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敵手-ライバル- ②

*この小説はフィクションです。

 二人が攻防を繰り返してから随分と時間が経とうとしていた。

 瞬がぜいぜいと息を切らし、立っているのもやっとの状態。一方、勇輝は平然と立っている。

「もう、やめよう。やめて、一緒に戻ろう。みんなが待ってる」

 勇輝の言葉に瞬はぎろりと睨む。勇輝が説得しても、今の瞬には届かないようだ。

 彼は過去に勇輝を嫉妬するほど羨ましく思っていたことがある。それは瞬にしか分からないこと。

 なにも知らない勇輝は言い聞かせるしかなかった。

「ねぇ、戦っても無意味だよ」

「は? それどういう意味? 俺に勝てるからってことだよね」

 火に油を注いでしまったかのように勇輝の言葉に瞬が苛立ちを募らせる。勇輝を睨みつけ、勇輝に向かっていった。

 瞬は蹴りを入れたり、拳を突き出したりしている。絶え間なく攻撃が続く。勇輝は難なく躱わしていく。

 苦しそうに息を切らしていた瞬の動きが少しずつ鈍くなっていた。それを勇輝は見逃さない。

 何か、瞬を止める方法がないか頭を巡らす。唯一の方法。ある言葉が浮かんだ。

「父さんは、」

 言葉を途切らせると、瞬をじっと見つめる。瞬は口にしてはいけない言葉を耳にしたかのように豹変した。勇輝に鋭い視線が突き刺さる。

 瞬の目に赤と黒が混ざった光が宿っている。

 その変化に勇輝は父親である力弥が関係しているのだと確信した。

「油断すんなよ」

 ふと、勇輝の真横に瞬が現れる。咄嗟に勇輝は防御したが、間に合わず攻撃を受けてしまった。

 体勢を立て直そうとしたが、間に合わない。咄嗟に防御態勢をとる。

 瞬は止まらず、続けて攻撃をする。

 勇輝は隙を見計らって、瞬の目を見つめた。

 赤黒い色の裏側。瞬は何を思っているのか。感じ取ろうとした。


 以前、勇輝は不思議な力に目覚めた。それは、父親の力弥から譲り受けたペンダントを手にした時に起きた。

 近くにいる者の感情が勇輝の頭の中に流れてきたのだ。勇輝は驚いたが、落ち着いた雰囲気で対応した。

 ペンダントは瞬に壊されてしまい、不思議な力を失ってしまったかと思っていた。

 美鶴が我を忘れていた時のことなど、勇輝は再び不思議な力を感じたのだ。そのこともあってか、勇輝は不思議な力を呼び戻せる可能性を信じて、瞬をまっすぐ見据えた。

 然し、不思議な力を呼び起こせず、瞬の攻撃をもろに受けてしまう。

 勇輝は諦めない。何度も何度も不思議な力を呼び出そうとした。

 瞬を見据えると、瞬の強烈な視線が刺さる。

 瞬は我を失う一歩手前までの狂気を宿していた。一方、勇輝は攻撃を躱し続けながら、瞬の目から視線を離さない。

「父さんは僕の親でもあり、瞬の師匠なんだよね?」

 放っている赤黒い光が強くなるのが勇輝は察知する。同時に瞬の攻撃力が上がっていく。

 僅かだが、勇輝の頬を掠めた。

「さっさとくたばれよ。今のお前は俺に敵わないんだから諦めろ」

 瞬が言葉を放つ。勇輝は言うことを聞かず、少しずつ瞬の動きに必死に食い下がる。

 二人は再び攻防を繰り返した。


 突然、瞬が限界に達したのだろう。まるで電池切れのように動きがぴたりと止まった。

 勇輝は瞬の目を捉える。次の瞬間、勇輝の頭に記憶が流れた。

 阻止する者(ブロッカー)の訓練場で戦っている姿。瞬は戦いに負けたのか、悔しそうな顔をしていた。

『勇輝に勝ちたい』という気持ちが流れてきた。

 勇輝は瞬の不安定な気持ちを察した。

「僕が父さんの子どもだから……。そうだよね、瞬」

 ふと、勇輝の口から漏れた言葉に瞬はぴくりと体を動かした。攻撃的な赤色が薄れていく。代わりに紫色が濃くなっていく。黒色は変わらず、放っている。

「だから、なんだって言うんだ。俺はお前が、」

「嫌いなのは分かってる。ずっと、僕に、嫉妬してた、それでも、」

 言葉を吐き捨てる瞬の言葉を遮り、勇輝はゆっくりと言葉を発する。徐々に苦渋に満ちた表情へと変わっていく。

「だったら、俺の行動が分かるでしょ。連れ戻したいとか勝手な行動するなら、放っておいてよ」

 瞬の口から吐き出されると、一気に空気が揺らいだ。勇輝はそれ以上何も言葉を発さない。否、話せないのだ。

 何かに耐えている。それを見ていた瞬は戦意を喪失した。

 戦うのを止め、その場を去ろうとした。


 その時だった。

「こんなの、僕じゃ、ない。違う。僕は僕だから。だから、」

 下を向いて突っ立ている勇輝が自分に言い聞かせるように呟いた。思わず、瞬は勇輝のほうを振り向く。

 突然、勇輝が顔をあげ、瞬に視線を向ける。瞬を鋭い眼光で見据えた。

 次の瞬間、ものすごい勢いで瞬に襲いかかろうとする。瞬はびくっと驚いた。

「戦いたくないんじゃ、」

 瞬の言葉を遮り、勇輝はものすごい速さで瞬に向かっていく。咄嗟に瞬は防御するが、勇輝はぴたりと止まった。瞬の腕を掴んだ。真剣な表情で瞬を見据える。

「僕と、帰ろう。それで、」

 勇輝が言葉を発した直後のことだった。瞬はばたりと倒れ込んだ。瞬の後ろには狂が不気味な笑みを浮かべながら立っていた。

「どうして……」

 勇輝がぼそっと呟いている間に狂の姿が消えてしまった。

次話更新は5月28日(木)の予定です。

*時間帯は未定です。


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