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ナイトコードΩ 【残響の封印】  作者: 神北 緑


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廃工場屋上 ― 断られた手

月光が静かに降り注ぐ廃工場の屋上。


瓦礫の隙間から風が吹き抜け、血の匂いと鉄の香りが混ざり合っていた。


セシル・ノクターン卿は、差し出した手をそのままに、ルクジムの返答を待っていた。

その瞳は深紅に輝きながらも、どこか哀しみを湛えていた。


ルクジムは、しばらく黙っていた。


荒い息を整えながら、月を見上げる。

その瞳はまだ金色に染まり、獣の残滓を宿している。


「……悪いが、俺は行かない。」


その言葉は、静かだった。

だが、確かに拒絶の意志を含んでいた。


セシルは微かに眉を動かす。

だが、驚きも怒りも見せない。


「理由を聞いても?」


ルクジムは、ゆっくりと立ち上がる。

傷だらけの体を支えながら、セシルを見据える。


「俺は……戦うために誰かと並ぶより、自分の爪を信じてきた」

「今日、あれを倒したのも……ただ、目の前にいたからだ。」


彼の声には、疲労と痛み、そして深い孤独が滲んでいた。


「お前の言う“永久の安住”なんて、俺には遠すぎる。

俺は……ただ、生きてるだけだ。」


セシルは、しばらく沈黙した。

そして、静かに手を下ろす。


「……わかりました。無理強いはしない。」


彼はコートの裾を揺らしながら、屋上の縁へと歩く。

その背中には、どこか寂しげな気配が漂っていた。


「だが、覚えておいてほしい。

君が今日、あれを倒したこと――それは、ただの偶然ではない。」


ルクジムは答えなかった。

ただ、月を見上げ続けていた。


セシルは、夜空へと舞い上がる。


その姿は、風と闇に溶けるように消えていった。


残されたルクジムは、血にまみれた体を抱えながら、静かにその場に座り込んだ。


体中の痛みが、この現実が夢ではないことを突きつける。

彼の目には、先ほどの悪魔の姿と、セシルの深紅の瞳が焼き付いていた。



彼はまだ知らない。

この夜が、彼の運命を大きく動かしたことを

そして、再び“闇の貴族”と道を交える日が、そう遠くないことも。





裏の住人 ― リバース




世界は、表と裏でできている。


人々が暮らす都市、法律、秩序、日常――それが「表」。


そして、その影に潜む者たちがいる。


人狼、吸血鬼、異能者、妖、怪物――

彼らは「リバース」と呼ばれる。

異端者。裏の住人。


リバースは、かつて人間と共に生きていた。


だが、恐れられ、狩られ、隔離され、忘れられた。


今では、都市の影、森の奥、地下の隙間に潜み、

人に見つからぬよう、静かに生きている。


その中でも、特別な場所がある。

人の目に触れぬよう、結界で守られた聖地――「遺跡」。


そこは、リバースたちが古代から守り続けてきた場所。

記憶と血と魔術が眠る、静寂の地。

「山中の遺跡 ― 導かれた気づき」へ続く

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