黄色のチューリップー私ー
第二章 黄色のチューリップ
「実は女性が好きなんだよね。」
私が自分の部屋でゆっくり過ごしている時、一つのメールを受け取った。メールが届いた時、椅子から落ちそうになった。
彼女からそう聞いたときは正直驚きを隠せなかった。だって彼女はつい最近まで彼氏がいたからだ。私をからかっているのかと不審に思ったが、そのメールの文から、何故か本気さが伝わってきた。
「恋愛に性別は関係ないと思うよ、私は偏見をもってないよ。」
私はとっさに返信をして、ベットで横になり、枕に顔を埋めた。彼女は何を伝えたいのだろうか。私には正直わからなかった。
私はふと疑問に思ったので、単刀直入に聞いてみた。
「んで、誰が好きなの。」
彼女からは想像もつかない返信が帰ってきた。
「…先生」
私は思わず手を止めてしまった。まだ、高校生だろ。学生だろ。生徒と先生の恋愛が駄目なことぐらいわからないのか。私は絶句した。
ただ、正直いうと、彼女が伝えたいことはこれだけじゃない事ぐらい、10年の付き合いがあるとわかるものだ。彼女は私に何故、このタイミングで、カミングアウトしたのだろうか。きっと彼女にとって大きな決断だったに違いない。
「わからなくもないが、わからない。」
この曖昧な私の気持ちはどう表したらいいのだろうか。好きになってしまうほど魅力のある先生なのだろうか。
確かに生徒思いで、完璧な先生だと私も思う。ただ、それだからといって恋愛的に見てしまうものか。
「わからなくていいよ、普通の人には到底理解できない恋愛をしてるから。自分でもそれがわかる程だよ。」
彼女からはそう返信がきて、そこで私達のやり取りは途切れてしまった。冷房をつけているはずなのに、額から汗が数滴流れてきた。
彼女と話したのは、何日か後の放課後だった。
たまたま帰り道にあったので、駅の前のベンチに二人で腰掛けた。どこからかするカレーの匂いがお腹を空かせる。
お互いに話したいことがあるのは伝わる。ただ、切り出せない、タイミングを掴めない。そんな空気が5分ほど流れて、彼女の口から言葉がでできた。
「…先生ってクシャって笑う笑顔が可愛いよね。」
「うん、それはわかる。」
反射で答えた。彼女の口からは先生を一人の女性として見ている発言がでできた。私はどうしていいかわからなかった。そのまま彼女の流れに身を任すことにした。
だけど彼女は急に声を荒げた。
「…偏見ないの。どうして否定しないの。他にもこんな人がいたわけなの。」
彼女は怒っていた。彼女は私が本音で話していないことを見抜いていたのか。少し自分を恥じた。
だから私も彼女と正面からぶつかることにした。
「正直いうと、好きになるのはありだとは思う。感情は自分自身で操作できないからね。ただ、」
「「伝えるのは良くない」」
「そういうことね。」
彼女は全てわかりきっていた。彼女は大人だった。彼女は全てわかりきった上で、自分の感情をどう動かしていいのかわからなくなっていたのだろう。珍しい彼女の姿を見た気がした。そんな彼女は初めてみた。
「それが本音だよ。濁らしててごめん。」
私は彼女に素直になれてスッキリしたとともに、彼女の顔色がどんよりしているのを見た。
「ただ、初めての経験だけど偏見もない。」
私は気持ちを全て伝えきって、立ち上がった私は彼女に手を振った。
「心の居場所を見つけられなくなったらいつでも言って。」
そう声をかけた私は、彼女に背中を向け駅から離れた。
「ありがとう。」
ぼそっと吐かれた小さな声が私の背の方で聞こえた。




