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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
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六十二頁    天使 漆   『エロ』

 六十二頁

 

 天使 漆

 

『エロ』

 

 アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ‼︎

 

 ゆ、佑羽は、なんて馬鹿だったんだよ⁉︎ 

 

 馬鹿! バカ‼︎ 能無し! 居なくなれ……この世から居なくなっちゃえ‼︎

 

 佑羽は、猫宮さんから聞こえて来る心の声の中で、美穂ちゃんが何かしらのトラブルに巻き込まれていると知った。だから、だから……佑羽が告白していると勘違いしている猫宮さんと形だけでも付き合って、その情報を得られないかと思っていた。

 

 そんなの、間違ってた。

 

 言い訳だけ先にさせて貰うけど、猫宮さんは、佑羽の事を道具としてしか見ないと思っていた。自分が恵理奈ちゃんに近付く為、他の人を陥れる為の道具としてしか見られないと思っていた。でも、違った。

 

 さっきのやり取りで、猫宮さんの心の声が山程押し寄せて来た。勘違いではあるけれど、私からの告白をめちゃくちゃ喜んでくれてた。佑羽が負の感情しか読み取れないから気付かなかったんだ。猫宮さんは、佑羽と恋人になった事を、喜んでくれてたんだ。

 

 佑羽は、人の恋心に付け入って利用しようとしてたんだ。最低だよ。マジ、最低なんだよ‼︎ どんな理由があったって、それは、許されない事だよ。

 

 そう、佑羽も、猫宮さんとちゃんと向き合って行く! だって、だって……佑羽と付き合うってなって、心が踊ったって、ドキドキして夜眠れなかったって、めちゃくちゃ嬉しいもん‼︎ そんな心の声聴いちゃったら、誰だって意識しちゃうよ!

 

 猫宮さんと二人で、帰り道を共にした。猫宮さんと佑羽の家は方角が一緒で、その間、大して会話する事も無かった。猫宮さんの家の場所を聞くと割りかし近くて、別れる道までの間、何の話しをするか考えていた。

 

 美穂ちゃんの事を聞いてみようか? どうしよう……

 

 そんな事を考えていると、背中に鋭い視線を感じ、振り返って見てみた。

 

 ……あれって、琴子ちゃんだよね……? 電信柱に隠れて、こっちの様子伺ってる? ってあれ? 猫宮さん急に立ち止まった。なにかな? あれっ⁉︎ 猫宮さん? 佑羽の右手、握ってきた……

 

「あ、天羽よ! わ、悪かったんだよ」

 

「猫宮さん? 何の話し、かな? なんて、えへっ……」

 

 ど、どうしたの⁉︎ 目が血走ってるけど……

 

「猫は! 本当はお前の事などどうでも良かった! 猫は女神が好きだから、その為にお前の事を利用しようとしていたんだよ!」

 

 知ってる。そして佑羽は美穂ちゃんの事が知りたかっただけだ。

 

「そ、そうだったんだ。えへっ」

 

 でも、佑羽は真実を言えない。言ってしまえば、心の声が聴こえて来る事をバラしてしまう事になるから。こんなの、ズルい事だって分かってる……

 

「で、でも! さっきわんちゃんの前で言ってくれた事、嬉しかったんだよ!」

 

 佑羽も、何か変だな? 少しだけ、ドキドキしている。

 

「ね、猫宮さん……」

 

 あっ、琴子ちゃん? 横目で見ると、めっちゃ近くの電信柱まで移動して来てる。声が聞こえる位置まで移動して来たのかな? ってかまる見えなんだけど? 電信柱さえあれば隠れてると思ってる⁉︎

 

「ね、猫は……」

 

「えっ?」

 

 キャァァァァァァァァァアッ‼︎ ま、ま、マジもんの愛の告白⁉︎ ヤバッ、今そんな事されたら、この心、持って行かれちゃうって‼︎ や、やめて? 琴子ちゃんだって見てるのに! そんな、そんな……恋に落ちた女の顔なんて、友達に見られたくない……

 

 あっ、大丈夫だ。琴子ちゃんは、耳を塞いでふらふらしながら背中を見せて歩き始めている。友達の、しかも猫宮さんとは長い付き合いなんだもんね? そんな二人のそんな姿、見ていられなかったんだね? 明日からどうしよう? 琴子ちゃんと顔合わせるの恥ずかしいな。でも……

 

 今は、その言葉をちゃんと聞いてあげたい。きっと、勇気を振り絞って、精一杯伝えてくれる筈だから。

 

「猫はこの際、お前で構わない‼︎」

 

「はっ?」

 

 これが、愛の告白……?

 

「ね、猫は、エロい事に興味が津々なんだよ‼︎ お前とは死んでも嫌だと思っていたけれど、お前もなかなか株が上がったもんだよ! だから、お前でも構わない‼︎ 本当は女神とおっぱいを揉み合ったり、身体を擦り合わせたりしたかった。でも、女神は彼氏持ちだしハードル高いから、お前で済ませておくんだよ!」

 

 へっ? えっ? へっ⁉︎ き、聞き間違いかなぁ……? この人、とてつもなく失礼な事言ってない⁉︎

 

「ゆ、佑羽は、なんていうか……え、恵理奈ちゃんの代わりなの?」

 

 まだ、恋に浮かれていた心がその言葉を認めたく無い様だ。

 

「女神に、女神に代わりなど効くかぁ‼︎ 何を浮かれて見当違いの戯言をほざいているのか? 恥を知るんだよ‼︎ ただ、光栄に思えよ? あの女神様の代わりの様な者を務めさせて頂く事を光栄に思え‼︎」

 

 狂ってる……いや、最初からこんな人だった。佑羽は、何してたんだろ。帰ろ。

 

「あ、あの、佑羽は……エッチな事とか、良く分かん無いから……」

 

「カマトトぶるなよ? お前は猫の事が好きなんだろ? そして猫に告白をした。何故告白をした? エロい事がしたいからだろ⁉︎」

 

「な、なんでそうなるの⁉︎」

 

「好きになっただけならそのままで良かっただろう? 側から眺めていれば済んだ事だろう? 何故告白というリスキーな真似をした? 答えは一つなんだよ。お前は、猫とエロい事がしたかったんだよ‼︎」

 

 ヒィィィィィィィィィィィィィィイッ‼︎

 

 ゆ、佑羽は、心の中でもこんな事言うのはイケナイ事だと思っていたけど、さ、さすがに、こんな変な人と関わらなければ良かったよォォォォォォオ‼︎

 

「ゆ、佑羽は、佑羽は……」

 

「我が家に来るんだよ。朝まで、たっぷり可愛がってあげるのだから」

 

「嫌ァァァァァァァァァァァァァァァアッ‼︎」

 

 猫宮さんに掴まれていた右手を振り解き、全速力で走って逃げた。

 

「なっ⁉︎ あ、天羽よ……」

 

 暫くして振り返ってみると、猫宮さんは躓いたのか? 膝を地面に付け、寂しそうな表情で佑羽に右手を向けていた。

 

 いや、なんなの⁉︎ 訳分かん無いよ‼︎ 嘘でしょ? ゆ、佑羽が悪いの? ぜ、絶対、おかしいのはそっちなんだからァァッ‼︎

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