襲撃①
*この小説はフィクションです。
狂が侵入して、一時間後。戦況が逼迫していた。その理由は狂の圧倒的な強さにあった。更に、阻止する者たちは不意打ちに遭ったのも理由の一つだ。
力弥の代わりに阻止する者たちを統率していた美鶴が倒れ、残された大人は司と癒維のみ。
癒維は医療専門。そうなれば、司しか残されていない。そんな状況の中で、狂と対抗していた。
そんな司も体力に限界が来ていた。
「なんだ、そんなものか。大したことねぇな」
余裕の表情で嘲笑している狂に対して、司はぜいぜい息を切らしている。
司の能力は姿を消すこと。言葉どおり、姿を消すことができるが、狂の前では太刀打ちできない。
狂も能力者。しかも敵の最高者。司は姿を消しても、狂には無意味。司が姿を消せようと、姿を消せていないようなものなのだ。
「俺には、守らなきゃいけないものがあるんだ。たとえ、限界が来ても俺は諦めない」
司が誰に言うともなく呟く。狂は歯牙にもかけない。
司は必死に戦い、狂の攻撃に耐えている。
「そういや、お前は天埜流ってやつと仲が良かったらしいな」
狂の言葉に司の表情が変わった。狂に鋭い視線が突き刺さる。よく見れば、司の目に青い光が宿っている。哀愁が漂う雰囲気に狂の口元が緩んだ。
「アイツはいなくなったんだ。この際、オレと組まないか?」
司の目に青い光が宿っていたが、赤色に変わった。司の反応に狂は分かりやすくて面白いやつだとぼそっと呟いた。
不意に司が狂に向かっていく。狂に攻撃を加える司だが、攻撃が当たらない。それでも、司は攻撃を繰り返す。
「何度、やっても同じだ。お前は攻撃を当てることができねぇ」
変わりない攻撃に狂は言葉を吐き捨てる。
どこかにちらっと視線を向ける司。その度に司の攻撃力が上がっていく。
違和感を覚えた狂は司の視線の先を見やる。何かに気づいた。
「そうか。仲間の力を借りなきゃ勝てないのか」
ぼそっと呟いた狂の発言に司の眉がぴくりと動いた。
「それなら、やることはひとつだ」
次の瞬間、狂は司の視線の先、隼人の方向に手のひらをかざす。何も起こっていないように見えるが、隼人がどさりと倒れてしまった。
「隼人!」
咄嗟に司は叫ぶ。隼人は返事をしない。司は狂をきっと睨みつけた。
「分かりやすい行動をしたお前のせいだ。次はアイツだ」
狂は得意げに言葉を発すると、今度は癒維の方向へと手のひらを向ける。
癒維は司が能力を発動した直後、倒れている美鶴のところへ行った。
美鶴にこれ以上傷を負わせまいと倒れている美鶴の様子を見たあと、申し訳ないと思いつつも、美鶴を引き摺るようにして少し運んだ。
治療をしたおかげでもあるが、美鶴の回復力は早かった。回復はしたものの、動けない状態の美鶴の傍らには癒維が付き添っていた。
「癒維さん、みっちゃん!」
二人の近くに勇輝がいた。勇輝は危機を感じ取り、二人を守るように阻止しようとする。
「勇輝!」
司が大声を出して呼ぶ。それでも、勇輝は避けない。また、仲間が倒れる。司は思わず目を伏せた。
「さすがだな、千堂勇輝」
その言葉が司の耳に届いた。はっとして我に返り、目を見開く。
勇輝は防御の態勢をとっているが、しっかり立っていた。
「勇輝、大丈夫か!」
「僕は大丈夫。それよりも司さん、危ない!」
勇輝の声に司は状況に気づいた。
狂の攻撃に反応し、攻撃をかわそうとする。一歩遅れ、攻撃が直撃してしまった。
「余所見なんざ、しちゃいけねぇよな?」
威圧的な態度と言葉に司は歯を食いしばる。思い切り当たってしまった。腹部を押さえている。
「やめて! 目的は僕でしょ! 僕を狙えばいいよ!」
勇輝の言葉に振り向きもしない狂は司を攻撃し続ける。ついには司は気を失ってしまった。
「司ちゃん!」
美鶴の声が響き渡る。起きない司に美鶴は悔しさが募った。それは、美鶴だけではない。癒維と勇輝も同じだった。
勝敗はおのずから明らかな状況のなか、狂は得意げに鼻で笑っている。
「馬鹿なやつらだ。仲間のために戦い、敗れていく。今も昔も変わっていないな」
嘲笑い、言葉を吐き捨てる狂を勇輝は鋭い眼光で見据えた。強烈な視線が刺さろうと狂には関係ない。取り乱すことなく、しれっとしている。
その間に勇輝の目の奥からある感情が湧き起こる。
「千堂勇輝、どうだ? オレと組まないか?」
狂が問いかけると、勇輝は姿を消した。狂の背後に回り、攻撃に移ろうとしている。
次の瞬間、勇輝は素早い動き《スピード》で狂に攻撃を繰り出した。
「それだ」
ぽつりと呟いた狂に勇輝が襲いかかった。
お互い素早い動きで攻撃と防御を繰り返し、激しい戦いが続いた。
「千堂力弥と変わらねぇな。もっと、力を込めてもいい。もっと本気で来いよ」
「うるせぇ」
狂の挑発に勇輝は言葉を吐いた。
次話更新は7月2日(木)の予定です。
*時間帯は未定です。




