襲撃②
*この小説はフィクションです。
狂に襲いかかった勇輝。渾身の力をこめて、狂に攻撃を加えたはずだった。狂は姿を消して勇輝の背後にぬっと姿を現す。
「もっと、力を出していいんだ。それじゃないと、やられるぞ」
狂は余裕を見せながら平然と話す。既に覚醒している勇輝だが、体力を使い果たしてしまうほど限界がきている。狂と比べれば、その差は一目瞭然。体格差もある。
それでも、勇輝は攻撃の手をゆるめない。攻撃を繰り返す。
「お前は、お前は、親父を」
「そうだ。オレが殺した」
勇輝の言葉に狂はとっさに答えた。勇輝の目に赤い光が宿っているが、さらに強く光を放った。
狂は笑っているが、様子を見ていた美鶴は勇輝を心配している。
勇輝は感情に流されやすい。そのため、力にもまれてしまう。勝つためにはそれは良いことかもしれない。
逆に体力を消耗しやすいということ。
「勇輝くん……」
ぽつりと呟いた美鶴は歯を食いしばって立ちあがろうとする。回復したとはいえ、体に力が入らないのか上手く立ち上がれない。悔しさをこらえる。
狂が勇輝に集中している間、美鶴に寄り添っていた癒維は司と隼人の元に駆け寄り、てきぱきと処置をしていた。
美鶴が止めようとしても癒維は従わなかった。危ない状況のなか、狂に隙を与えれば容赦なく襲いかかってくるかもしれない。
それでも、危険にさらされてまで助けたいという癒維の思いに美鶴は優先した。
だが、その考えが甘かった。狂は隙をついて、癒維の方向に視線を移す。
手をかざそうとしているのを美鶴は察した。
「癒維ちゃん!」
大きな声が響く。癒維がはっと気づいたとき、それは起こった。
狂が手をかざした瞬間、癒維たちの姿が消えたのだ。一瞬、何が起こったのか理解できなかった。
癒維の前に誰かが現れ、その場にいたはずの隼人と司を含めて姿を消してしまった。美鶴は呆気に取られ、何もない場所を見つめる。
狂は不快感をあらわにし、面倒になったと呟いた。勇輝は変わらず、攻撃を繰り返している。
何が起こったのか、気にしない様子だ。
「いいのか?」
狂に問いかけられても答えない。
「親父を殺したヤツを、許さない」
勇輝がぽつりと言葉を漏らすと、狂はにやりと品の悪い笑いを浮かべた。
一方、攻防を繰り返す二人を呆然と見守る美鶴。
先ほどまで癒維たちが消えた瞬間を見ていた。癒維たちが無事か、不安が募るばかり。
捜さなければならないと感じた美鶴は力が入らない体をゆっくり動かし、その場から移動しようとした。
その瞬間、違和感を覚える。気づいたら、知らない場所にいたのだ。
「美鶴さん、大丈夫ですか!」
大きな声に振り返る美鶴の元に癒維が駆けつけてきた。よく見ると、倒れている司と隼人がいる。
それにもう一人、変える者の彼女がいた。
美鶴は目を疑った。一度は阻止する者で預かっていたが、また変える側についたのだと思ったからだ。
彼女がいるということは何か裏がある。美鶴はそう思い、思わず眉を寄せる。
「また、会ったね。でも、安心してよ。今は味方だから。もし、信じられないならあいつらの命がないと思ったほうがいいよ」
挑発的な言葉に再び美鶴は眉をしかめた。
不意に変える者は美鶴から視線を逸らし、癒維の方向へと向き直る。
「空間に閉じ込めたとはいえ、僕たちの姿はバレてるから気をつけてよ。保って、十分くらいかな。その前に勇輝ってやつが負ければ長くは保たないけどね」
得意げに話すのは御角だ。
御角は千歳とともに待機していたが、異様な雰囲気に何かを察した。千歳を置いて、異様な雰囲気がする場所へと向かったのだ。
異様な雰囲気を辿ると、狂がいた。御角は見つからないように一定の距離を取りながら後を追った。そこで気づく。
彼女は一度、阻止する者と一緒にいた。当然、隠れ住処も知っている。
狂が向かった先はまさにその場所だったのだ。狂は躊躇うことなく、隠れ住処に入っていく。
入ることに迷った御角は屋外で様子を見つつ、待つことにした。少し経って、様子の異変に気づいた。隠れ住処は防音で作りが頑丈にできている。それでも、外からでも伝わってくる殺気立った雰囲気が御角の内心を乱す。
ふと、御角の苦手な美鶴の雰囲気を思い出してしまう。でも、それとは違う雰囲気を感じている。
それはまるで悪魔のように殺気立っていた。
「まさか、ね。僕に関係ないもん」
御角は他人事のように言葉にする。苦笑い浮かべながら、来た道を戻ろうとする。思い止まり、足が止まった。
「仕方ないか。これでお互い様だからね」
御角はぽそりと呟き、隠れ住処に入っていった。
次話更新は7月9日(木)の予定です。
*時間帯は未定です。




