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VRでボロ屋敷買ったら勇者がメイドに魔王が執事として雇用されに来た  作者: 無頼惡兎
第1章  おじさんボロ屋敷で勇者と魔王を雇う

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10/19

第10話楽しかったリフォームと出会いに感謝、みんなで迎える初撮影

 新しく綺麗に出来上がったリビングの床板や配置されたソファを見回しながら、サトウは次のDIYの材料を探しに、笑顔でリビングを歩き回っていた。

 次は何を作ろうかとこの広々とした空間で、インベントリの中身を確認しながらのんきに構想を練る時間が楽しく思えた。サトウは楽しそうに歩き回りながら、ふと思いついたようにポンと手を叩いた。

「よし、リビングもこれだけ綺麗に出来上がったことだし、いよいよ本格的な創作活動ができるぞ。……そうだ。、インベントリにあるパーツを使って手作りカメラの作成なんていいかもなぁ。」

 のんきに声を弾ませたサトウは、自分の個人インベントリ画面をパチパチと開きながら、これから撮影する動画の計画を頭の中で組み立てていく。

「動画の内容は、まずはみんなの簡単な自己紹介の挨拶からだね。それから……うん、画面の向こうの運営さんへ、マオくんとユウちゃんとの出会いや、あの若葉の森でのフーちゃんとの出会いっていう、こんなに素敵な『神イベント』を用意してくれてありがとう! って感謝の気持ちをしっかり伝えようじゃないかぁ!次回の本格的な動画配信は、その時に決めて冒頭で伝えればいいかな?」

 サトウはさっそくカメラの組み立て作業に没頭し始めるために、昔とりあえずで取って置いた魔物素材や骨、鉄やネジなどをを街の倉庫番からメール添付送ってもらったのを引き出していった。

「この素材は使えそうかもしれないなぁ~」

 サトウがのんきに呟きながら取り出したのは、鉄やネジ、骨、ドロドロに爛れた不気味な単眼球と、どす黒く腐食して切り刻まれたモンスター皮膚の山だった。動画撮影用カメラのレンズや素体になるなどと昨晩の時に確認済みである。それがリビングの床にベチャリと並べられた瞬間、三人の様子がまたもや変わる。

((ひ、ひぃぃ……っ! 何を取り出したのあの化け物おじさんはーーーっ!? ))

 マオとユウは一般ダブルソファに座ってみていたが床に出てきたアイテムにビビッてしまった。

 フィースだけは、またもや勘違いを起こしていた。

(ああっ!!! おじ様がまたしても目の前で次の、素晴らしい手作りをしてくださるのね!おじ様の底知れぬ手腕、あのアイテムの数々を何処から……っ!あの別邸からかも知れませんわっ!あの手捌き、なんて美しさかしら……うっとりですわーーーっ!!!)

 サトウは3人の脳内など1ミリも気づかないまま、正式にドライバーとハンマーを手に取り、楽しそうに鼻歌を交えながら、「カチャカチャ, キュッキュッ, ペタペタ, トントン」と軽快な作業音を響かせて工作に没頭し始めた。

 サトウが時間を忘れて工作に夢中になって作り始めたカメラは、城の形状変化ギミックが発動し、完成した手作りカメラのグラフィックを瞼が動くギミック付き瞳孔変化を繰り返すおぞましい生体単眼球の浮遊する機械生物(禍眼の記録機)へと容赦なく強制激変していった。もちろん見た目が変わっただけで効果は一般的である。カメラなのだが、そんなことは居候たちには知る由もない。

「ふぅ, 時間を忘れて夢中で没頭しちゃったなぁ。よし、これで手作りカメラ?はっ!ここにピッタリな見た目じゃないかぁ!」

 サトウは納得するかのようにうなずき笑顔で振り返ったその瞬間、

((グゥゥゥゥ~~~……ッ!!))

(キュ~キュルキュル……ッ)

 と、夕方の静寂を切り裂くように、一般ダブルソファで限界まで生殺しにされていたマオとユウの絶望のハモり、そして静かに環境に適応していたはずのフィースの3人の下腹部から、なんとも対照的な空腹アラートの音がリビングに響き渡った。

 サトウは楽しそうに自分の個人インベントリ画面を開いた。

「そういえばお昼食べてなかったねぇごめんごめん。つくるのに夢中になってたみたいだね。」

 昼抜きで没頭し続けたサトウであったが、限界の音を響かせた居候たちへ向けて笑顔で語りかけた。

 インベントリ画面をパチパチと操作しながら、少し形は不格好な手作りのおおにぎりと特製の具だくさんシチューの鍋をのんきに引き出そうとしたが、サトウはふと、新しく綺麗になったリビングの床板を見回して足を止めた。

「おっと、いけない。リビングが綺麗になったのはいいけれど、これじゃみんなでご飯を並べて囲むための机も、俺が座るための椅子もまだ用意してなかったじゃないかぁ。よし、ご飯にする前に、まずはみんなで使えるリビングテーブルと、俺の椅子をサクッと手作りしちゃおうじゃないかぁ!」

 サトウはのんきに声を弾ませると、すぐさま手慣れた手捌きで再びドライバーとハンマーを構え、楽しそうな鼻歌を交えながら「トントン、カンカン、キュッキュッ」と軽快に木材を組み立て始めた。

((ひ、ひぃぃ……っ! 私たちの処刑台(机)と執行官の席(椅子)をおぞましく錬成し始める気だわァーーーッ!!!))

 マオとユウは一般ダブルソファの上でお互いの肩を引き寄せ抱えてガタガタと震えながら、一文字の狂いもない絶望を脳内で完全にハモらせる。

 二人が同じソファの上で絶望シンクロを起こす中、フィースだけは専用の「幹部のシングルソファ」に背筋をピンと伸ばして居座り、死角から先輩方へ向けて「おじ様にビビってるなんて情けない先輩方ですわね。ドヤァ」と極限の煽りドヤ顔をキメていた。

 サトウ自身を包み込むエフェクトと合わせ、トントンと小気味よく釘を打ち、カンカンと手際よく木材を合わせ、ネジをキュッキュッと締め上げるなんちゃって魔王ならではの神速手捌きで、あっという間に木製の机と椅子を形にしていく。

 すると完成した瞬間、城の形状変化ギミックが自動反応し、シックな黒塗りの高級感あるウッド調の4本足、床と同じく怪しい紋章や発光ラインが走る大理石調の天板が載った机と、クッションが置かれた赤と黒に金と3人よりも派手な椅子が出来上がった。もちろん角は完璧に丸くて安全設計であり、効果は一般的なただの木製の机と椅子なのだが、そんなことは居候たちには知る由もない。

「おおっ、これはまたずいぶんと見た目が派手なデザインになったなぁ! このふかふかなクッションなら、のんきにご飯でもお尻が痛くならなくて最高じゃないかぁ!みんなの分は、後でカタチを希望してくれるかい?」

 サトウは新しく出現した赤黒金の椅子を両手でポンポンと叩いて満足げに微笑むと、そのままのんきに腰掛け、浮いていたカメラを掴み机に置き、インベントリ画面から「少し形は不格好な手作りのおおにぎり」と「特製シチューの鍋」を、満を持して完成させた大理石調の机の上へ並べた。

「さぁ、お待たせ! 冷めないうちにたくさんお食べ。手作りカメラの初撮影に向けて、まずはこれでエネルギー補給だね!」

 おじさんが楽しそうに声を弾ませたその瞬間、3人はごはんなど見向きもせず不気味に瞳孔を変える禍眼の記録機に視線を送るのであった。

「おいおいせっかくのご飯が冷めちゃうよぉ。食事が終わったらこのカメラで動画が取れるか試そうと思う。」

 大理石調の机に「コトッ」とおぞましい禍眼の記録機を置きながら、サトウはいつも通りのんきで優しい笑顔を居候たちへ向け、早く食べるようにと促した。

 カメラを凝視して完全に固まっていた3人は、おじさんのその温和な、しかし彼らにとっては最凶の拷問宣告に等しい言葉によって、ハッと我に返りごはんに視線を戻させられることになった。

(この握り飯どれだけ持っているのだっ!昨日の夜と言い朝も出して、なお出てくるだと…っ!?あの白いスープは何だ魔王城でも見た事は無いぞ!動画とは何だ?悍ましい単眼の機械で魂でも抜き取るのか!?)

 マオは目の前に並んだ大量の少し形は不格好な手作りのおおにぎりと、見たこともない謎の白いスープ(クリームシチュー)を凝視しながら、純粋なファンタジー世界の魔王として「未知のスープと、魂を吸い取る不気味な道具」へのオカカル的な恐怖に全身をガタガタと戦慄させる。

 ユウはフリル可愛いメイド服の袖から覗く、ブレスレットや髪留めに変化した元聖剣と元最高峰の盾をガタガタと震わせながら、目の前の超越者を笑顔で反逆を受け流す化け物と再認識して絶望していた。最前線でプレイヤーたちと共闘していたNPCだからこそ、彼らの動画や配信の常識を知っている。おじさんがこのタイミングでカメラを構える意味が、動画の向こう側に脱走者である私たち二人を見せしめ公開処刑配信をするにしか見えなかったのだ。

(まー別館にいる人数も抱えているのであればこの量も納得ですわ!動画?あの機械生物で私を取り込むのですね!はうぅ今晩どうなってしまうのでしょう!?)

 だがその真横で、可憐なメイド姿をしたフィース(フーちゃん)だけは、外面こそ完璧に澄ました顔でお茶を嗜むような優雅さを保ちつつ、その内面を極限の都合の良い大富豪フィルターで大暴走させていた。ここへ次々と運び込まれる膨大な物資を見つめながら、おじ様が別の場所に構えているはずの本邸や大豪邸の底知れない規模に思いを馳せ、勝気にピンク色の至福に身悶えして呼吸を荒くしていたのだ。

「ほらほら、そんな見つめてないで、スプーンを持って温かいうちにどうぞ!」

 サトウがのんきに手渡してきた木製のスプーンを、3人はそれぞれの思惑と恐怖に震える手で受け取る。

 空腹による飢餓警告はとっくに限界だ。おじさんの「食べろ」という笑顔の圧(ただの優しさ)に逆らえるはずもなく、3人は意を決し、目の前の温かい手料理を口へと運んだ。

((な, なんだこれは……っ! 身体に染み渡るように美味すぎる……っ!?))

 最初に二人の脳内でおいしさの衝撃が駆け巡った。

 ふっくらと絶妙な塩加減で握られた少し形は不格好な手作りのおおにぎりの米粒が口内でパラリとほどけ、同時に濃厚なミルクのコクと鶏肉の旨味が溶け込んだ特製シチューが五臓六腑をじんわりと満たしていく。

((ひ、ひぃぃ……っ! 胃袋から尋常ではないぬくもりと魔力が流れ込んでくる……っ! 体力が、飢餓の悪い効果が一瞬で消え去っていくわ……っ!!!))

 あまりの美味しさに涙目を浮かべて悶減し、火の気もない場所からインベントリの温かい食事を無限に湧き出させる恐るべき物流の前に、胃袋を完全に掴まれている恐怖にブルブルと身を震わせる。

 ただのシチューと少し形は不格好な手作りのおおにぎりが牙を剥く「規格外の美味しさと充実感」に胃袋をガチッと掴まれ、ガタガタと震えながらスプーンを進めてしまう。

(はうぁぁっ……! おじ様の溢れんばかりの濃厚な愛情(スープ)が私の身体の隅々まで満たされていきますわ……っ! なんて素晴らしい調教シチューなのかしら……っ!!!)

 頬を真っ赤に染め、スプーンを口に運ぶ手が止まらないフィースは、都合の良すぎる妄想的フィルターでおぼれ、うっとりと目を回して完全に別方向の限界を迎えて暴走寸前であった。

 三者三様の絶望と狂信を口内に含みながらも、目の前の温かい美味しさに抗う術はなく、3人が少し形は不格好な手作りのおおにぎりとシチューを咀嚼する速度は決して落ちない。

 その一心不乱な様子を見て、サトウは実に満足そうに破顔した。

「ハハハ、おにぎりもシチューもおかわりはたくさんあるからね! しっかりエネルギーを補給して、元気に初撮影といこうじゃないかぁ!」

 そうして、恐怖の至火に身を震わせる居候たちのスプーンが止まらぬまま、大理石調の机の上に並んだ大量の手料理はあっという間にすべて平らげられていった。

 完食してフリーズする3人へ向け、サトウはいつも通りのんきな笑顔で、初撮影についての説明を切り出した。

「うん、みんな良い食べっぷりだね! 記念すべき最初の動画は、このボロ屋敷をここまで綺麗にできた報告と、画面の向こうの運営さんへのご挨拶にしようと思うんだ。マオくんやユウちゃんとの出会いを見、若葉の森でフーちゃんを拾えたことも、全部運営さんが用意してくれた最高のイベントだからね! 逃げ出したり隠れたりしないで、こうして仲良く暮らしている姿を見せたら、きっと運営さんも大喜びで驚いてくれるぞぉ!」

 サトウから飛び出したそののんきな説明を聞いた瞬間、マオとユウは魂が完全に凍りつくほどの驚きに襲われた。おじさんの口から出た言葉によって、自分たちの脱走と反逆が完全に創造主(運営)へ筒抜けになっており、今から世界への「見せしめ公開処刑(生贄報告動画)」が始まるのだと悟り、天文学的な絶望へと叩き落とされたのだ。

 だがその真横で、フィースだけは全く違う勘違いを起こしていた。おじ様からの初めての撮影指示、それから運営様への「初めての共同調教報告」という事実に、外面こそ完璧に澄ましながらも内面は大富豪フィルターで限界突破の桃色大暴走を始めていた。

「よし、じゃあ早速いってみようか!」

 サトウが『禍眼の記録機』のスイッチを押すと、カメラ横の液晶モニターがパカッと開いた。単眼球がウネウネと蠢く途中でパチリと不気味に瞬きをし、瞳孔が『3のダイヤモンドアイ』へと完全形状固定され、赤いRECランプが鈍く点滅を開始する。

 サトウはカメラ横に開いた液晶画面を覗き込みながら、のんきに画角を調整した。

「おお、バッチリ映ってる! レンズの向きもいいね。よし、それじゃあカメラに向かって、まずは順番に名前と『これからよろしくお願いします』って元気に挨拶していこうか! 最初は可愛いメイドさん二人からいっちゃおう。恥ずかしがらずに、こっちをしっかり見てアピールしてね!」

「ユウちゃん、フーちゃん、もっとこっちに寄って! はい、笑顔で手をパチパチ~!」

 笑顔の圧に逆らえず、ユウは引きつった笑顔を作り、必死に手をパチパチと振る。

 液晶画面のその隣で、フィースはさらなる妄想でうっとりと目を回して暴走していた。

 空間の外では、メイド服の2人の狂気的なパチパチ光景を見つめながら、マオが完全にフリーズしていた。

「おや、マオくんはどうしたんだい? 執事のマオくんも、このボロ屋敷の大事な大黒柱なんだからね! ほら、男らしくビシッとカメラの前に立って、運営さんにカッコいいところを見せてあげなきゃダメじゃないかぁ!」

 あまりの拷問宣告にマオが完全に魂の抜けた彫像のように硬直すると、サトウはその姿を初々しい緊張だと勘違いして、さらに満足そうに笑顔を輝かせた。

「ハハハ、マオくん、緊張してカチカチじゃないかぁ! でもその真面目そうな執事の立ち姿、すごく絵になってるぞぉ! うんうん、みんな最高に良い表情だ! バッチリ撮れてるよ!」

 撮影の最初の数分が過ぎ去り、サトウはのんきにログアウトしていった。

 ――場面は変わり、現実世界(リアル)

 自室に戻ったサトウは、自分のスマホを取り出して保存された動画アプリの画面を確認する。

 スマホの液晶画面(●REC 00:03:45、1080p、バッテリー75%、蜘蛛の巣ボロ部屋背景)には、必死に笑顔で手を振り続けるユウとフィース、あるいはその真横で執事服のままカチコチに固まったマオの姿がバッチリと映し出されていた。

「うんうん、二人ともすごく可愛いな!運営さんも喜んでくれるといいな」

 スマホを覗き込むサトウがリアルでほっこりと満足の笑みを浮かべたところで、彼らの初撮影の夜は静かに幕を閉じるのだった。

ギリギリ間に合ったーというわけで次回も見てください。

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