表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトコードΩ 【残響の封印】  作者: 神北 緑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/189

遺跡 ― 刻まれた記憶

それは誰にも気づかれぬまま、確実に形を成し、

やがて避けられぬ運命へと繋がっていく。


暗闇を支配する魔人たちが巣くう世界――オルド・アーク。

その狂気の実験場は、何時にもまして慌ただしく鼓動し、警報が鳴り響いていた。


被検体の吸血鬼が研究員を攫い、逃亡したことへの警報。

もう一つは――異常なる狂気への警鐘。


血の匂いと腐敗臭で生臭く凍り付いた空間。

初現にして最恐、最悪のものが生まれようとしていた。


変成岩で作られた中央の巨大な魔法陣。

鮮血で書かれた魔界文字が、生き物のように蠢いている。


壁と床は赤黒く煤け、無数の傷跡が悲鳴を上げていた。

周囲を囲む蝋燭の燈が、不規則に揺らめく。

魔法陣の中――まだ人の形を残した翳が確認できる。


詠唱を唱える一人の狂人が、一心に呪文を紡ぐ。

もう一人が、生暖かい赤い液体を魔法陣に注ぎ込む。


炎が爆ぜ、空気が一瞬だけ熱を帯びた。

次の瞬間、耳を裂くような悲鳴が満ち、大気が震えた。


炎が空間を照らし、刹那にして消え、漆黒が支配する。

目が闇に慣れたとき、中央に――異形が佇んでいた。


モスグリーンの肌に、赤いひび割れが刻まれ、頭部には三本の角。

カリース・ヴァングレア――最初にして最厄の契約者が誕生していた。


研究者の一人が呟く。

「……成功したのか? 再生触媒は吸血鬼のDNAを模して作ったはずだが……どんな“化け物”が生まれた?」


現世に実体化された悪魔――すなわち契約者。

その力を引き出し、受け止める膂力と異常な再生力の根源に、セシルの実験が使われていた。


しかし、その力と再生力は、基となる吸血鬼のそれを大きく上回り――

結果的に、魔界相当の力の再現が可能となった。



一方――

エリシアを連れて脱出したセシルは、ロンドン郊外の山岳に作られた結界内にあるリバースの聖域――遺跡に身を寄せていた。


「ここなら、一先ず安心だ。」

セシルは強く言い切ったが、その声音にはどこか焦りが滲んでいた。


「ありがとう、セシル。でも……やがて追手は来ます。」

エリシアは気丈に答える。


「此処はリバースの聖地、遺跡。強固な結界が張られている。大丈夫だ。」

セシルは、彼女を安心させる言葉を紡ぐ。


「追ってくるのは魔の者。時間の問題です。」

エリシアの声は、風に溶けるように小さかった。


「魔の者?リバースですか?」

セシルが問いかける。


エリシアは小さく首を振り、静かに言う。

「いいえ。私たちのまだ知らない者です……その影は、もう動き始めています。」


その言葉の真意は、この時には分からなかった。

ただ、エリシアの不安だけが風に溶け、古き遺跡の石壁に染み込んでいった。



「遺跡 ― 運命の鼓動」へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ