち行った‼︎ 助かったんだよ」

 

 猫宮さんが安堵の表情を浮かべた。

 

「そんな……琴子ちゃんが……追いかけようよ!」

 

 このまま放って置く事なんて出来ない。

 

「はぁ? ふざけるなよ。あの女は自業自得なんだよ」

 

 あの女って、琴子ちゃんの事かな?

 

「琴子ちゃんと猫宮さん、友達じゃ無かったの?」

 

「利害関係が一致していただけなんだよ。それにお前も以前、わんちゃんは猫の事を良く思っていないと言っていたでは無いか?」

 

 あっ、確かに言った。

 

「でも、別荘の事とかあって、みんなとの友達の絆、深まったよね?」

 

 みんなで、あの死線を乗り越えたんだよ?

 

「お前が撒いた種だろぉが‼︎ 絆だと? 深まったと思っているのはお前だけなんだよ! 猫はただ女神に振られ、彼氏持ちだと知った忌まわしい夜だったんだよ‼︎」

 

「えぇっ⁉︎」

 

 そうなの⁉︎ ゆ、佑羽は、また勘違いしてたんだ。

 

「本当にお前は、思い込みの激しい迷惑な女なんだよ」

 

 そこまで言う⁉︎

 

「でも……」

 

「でもだと? お前が猫に口答えなどするなよ!」

 

「猫宮さんは‼︎ 佑羽を……助けてくれた。恵理奈ちゃんが向けた刃から、佑羽を助けてくれたもん‼︎」

 

「あれは……女神を、人殺しにしたく無くて」

 

「その後! みんなの代わりに自分を殺してって言ってたじゃない⁉︎ おかしくないかなぁ⁉︎ 猫宮さんは、みんなの盾になろうとしてたもん‼︎」

 

「お前あれだけトリップしてた癖に、鮮明に覚えているではないか⁉︎ あんな猫の黒歴史は忘れてくれて良いんだよ‼︎」

 

「忘れられる訳無いでしょ⁉︎ 今だって、琴子ちゃんみたいに一人で逃げれば良かったのに、佑羽の手を、握ってくれたじゃ無い‼︎ 本当は優しい癖に、格好付けるなぁ‼︎」

 

「か、格好など付けて無いわぁ‼︎ あぁもぉぉぉぉお‼︎ お前と喋っていると調子狂うんだよ‼︎」

 

「鬼釜さんと琴子ちゃんを、追いかけよう!」

 

「お前も! 琴子ちゃん一人で逃げたと言ったではないか‼︎ そんな女を、助けてやる義理があるか⁉︎」

 

「敵を自分一人に引き付ける為だったのかも……」

 

「正気か? あの女は自分の事しか考えて無いんだよ。それに、今から走っても追いつかないんだよ」

 

「でも、放っておけないもん!」

 

「普段は自分の意見もまともに言えない弱虫の癖に、こういう時だけ狂った様にアイデンティティ炸裂させやがって! ……このままで終わるのも何か癪なんだよ。分かったんだよ。わんちゃんに電話くらいしてやるんだよ」

 

「電話?」

 

「電話して、今追われてるんだったら猫達も向かうんだよ。鬼釜を撒いた様だったら帰る。電話に出なかったら危険な状態という事で、探してみるか?」

 

「うん‼︎」

 

 なんだかんだ言ったけど、この人、やっぱり良い人なのかもしれない! 猫宮さんが携帯を取り出して、琴子ちゃんに電話を掛けた。

 

「ほら、お望み通り掛けてやったぞ! んっ? すぐ切れた? あっ……」

 

「切れた? 危険な状況って、事?」

 

「迷子になったら、あそこに行く様になってんのかぁぁあ⁉︎」

 

「猫宮さんどうしたの⁉︎ 琴子ちゃんは、電話に出なかったの?」

 

「圏外……わんちゃん、蛇喰商店街に迷い込んでるみたいなんだよ」

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