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スクリーム・ノート II  作者: 藤沢凪
10/50

六十頁    鳥 拾   『私を殺してね?』

 六十頁

 

 鳥 拾

 

『私を殺してね?』

 

 パチパチパチ

 

 屋上の入口の方から拍手が聞こえた。

 

「おめでとう」

 

 何が?

 

「誰だよお前?」

 

 思いのまま口に出してしまった。

 

「仲直り出来て良かったじゃない?」

 

「はっ、はっ?」

 

 見られてたァ⁉︎ 恐子達と喋ってる所見られてた⁉︎

 

「何かそういうの、良いもんだよね?」

 

 コイツ……ちょっと泣いてない?

 

「よ、良くねぇよ‼︎ わ、忘れてくれ……」

 

 私は、恥ずかしさに耐えきれなくなり、屋上から逃げようとした。

 

「ちょっと待って」

 

 謎の女に、右手首を掴まれ足止めされた。

 

「はぁっ⁉︎ ってかお前かよ⁉︎ 手紙書いた奴!」

 

「私じゃないよ? ってか手紙? なにそれ? どんな事書かれてたの?」

 

 違ぇのかよ⁉︎ じゃあお前一体誰なんだよ⁉︎

 

「ならあんたに用は無い。帰るから。手離せよ」

 

「私の名前は阿久津真央。みんなから、悪魔って呼ばれてるんだ」

 

「悪魔?」

 

「あくつまお、つとおを取って悪魔、蔑称だよ。陰で、そうやって呼ばれ続けてるんだよ」

 

「嫌じゃ、無いの? 傷付かないの?」

 

「傷付いてるよ? 別に良いの! 蓄えていくから……」

 

「蓄える?」

 

「知らなくて良いんだよ? あなたはリストに入って無いから。あなた、悪い人だと思ってた。でも、話しを聞いてみて、そんな悪い人じゃないと思えた。だから、気にしなくて良いんだよ?」

 

 私の事悪い人だと思ってた? 私の事知ってたの? いや、それって私じゃなくて三上の事言ってる? でも、手紙の事知らなかったしな。関係無いのか?

 

「ってか! 別にそんなにお前と話ししてねぇし! 悪い人じゃないってどこで認定受けた訳⁉︎」

 

「私も同じ様なものだから。心を許せる友達が居ないから、自分の中で架空の友達を召喚させて会話しているの‼︎」

 

「アァァァァァァァァァァアッ‼︎ 聞かれてたのかよ⁉︎」

 

「仲直り出来て、良かったね?」

 

「ヤメロォ‼︎ そんなんじゃねぇ……あいつらとは、そんなんじゃねぇから!」

 

 は、恥っずぅ……恥ずかし過ぎて、涙目になって来たし!

 

「えっ……どういう事?」

 

「だ、だから……」

 

 私とは関係無い人達です……違うな。独り言言ってただけ……違うな。あいつらとは、友達なんかじゃ無い……絶対に違う。

 

 さっき、今さっき、その大切さに気付いたのに、そんな言葉、言える筈無い。

 

「あなたにとって、あの人達は?」

 

 私は、阿久津の目を見て、その質問に答えた。

 

「大切な人達だ‼︎ 私にいつも寄り添ってくれたんだ……お前に何が分かる⁉︎ 恐子達を馬鹿にすんじゃねぇ‼︎」

 

 喚き散らかす私の両肩に手を置き、優しい声で阿久津は呟いた。

 

「大丈夫だよ」

 

「えっ?」

 

 そういやこいつも、架空の友達召喚してるって言ってたな。同じ穴のムジナって訳か?

 

「私にもそういう友達が居るの! 一人目はマコ、この子はとっても優しいんだよ! いつも的確なアドバイスくれるし、私が落ち込んでたらすぐに気付いて隣に寄り添ってくれるんだ! 髪を撫でて、大丈夫だよって言ってくれる。嬉しいし、癒される。だけどさ、私の事を悪魔って陰でだけ呼んでる子を見ると、泣いちゃうんだ。別に私は良いんだよ? そんなの、昔からのあだ名だし。でも、大丈夫って言ってるのにあの子、いつも泣いちゃうんだ」

 

 どうした? 架空の、友達の事だよね?

 

「良い子だね。マコちゃん……」

 

「二人目はね! マキって子なの! マキったらいつもお節介ばっかり焼くのよ? やたらと出て来てあれはこうした方が良い、ああした方が良いって。例言わないと分かん無いよね? そろそろベッドのシーツ洗濯に出した方が良いとか、目覚ましのスヌーズの回数減らせとか、扇風機に埃付いてるから取った方が良いとか! 本当口うるさいんだからあの子は!」

 

「へ、へぇー……」

 

 これ、マジで言ってんのこの子? いや、側から見たら私も同じ、なのか?

 

「三人目はマロ!」

 

「マロ⁉︎」

 

「この子はね? マジ謎!」

 

「謎⁉︎」

 

 自分で創り出したんだろ⁉︎

 

「トイレに一緒に入って来たりするし、私とマコがくっついてると引き剥がしてくるし、とにかく、甘えん坊さんなのかな?」

 

 だからお前が創り出したんだろ?

 

「でもね? ふふっ。ほっぺた膨らませて睨んで来る顔が堪らなく可愛くて! いつもギューッて抱き締めちゃうんだ! そうすると、止めろよ! とか言ってどっか行っちゃうんだけどね」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 ヤバッ、若干引いてしまった。

 

「……こんな事他人に話せたの、初めてだな……」

 

 シンパシー感じ始めてる⁉︎ やめて? 初対面だし私達‼︎

 

「あの、私さ? 人待ってるから。今日は、この辺でさよなら」

 

「私だよォォォォォォオ⁉︎ あなたの待ってた人は私だよォォ‼︎」

 

 狂ってんのかコイツ⁉︎ まぁ結構待ってたけど他に誰も来ないし、手紙の主は逃げたって事で良いか?

 

「そ、そうだったんだ? じゃあ、帰るね?」

 

 この女のヤバそうな雰囲気を感じ取り、足早に屋上からの出入口へと歩を進めた。

 

「バイバイ………一番になってね?」

 

「えっ?」

 

 このヤバそうな女が、最後の最後に気になる一言を放った。

 

「一番の友達になって、私を殺してね?」

 

「はっ?」

 

「さようなら」

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