表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/112

過去を支配する者②

*この小説はフィクションです。

今回は出血・暴力シーンなどがあります。

 狂が勇輝を利用するのをやめ、攻撃を開始したが、勇輝は違った。

 あれほど、狂に攻撃を繰り返していたはず。今は我を取り戻している。目に黒い光が宿っていたが、それも消えている。

 そのわけは勇輝の母、透子の能力にあった。透子の能力は人の心を読むことができる。勇輝の能力は記憶に関係している。透子の能力とは全く関係ない。

 それでも、ごく稀に親の能力が子に受け継がれることがある。それが勇輝に起きていた。だが、父親の力弥から貰ったペンダントがあったからこそ発動されていた。瞬に壊されてからも度々、現象が起きていたが、今の勇輝はペンダントの存在も透子の能力が受け継がれたことも知らない。

 ペンダントを持っていたときは落ち着いた口調だったのに対し、今は荒々しい口調だ。

 身に起きていたとしても覚えていないだろう。

 そんな勇輝の変化を知っているはずの狂が冷静さを失い、攻撃を繰り返すばかり。

 勇輝は攻撃から身を防御して、かろうじて耐えていた。


 不意に勇輝は狂と目を合わせる。その瞬間、勇輝の頭の中に記憶が流れた。

「妹は病気だったのか。それも宣告された重い病気だった」

 ぽつりと呟いた勇輝の言葉に狂は目を大きく見開いた。なぜ、それを知っていると問いかけるように勇輝に視線を合わせた。

「辛かっただろ。でも、一番辛いのは妹だろうな」

 勇輝は狂の視線に答える代わりに言葉をかけるように発した。

 不意をつかれたように動揺を見せる狂の攻撃が弱まるのを勇輝は感じ取った。

「なぜ、過去を変えようとする? 妹を亡くしたのなら、辛さが分かるはずだ。それに過去を変えても何も変わらない。能力者なら分かるはずだろ!」

 更に言葉を投げつける勇輝だが、逆効果。狂の目が赤く光り出した。

 怒りを意味する赤色に勇輝は屈しない。心の奥底に抱えている深い闇があると思ったのだ。

「お前に何が分かる? 大して強くもないお前が分かったようなことを言うんじゃねえよ!」

 次の瞬間、勇輝の体に幾つもの切り傷ができ、血が噴き出した。

 一瞬、勇輝は怯んだものの狂の目をまっすぐ見据える。目が合うと、再び勇輝の頭の中に記憶が流れる。

 最初、記憶が流れたときは動揺したのにも関わらず、今は対応できている。

 何度も記憶が流れる度に狂が暴れ狂う本当の理由を知りたいと思うようになったのだ。

「分かる。親父と似てる。ずっと引き摺ってるんじゃねえの?」

 火に油を注ぐように狂に言い放つ勇輝だが、狂は勇輝の言葉に眉をしかめただけで何も言い返さない。

「過去を変えても妹は喜ばねぇし、過去は変わんねぇ」

 一瞬、狂の怒りが収まったように見えた。それはほんの一瞬だった。

 勇輝の言葉に怒りをあらわにする。

笑美えみさん?」

 突然、勇輝は言葉を発する。直後、狂の心の奥底に抱えている感情がむき出しになった。勇輝の目には一瞬だけ狂の目から紺色が見えた。


 紺色。それは悲しみを意味する。濃い色からして強い感情をあらわしているのだろう。それを感じ取った勇輝は狂の記憶を見ようとまっすぐ見据えた。

 次の瞬間、勇輝の体に痛みが走る。勇輝は何が起こったのか理解出来なかった。

 体をよく見ると、幾つもの傷ができている。痛さにその場にしゃがんでしまう。

「油断はするなと教わらなかったか?」

 勇輝の視線には平然としている狂の姿が映る。彼は不気味な雰囲気を漂わせ、不敵な笑みを浮かべている。

 徐々に勇輝の視界が霞んでいく。

「オレを甘くみるからそうなる。なぜ、それが分からない? どうせ、見えるものしか見ない。そういう奴らばかりだ」

 淡々と話す狂の言葉を耳にしながら、勇輝ははあはあと息を切らす。傷口からは出血している。

 限界は来ているが、諦めようとしない勇輝はそっと様子をうかがい、機会チャンスを狙う。

「お前を後悔させてやる」

 狂は言葉を吐き捨て、勇輝に攻撃しようとする。勇輝は素早い反応でその場から離れようとした。

「どこへ行くんだ?」

 勇輝が振り向くと、背後には狂の姿があった。勇輝は笑みを口元に浮かべる。

「待ってた。早くかかってこいよ」

 挑発するように言葉を口にし、待たずともすぐに狂の攻撃が襲いかかるが、勇輝には攻撃が当たらない。咄嗟に躱していた。

 狂は顔をしかめ、勇輝を睨みつけた。

「あんたさ、笑美さんが、悲しむと思わないわけ? 今の状況、見たら泣くと、」

 勇輝は息を乱しながら言葉を発する。途中で狂に言葉を遮られ、攻撃に対処できずに当たってしまった。

「そんなことは分かってんだ! オレは何度も過去を変えた。笑美の過去も変えようとした。けどな、変わらなかった。変わらなかったんだ! 全部分かってんだ!」

 狂は怯んでいる勇輝を見下ろしながら、威圧するように言葉を吐き捨てた。

 気がつけば、狂の目から黒い光が宿っていた。勇輝の足をぎりぎりと踏みつける。

「これ以上、オレの過去に踏み入れるなら、命がないと思え」

 勇輝を蹴り飛ばし、すたすたとその場を去ろうとする。

「待て、まだお前を、」

 勇輝は去ろうとする狂の足にしがみついた。狂は足を止め、勇輝をぎろりと睨んだ。

次話更新は8月6日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。


あと数話の予定です。

完結までよろしくお願いしますm(._.)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ