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ナイトコードΩ 【残響の封印】  作者: 神北 緑


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遺跡 ― 運命の鼓動

ひとときの安らぎの中で、二人は未来へ残すべきものと向き合う。

やがて訪れる運命の気配を、まだ知らずにいた。


日没が大地の温度を奪い、沈む光が長い影を落とした。

英霊たちの風は霊気へと変わり、遺跡全体を静かに包み込んでいた。


エリシアは、まだ見ぬ我が子のために――記憶を宿した石碑を、セシルと共に作っていた。


足元には三重の円、そして中央に刻まれた目の紋様。

それは――オルド・アークの紋章。


「これを見れば、あの子も気づいてくれるでしょう。自分が辿る運命と……私たちの願いに。」

エリシアは思念を込め、石碑に祈りを捧げる。


セシルは羊皮紙に記した夜会の薔薇と影の紋章を、自身の家紋として木箱に入れ、そっと石碑の裏に忍ばせた。

実験場を脱出してから、すでに数週間が過ぎていた。


まだ慣れぬ手付きで紅茶を淹れるセシル。

それを微笑みながら見つめるエリシア。


彼女は――数日前に夢を見ていた。

予知夢。その内容を打ち明けることを、ずっと戸惑っていた。


「エリシア。気遣いは無用ですよ。」

セシルはカップを差し出しながら、静かに言う。


言葉を発する前に、エリシアの肩が震えた。

ためらい、恐れ、そして覚悟。


そのすべてを押し込めるように、彼女は言った。


「……ごめんなさい、セシル。」

エリシアの表情が、悲しみで歪む。


一念を心に決めた彼女は、言葉を絞り出した。


「夢で見ました……子供の名前はルクジム。そして、私の愛する者の名は――慈無。」

エリシアの瞳には、涙が溢れていく。


一瞬の沈黙が、永遠に感じられた。


動揺は隠しきれない。

「……そうですか。」


一瞬だけ、セシルの瞳に揺らぎが走った。

「でも、私たちの関係は、何も変わるものではありません。」


静かに涙を溢し、頷くエリシア。

傍らで優しく見つめるセシル。


二人の間を、窓越しの月光が柔らかく照らしていた。


数日後――エリシアは突然、姿を消す。

「必ず戻ります。心配しないで。」

そう書かれた置手紙だけを残して。


それぞれの時間が、再び動き出すまでの安堵の内の心理。

ひと時の安らぎは――その裏に忍び寄る脅威を、まだ知らずに。


「分岐 ― 動き出す運命」へ続く。

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