↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ナイトコードΩ 【残響の封印】  作者: 神北 緑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/214

山中の遺跡 ― 導かれた気づき、古書店「ノクターン」 ― 交差する視線

月光が照らす山中の遺跡、古書店「ノクターン」。

言葉の裏に隠された真実がゆっくりと息を吹き返す。

すべては、まだ始まっていない。

だが、“誰のために力を振るうか”という問いだけが、 ページの向こう側で静かに脈打っている。

山中の遺跡 ― 導かれた気づき




ルクジムの足は険しい山中に向かっていた。


月光が静かに降り注ぐ、人里離れた山中の遺跡。

崩れかけた石柱と、苔むした祭壇が並ぶこの場所は、かつてリバースたちが身を隠した聖域だった。

そして、母・エリシアが最後に身を寄せた場所でもある。


ルクジムは、静かにその中心へと歩を進めた。


風が木々を揺らし、夜の静寂が彼の足音を包み込む。


石碑の前に立ち、彼は目を閉じた。

母の気配を探すように、空気の流れ、土の匂い、月の光――すべてに意識を向ける。


そのとき、足元の石に、奇妙な刻印があることに気づいた。


苔に覆われていたが、指でなぞると、古代文字のような模様が浮かび上がる。


「……これは……」


彼の頭にイメージが浮かぶ……それは、まるで遠い記憶が呼び起こされるかのような、あるいは予知夢のような鮮烈さだった。


“門は三重の円で守られている。中央の目が開かれた時、夜が構造を変える。”


その言葉と、石に刻まれた模様が一致していた。

三重の円。そして中央に、目のような印。


「見覚えのある紋章……」



彼は息を呑んだ。


この遺跡は、ただの隠れ家ではなかった。

母が何かを伝えようとしている。

そして、その答えの一部が、あの吸血鬼の元にあることを悟った。


石碑の裏には、さらに小さな印が刻まれていた。


その奥には埃にまみれた小さな木箱がある

その中には羊皮紙に描かれた紋章が見えた。


それは、セシル・ノクターン卿の家紋――夜会の薔薇と影の紋章。


「……セシル……あんたは何を知っている。」

その言葉には、かつての彼にはなかった、明確な意思が込められていた。


ルクジムは立ち上がった。


この場に答えはない。

だが、答えを知っている者がいる。


彼は山を下りる。

月光がその背を照らし、風が彼の足を押す

。

もう、立ち止まる理由はない。


向かう先は、ロンドン。

そして、古書店の奥に潜む“闇の貴族”のもとへ。







古書店「ノクターン」 ― 交差する視線




店内の鈴が鳴った瞬間、パウラ・ジョルジュ・ボナーは顔を上げた。


彼女はカウンターの奥で帳簿を整理していたが、来客の気配にすぐ反応した。


「いらっしゃ――」


言葉が途中で止まる。


扉の向こうに立っていたのは、フードを深く被った大柄な男。

だが、彼女の目には、幻術の影響で“人間の青年”として見えていた。


白い髪、鋭い瞳、そしてどこか寂しげな雰囲気。

彼女の胸が、微かに高鳴る。


「……あ、あなたは……」


ルクジムは、少し戸惑いながらも頷いた。

「セシルに、話がある。」


パウラは一瞬、セシルが不在かと思ったが、奥から静かな足音が聞こえてきた。


「おや、来るとは思っていたよ。」


セシル・ノクターン卿が、書棚の影から姿を現した。


その瞳は深紅に輝き、ルクジムの手に握られた羊皮紙にすぐ気づいた。


「パウラ、少し席を外してくれるかい?」


セシルの声は柔らかかったが、どこか重みがあった。

パウラは頷きながら、名残惜しそうにルクジムを見つめた。


「……はい。紅茶、淹れておきますね。」


彼女は奥のキッチンへと消えていった。


その背中には、ほんのりとした恋心と、理解できない不安が混ざっていた。



店内には、セシルとルクジムだけが残った。


「君がここへ来た理由は、わかっている。

母君の眠る地で、何かを見つけたのだろう?」


ルクジムは無言で羊皮紙を差し出す。


初めて間近で見る“闇の貴族”の存在感に、ルクジムは再び、あの夜の強烈な既視感を覚えた。


セシルはそれを受け取り、目を細めた。


「……これは、我が紋章。」


ルクジムは拳を握る。

「母は、俺を守るために死んだと聞いている。

あいつは、俺を門を開く鍵だと言った。」


セシルは頷いた。

「ああ、そうだな。だが、君はまだ“選べる”。

自分の力を、誰のために使うかを。」


その言葉に、ルクジムは目を伏せた。


だが、彼の中には確かな決意が芽生え始めていた。


奥から、紅茶の香りが漂ってくる。

パウラが、静かにティーカップをトレイに乗せて戻ってきた。


「……お話、終わりましたか?」


セシルは微笑んだ。その笑みに、どこか“哀しみと覚悟”が滲んでいた。


「まだ始まったばかりさ。」


パウラは、ルクジムにそっとカップを差し出す。

「よかったら……どうぞ。」


ルクジムは、少し戸惑いながらも受け取った。

その手に触れた瞬間、パウラの頬がわずかに赤く染まった。


彼女はまだ知らない。

目の前の青年が、人間ではないことを。

そして、彼が背負っている運命の重さを――


「古書店「ノクターン」 ― 闇の対話」へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。