聖獣対魔獣 ― 月影の呪牙
それは、獣の本能と神の血が融合した咆哮。
物語は、神性が闇を断つ夜を越えて、次の鼓動へと進む。
空間の湿度が霊気の上昇によって結晶化し始める。
鉄分を含んだ水分が気化し、音となって弾けるたびに、空間はさらに異質さを増していく。
ラデムの怒りが猛攻となって空間を揺らし、室温が急激に低下していく。
「パキッ……ミキッ……」
だが、ルクジムは微動だにせず、ラデムを見据えていた。
その攻撃は一つも当たらない。
極限の集中力によって、最小限の動きで攻撃を紙一重で見極めている。
まるで、攻撃がすり抜けているかのように見えるほどの精度。
「お前の細胞は、エネルギーにも使われているんだな。縮小が進んでるぞ。」
ルクジムが静かに呟く。
「おのれ……馬鹿にしおって!」
ラデムの表情には、明らかな疲弊が浮かび始めていた。
その瞬間――
ルクジムがゆっくりと目を閉じる。
冷気が、彼の周囲だけ蒸発していく。
体内の月光が滲み出し、毛皮が銀色に輝き始める。
ヴェイルの血が活性化し、神性が宿る。
開かれた瞳は、金色に光り、熱を帯びていた。
刹那――
ラデムの身体に、凄まじい衝撃が走る。
「ガハッ!」
ラデムが吐血する。
攻撃は続く。
その閃光は、一つにしか見えない。
だが、実際には2回、3回、4回と連続する連撃。
七撃…!この一瞬が、永遠に感じる。
爪が空気抵抗によって摩擦熱を帯び、銀から黄金へと変色していく。
それは――
「呪牙」
月の呪いを宿した、神性の武器。
獣の本能と神の血が融合し、空間を裂くような連撃へと昇華する七連撃!
一撃ごとに、月光の残像が軌跡として空間に刻まれていく。
「――月影の呪牙!」
ルクジムの叫びと共に、閃光が大きく輝き、空間に舞い散った。
「お……おのれ……!」
ラデムの瞳に、一瞬だけ“理解”が走る。
「この力は――神の……」
断末魔と共に、ラデムの身体は二回り以上小さくなり、黒い色を失いながら、空間へと消えていった。
静寂が戻る。
砕けた霊気が、光の粉となって降り注ぐ。
その中で、ルクジムはただ、月を感じていた。
「神の力……?」
彼は、自らに宿る力の重さを改めて噛み締めた。
だが、その空間には、確かに“神の咆哮”が刻まれていた。
「地質学研究所地下 ― 呪われた空間」へ続く。




