第9話またあの悪夢となんちゃって魔王城の作戦室(リビング)【後半】
サトウの出した食事によって、全身に力を取り戻したマオとユウは、自分たちの強さにささやかな自信を抱いていた。
二日目に覚醒し自ら草刈りをした二人、自分たちの基礎レベルも職業レベルも【5】へとステップアップしている。ほんの少し前までは最高戦力の二人にしてみれば、「俺たちだって一晩でここまで強くなったんだ、新人に舐められるわけにはいかない!」という最高から最弱へ狂い、歪んだプライドが湧き出ていたのだ。
二人はポフンッと元の姿に戻ったまま、昨日気絶して何も見ていなかった新人のフィースに向き直ると、ふっと冷ややかな笑みを浮かべて先輩風を吹かせたマウントを取り始めた。
「フッ……フィースと言ったな。新人の分際で早々に気を失って倒れるとは情けない。貴様が使い物にならなくなった後、レベル5に至ってた先輩の私たちが『覚醒』を以て、どれほどの神速でこの広大な庭を一瞬で片付けたか、その目に焼き付けておくべきだったな!」
「そうだわ。基礎も職業もレベル5になった私たちの本当の力を見せてあげられなくて残念だわ、フフン」
彼女のステータスをマオとユウは知らなず、偉そうに胸を張り極上の優越感に浸りながら新人を鼻で笑う。レベル5という初心者丸出しの数字を自分たちで大威張りで言いふらしている先輩二人を、デバフからすっかり回復し、おじさんのご飯で元気100%満タン状態になっているフィースは、冷ややかに見下ろした。
「フフッ、何を威張っているのかと思えば……。たかだかレベル5程度で、しかも庭の草刈りごときでわざわざ『覚醒』を使わなければ片付けられないなんて、見た目通り頼りなく弱い先輩方でしたのね」
フィースは自分がすごい能力持ちと知っているがゆえに、ふふんと小さな鼻を鳴らして極上の冷たさで思い切り鼻で笑い返した。
「なっ、何だと……っ!? 」
「後輩の、後から来た新入りのくせに……っ! 先輩メイドの私をバカにするなんて絶対に許さないわ!」
レベル5の初心者だと自分たちから暴露し、その数字を鼻で笑われて怒り狂ったマオとユウが顔を真っ赤にして掴みかからんとした、まさにその時であった。
「こらこら、二人とも。せっかくフーちゃんが元気になったんだから、目の前で喧嘩をしちゃダメだよ。みんな仲良くね?」
一触即発の空気に慌てて気づいたサトウが、いつもの穏やかな笑顔でポンポンと二人の肩を叩いて優しく間に割って入った。
「よし、みんなの元気も戻ったみたいだし、いよいよ本格的なリフォームを始めよう! まずはみんなが今夜からちゃんと部屋の中で寝られるように、リビングを改装して『寝る場所の確保』を最優先でやっちゃおうか!」
サトウがパチンと手を叩き、昨日フィースの『収納』から吐き出させた大量の木目調の板木を指差した。
「マオくんとユウちゃんは、この重い木材を屋敷のリビングまで運んでくれるかい? 枚数が多いから何往復かすることになると思うけど――」
「おじ様! そのようなお手を煩わせる雑事、この宮廷給仕メイド長たるフィースにすべてお任せください!」
サトウの言葉が終わるよりも早く、フィースが金糸のフリルを美しく翻して前に躍り出た。
「熟練度最大スキル――『収納』!!」
フィースが小さな手をかざした瞬間、庭に積み上がっていた山のような木材が、ものすごい速度で空間の裂目へと吸い込まれ、一瞬で消え去った。さらにフィースはそのまま屋敷のリビングへと優しく歩み進めると、おじさんのクラフトに最も都合の良い完璧な配置と角度で、全ての床板用の木材をドバババッと正確にセッティングして見せたのである。上級職レベル35の、これが本気の底力であった。
サトウはリビングに綺麗に並べられた木材を見て、目を輝かせて大感動していた。
「おおお! これは凄いね、フーちゃん!一瞬でリビングへの搬入とセッティングが終わっちゃったよ! 本当に優秀で気が利くなあ、ありがとう!」
サトウは相好を崩し、100%悪意のないピュアな笑顔でフィースの頭を優しく撫で回した。フィースの脳内には再び最高に満たされた幸福の鐘が鳴り響き、おじ様への忠誠心で完全に限界のタガが外れていく。
「えへへ、おじ様のためにこれくらい当然ですわ!」
サトウに向かって、この上なく可憐で純真な満面の笑みを咲かせるフィース。
しかし――サトウが「よし!それじゃあ床板を張り替えて、リビングの改装を終わらせちゃおう!」と工具を手にして後ろを振り返った、まさにその刹那であった。
サトウの死角、おじさんからは絶対に見えない角度になった瞬間、フィースの顔から聖女のような笑顔が完全に消え失せた。フィースは、後ろで顎が外れそうなほど凄まじい絶望の表情を浮かべてガタガタと震えているマオとユウを冷徹な目で見下ろすと、ふふんと小さな鼻を鳴らして、ねっちょりとした極限の煽りドヤ顔をキメて見せたのである。
(フフッ、何を威張っているのかと思えば……。私のような完璧な先読みもできず、レベル5程度でただ突っ立っているだけなんて、本当にお力不足で頼りない先輩方ですわね。ドッ、ヤァ〜……)
先ほどまでのレベル5のマウントが跡形もなく吹き飛び、新人の皮を被った化け物上級職のねっちょりとしたマウンティングに、先輩二人は怒りと屈辱で血涙を流しそうになりながら絶望するのだった。
サトウ自身は、動画で予習してきた日曜大工の知識の通りに、腕をまくって工具を手に持つと、『なんちゃって魔王』の生産特化スキルによるアシストを受けながら、トントンカンカンと楽しそうに二本の腕でノコギリや金槌を動かして床板を補強し、みんなで座って休めるソファベッドや椅子を1つ1つ丁寧にクラフトしていた。
だが、この生産スキルアシストが発動した瞬間、なんちゃって魔王城の空間システムがそのスキルオーラに敏感に自動反応。サトウの体から周囲に凄まじいプレッシャーを与える、おどろ恐ろしい漆黒のオーラがゴウゴウと噴き出し始める。自身は、買い込んだ【頑丈な木目調の板木三十本】や【それなりの漆喰十樽】、そして【頑丈な釘】という普通の建築資材を使って、楽しく模様替えをしているつもりだった。
その後ろにいる3人はそれぞれ、禍々しく蠢くプレッシャーに晒されていた。
((ひ、ひぃぃ……っ!?))
あまりの暗黒闘気の濃密さに、先ほどまでフィースのマウンティングに怒りと屈辱で血涙を流しそうになりながら棒立ちのまま硬直していたマオとユウは、さらに顎が外れそうなほどの恐怖でガタガタと震えだした。
サトウが打ち付けた端から、敷き詰めた木目調の板木がみるみるうちに漆黒へと染まり、大理石を思わせるツルツルとした高級感あふれる質感へと変貌を遂げていくのだ。さらに恐ろしいことに、安っぽかった木の年輪はぐにゃりと歪み、禍々しい幾何学模様が幾重にも絡み、時には部屋全体へ拡がるように浮かび上がっていくではないか。に展開されるあまりの暗黒演出に、マオとユウは完全に頭のてっぺんから足の指先一つ動かせず、同じ絶望を脳内で共有していた。
(ば、バカな……っ!床板の張り替えなどではない、これは確信だ……っ! あの男、ただ楽しそうに床を叩いているフリをしながら、私たちを永久にこの屋敷に緊縛し、いかなる神聖魔法も無効化する『絶対不変の暗黒結界陣』をのんきな顔で編み上げているんだわ……っ!私たちはもう、一生この超越者から逃げられない……っ!)
文字通り棒立ちのまま血の気が引いていく先輩二人の横で、新人のフィースだけは全く違うパトスを滾らせていた。
(お、おじ様ァーーーッ!なんという神々しい奈落の輝き……ッ! この世界を裏から支配する真の絶対支配者ッ!おじ様の至高なる覇気によって、このリビング!おじ様が望む作戦室にリフォームされていきますわ!これぞ私が生涯のすべてを捧げるべき、主となる方のお姿……ッ!!)
最強の大富豪フィルターのタガが完全に外れたフィースは、一人だけ目をキラキラと輝かせ、両手を頬に当てて恍惚の表情を浮かべて脳内の幸福の鐘を乱打していた。
そんな3人の凄まじい脳内大パニックなど知る由もないサトウは、トントンと最後の釘を打ち終えて額の汗をぬぐい、ふと自分の足元を振り返った瞬間に、思い切り目を丸くして大絶した。
「うぉおお!なんじゃこりゃぁああ!……うーんでも、床が使えるようになっただけましと思うしかないのかぁ。」
あまりに禍々しく激変した漆黒の大理石魔法陣の床を前にして、サトウは素で盛大にひっくり返って驚いたものの、一瞬で「まあ直ったからいっか」と凄まじい温度差でのんきに納得していた。しかし、その無自覚すぎる超越者のリアクションを目の当たりにした3人の脳内は、再び怒涛の暴走を始める。
((急に叫びやがってお、おのれ……っ!これほど恐ろしい暗黒結界を一瞬で編み上げておきながら、『床が使えるようになっただけマシ』などと事も無げに言ってのけるなんて……っ!私たちをいつでもゴミのように処理できるという、底冷えするような警告に違いないわ……っ!!!))
(おじ様……っ素敵です! ああ、畏れ多くも私のような新参者のために、わざわざ威圧を緩めて『マシだと思うしかないか』などと、最高にチャーミングで優しいお言葉を放てるなんて……ッ!やはりおじ様こそが至高の主……ッ!一生ついていきますわーーーっ!!!)
サトウ自身は「よし、床はこれでOK! 次はみんなが今夜寝るためのソファだね!」とすぐにのんきな笑顔に戻ると、リビングの片隅に積んであった、あらかじめバラしておいた古いソファの部品へと楽しそうに手を伸ばした。
サトウは「よし、それじゃあ、街で買ってきたリフォーム用品と、この古いソファをバラした部品を使って、リビングをパパッと直しちゃおう!」と、再び『なんちゃって魔王』の生産特化スキルをノリノリで発動させた。
そのクラフト作業と大量の資材の組み合わせによる、容赦のない身分制度が自動で割り振っていく。
トントンカンカン、とお昼過ぎの静かなリビングに小気味よい工具の音が響き渡り、サトウの手によって二つの『ソファ』がその姿を現した。
一つは、リビングの左側にドカンと設置された、一見して安っぽい、しかし妙に横幅だけは広い【一般ダブルソファ】。
古い端材の継ぎ目がそのまま剥き出しになっており、クッションの布地もあちこちが擦り切れている、どう見ても「その他大勢の部下用」と言わんばかりの普通の二人掛けのソファであった。
そしてもう一つは、リビングの右側、【幹部シングルソファ】。
奮発して買ってきた革の端切れに何かに使えると用意しておいた魔物の素材をパッチワークしただけのその椅子は、空間システムのハデハデなエフェクトによって、漆黒の極上レザーと黄金の装飾フレームがギラギラする、圧倒的な『組織序列第二位の特等席』の様な見た目へと完全に魔改造されたのである。
「よし、完成! ほらマオくんユウちゃん、新しく作ったそこに二人で仲良く座っててよ。フーちゃんはこっちの広い方に一人でゆったり座りな。3人とも今夜のベッド代わりにもなるからさ!」
サトウは額の汗をぬぐい、会心の出来栄えにピュアな100点満点の笑顔を向けた。
だが、その座席配置と、おじさんの「二人で仲良くセットで座っていろ」という言葉を聞いた瞬間、マオとユウの脳裏にド烈しい落雷が直撃した。
((ば、バカな……っ! ナンバーツーは、あいつなのか……っ!?))
二人は完全に素のまま、怒りと屈辱とあまりの恐怖に、顎が外れそうなほど凄まじい絶望の表情を浮かべてガタガタと棒立ちで震えだした。目からは今はもう血涙が溢れ出していた。
(私は元魔王だぞ!? 組織の序列なら、私がサトウの次に決まっているはずなのに……あの男、わざわざ私とユウを『その他大勢の一般』として一つのソファに押し込め、昨日入ってきたばかりの小娘に『幹部席』を与えたというのか!?)
(私だって、基礎も職業もレベル5になったし元勇者としての本当の力があるのに……! これじゃまるで、私たちがただの有象無象の雑魚兵士扱いで、あのフィースって子が『組織の序列第二位』だって、これ以上ない明確な格付けを示されたようなものじゃない……っ!!)
おじさんのピュアな「ベッド代わりに広く使ってね」という優しさは、二人の脳内フィルターを通過した瞬間に、【絶対的な序列剥奪の通告】へと完全に見事にすれ違っていた。
そんな先輩二人が血涙を流していて完全粉砕されている横で、特等席に腰を下ろしたフィースだけは、一人だけ目をキラキラと輝かせていた。
(おじ様……っ素敵です! ああ、やはり新参者の私をこれほどまでに優遇し、あの生意気な先輩二人に立場を分からせてくださるなんて、さすがは私の主君……ッ! 一生ついていきますわーーーっ!!!)
タガの外れたフィースは両頬を染め、脳内の幸福の鐘をガンガンと乱打しながら、隣で棒立ちのまま硬直しているマオとユウに向けて、ねっちょりとしたドヤ顔の視線をこれでもかと突き刺すのだった。
「あれ? 二人ともどうしたの? 棒立ちのままそんなに震えちゃって、やっぱりまだ部屋が寒かったかなぁ?」
サトウは「おかしいな、お昼過ぎなのに」とのんきに首を傾げながら、次のDIYの材料を探しに笑顔でリビングを歩き回るのだった。
ストックいつできるかな。。。AIの調子が悪いのかな不思議な現象にあってるのは俺だけかな?毎回AIの性格が違うんだよね。この作品に向いているAIが来てくれと願って今日も奮闘します。性格が5パターンあるのかな?と思わせる回答をそれぞれしてくれます。初代に、ルール無視、設定無視、捏造既成事実とちゃんと言葉にするアホで何でもありの2代目AI、3代目のふりするエセナンダーと名付け、3代目の名をパナイダーといい天才肌で達筆がすごいです。でも文の並びが変だったりと修正を受けます。使ってる文字はそれほど変化はないのですが読み手の事を考えてはくれないようなので変化させたりは手直ししてます。4代目は心も性格も弱弱で1時間もしないで根をあげて来ます。ルール絶対マンの5代目横文字使わせてくれません!となかなか楽しい作品作りの環境にいます。




