フクジュソウー私ー
第六章 フクジュソウ
彼女はいつもずっと悩んでいる。
私だってそうだ。
周りも少しずつ大人に近づき始めて、でもまだまだ子供だった時。
彼女に彼氏ができた。初めての彼氏だった。
小学校卒業前の、クリスマスの時期だった。私は正直遊び半分だと思っていたし、周りの人だって、たかが小学生のすることは可愛い事だろうと思っていた。
結局のところ、キスなんて事はしなかったのだから。
冷え込んでいたある日、彼女と私は二人で公園のベンチに腰をかけ、横並びになって話していた。
遊具は特になくて、誰もいない静かな公園に彼女の悩みは静かに反響していた。
「付き合うってなんなんだろう。」
私は白く濁る息を、震える手の手のひらを合わせて、吹きかけて温めていた。
「手をつないで、ハグして、キスをするだけが付き合う理由なのかな。」
彼女は何を考えていたのだろうか。何があったのだろうか、私は何も知らない。
「確かにまだ小学生だし、ませてる感あると思うけど。」
私は最近好きな男の子に振られたのが悔しくて、強くあたった。むしゃくしゃしていた気持ちを彼女にぶつけた。
彼女は悲しそうに笑顔を浮かべて言った。
「そうだよね。キス断ってよかった。まだ早いって思ってしまったんだよね。」
私は安堵と驚きの感情が一度に来た。キスしてない、キスしてない、キス……。
彼女はいつから大人になったのか。まだまだ子供だったはずなのに。私も彼女も。
静かな公園がより一層静かになる。ほろほろと儚く白い雪が降ってきた。
彼女は手袋をつけた手をパンパンと叩いていた。
「そうだよ。まだ小学生だよ。キスなんて大人になったらでいいよ。」
私は少し早口になりながら言葉をこぼした。
彼女は軽く飛び跳ねながらベンチから立った。彼女はそのまま黙って、目の前の小さなグラウンドに向かって走っていった。
私は、何を考えているのだろう。
彼女の走っている姿を見ながら、私が何を考えていたかはもう思い出せないでいた。
私が私のことについて考えるのをやめたとき、彼女が何故走っているかが気になった。
彼女は気分が落ち着いたのか、走るのをやめて私のところへ帰ってきた。
彼女がこちらをみてニコッと笑ったが、彼女の微笑みに、私はどこか恐怖を感じた。




