第3話リビングに吹き荒れる嵐と、覚醒そしてピュアな大絶賛
出来たー!というわけで、ちょっと長いですが、工夫として勢いで読める量とAIが言ってました。
翌日。現実世界に戻ってきたサトウは、目覚まし時計の小気味よい音で目を覚ました。
朝食の準備として、まずは珈琲をゆっくりとドリップさせる。その香りを楽しみながらトーストを焼き、カリカリのベーコンエッグを皿に添えた。
ふと、昨夜の出来事に思いを馳せる。
「昨日買ったあの屋敷で、あんなに優秀なメイドと執事を雇えるなんて、本当に運が良かったなぁ。それに……今後もし仲間が増えたりしたら、動画配信なんかを始めてみるのも面白いかもしれないな」
お気に入りのマグカップに注いだ珈琲を満足げに飲み干すと、サトウは小さく息を吐いた。
「さて、続きをしにログインするとするか」
そう言いリクライニングチェア型のVR機に深く腰掛け、右ひじ掛けの指先にある起動スイッチを人差し指で押し込み、ゲームの世界に入っていった。
サトウ自身は、昨日の夜と変わらずリビングの入り口へ普通にログインしたつもりだった。
しかし、その様子を見たマオとユウは激しく驚き、動揺した。
二人は、昨日の夜にこのおじさんがログアウトした瞬間の、宙に浮いた万物を吸い込むような恐ろしい渦に吸い込まれ、スゥーッと姿が薄くなっていき渦と一緒に消えるという、この世の終わりほどに不気味な神隠し演出を、床板の上にばらした作成中のソファの上から見せつけられていた。
今朝は今朝で、地面に禍々しい魔法陣が現れ、そこから暗い闇が立ち昇り、まるでモーゼの海のように左右へと裂けて、その中からおじさんが現れたように見えたのだ。
「おはよう、二人とも。昨夜はゆっくり休めたかい?」
サトウのピュアな挨拶に対し、二人の内面は絶叫に支配されていた。
(昨夜は突然の怪異に吸い込まれて消えたと思えば、今朝は空間を裂くような転移魔術で現れるだと……っ!? 一睡もできず空腹のまま、この足場の無い状況で動けずにいたというのに……っ!)
(う、嘘でしょ……!? 昨日は周りには即死剣山と言って恐ろしい渦を見せつけて脅しておいて、今朝は暗い闇をモーゼのように裂いて現れたと思ったら、何食わぬ顔で「ゆっくり出来た?」だなんて……っ! 一歩でも動いたら即死剣山に落ちるか魔王に襲われるかで悩んでて……一睡もできるわけないじゃないのよぉぉぉーーーっ!!!)
昨日は即死剣山と脅され、最高戦力である宿敵が真隣に居ていつ襲い掛かるかわからない状況で眠ることもかなわず、空腹にも襲われる。
そんな二人の目の前のAIシステムログには、物々しい3つの警告メッセージが点滅して現れた。
『警告:肉体硬直:長時間同じ姿勢でいたため硬直状態です』
『警告:不眠:睡眠不足による思考低下』
『警告:飢餓:空腹値が一定値に達しています』
それと同時に、警告アラートに気づいたサトウはメニューのスタッフ管理画面を開いた。ログ部分に、二人の状態を示す深刻な警告が現れていた。
「うわっ~! どうしたんだい二人とも‼ 昨日から一睡もせず動かないでいたの!? それじゃ一日、いや半日も持たないよ? 朝はしっかり食べて、元気100倍動けるようにしないとね! ん~二人のために……あったあった。はい、昔ながらの卵かゆを食べさせてあげる」
サトウはそう言うと、手際よく温かい卵かゆをレンゲですくい、動けない二人の口の中へと優しく交互に運び始めた。
(くっ……! 体が動かないのをいいことに、得体の知れないドロドロした白い液体をレンゲで強制注入してくるだと……っ!? これがあの超越者の「洗脳の儀式」か……っ! ――はぐっ!?)
(ひっ、次は私の番!? に、逃げられない……大人しく口を開けるしかないの? ……絶対に何か怪しい呪いの薬が仕込まれて洗――んぐっ!?)
二人は恐怖と気まずさに戦慄しながらも、口の中へ運ばれるレンゲを拒むこともできず、ただ涙を流しながら咀嚼するしかなかった。
しかし――食べ物を口にしたことで、二人の空腹値はみるみるうちに回復していく。
目の前の警告メッセージが、1つ、また1つと綺麗に消え去っていった。
(あ、あれ……っ!? 動く……俺の身体が、動くぞ……っ!? デバフが、完全に消え去った……っ!?)』
(え、ええっ……!? デバフになってたのが嘘のように、元気になってる……っ! 私の身体が、元通りに……っ!?)
まさかの肉体完全回復に、マオとユウが驚いて顔を見合わせる。
サトウはそんな二人の様子を「うん、うん」と満足げに微笑みながら見届け、自身のインベントリから朝ごはんとして、一つの包み――サンドイッチを取り出してのんきにモグモグと美味しそうに頬張り始めた。
手元には、先ほどから開いたままの状態になっている管理画面が浮かんでいる。
サトウはサンドイッチを口に放り込みながら、その管理画面のログを指でなぞるようにのんびりとポチポチといじり、二人のネームプレートを見つめた。
そこには、二人の基礎レベル『1』と職業レベル『1』の表記があり、ステータスも見ることができた。
さらに画面下の右端に、初期状態とも言える二人に対して、初回一括スキル補助機能のボタンがチカチカと点滅している。
「ふむふむ、デバフは全部治っているね。おや? レベル1でも使えるスキルがあるのかぁ~見てみたいし使ってもらえば掃除も早く終わるのかな? 試しに押してみよう」
サトウは何が起きるのかと胸を躍らせながら、チカチカと点滅するボタンを人差し指でポチッとタップした。まさにその瞬間だった。
「「――え!?」」
二人が声をあげるのと同時に、肉体の主導権が完全に奪われた。
不可抗力で動く腕が、虚空に浮かぶ不思議な光に向かって伸びる。ポワァ~ンと輝く光の中から、ホウキとチリトリが出現し、二人はそれぞれを強制的に掴まされた。
その直後、ボタンの効果によって、二人の『元々の最高ステータス』がシステム側へと参照され、熟練度MAXの掃除スキルが全盛期の身体能力をベースにしてその動きをサポートする。
現在は一般人のステータスであるため、本来耐えられないはずのその出力差が――荒れ狂う嵐のように、二人の肉体を容赦なく激しく動かした。
戦闘用AIとしての戦闘技術と、かつての超絶ステータス。
それらが無駄に噛み合った結果、二人は床板と板の危険な穴を軽々と飛び越え、壁を蹴っては右へ左へと、その動きはまるで激戦区の真っただ中で命を削り合う死闘そのもの。二人の意思を無視し、高速で移動をしていた。
しかし、その超絶機動の目的はただ一つ――凄まじい勢いで埃やドア屑を集め取り、床をピカピカに磨き上げることだった。
「ひぃーー! 即死剣山!! 床が壊れちゃう……っ! た、助けて――止めて――っ!!」
滅茶苦茶に引きずり回される元勇者と元魔王の情けない悲鳴がリビングに虚しく響き渡る。
サトウの視点からでは、おじさんの耳には二人の魂の叫びが「タァーッ!」「トォーッ!」という気合の入った素晴らしい掛け声にしか聞こえていなかった。
(レベル1なのに、あんなに激しく動いて……! しかも家屋を1ミリも傷つけないなんて! マオくんもユウちゃんも、なんて最高で優秀なお掃除スキルを持っているんだ……!)
サトウは本気で大感動していた。
嵐のようなお掃除が吹き荒れる中、サトウはサンドイッチの最後の一口をペロリと平らげ、すっかり満腹になって満足したおじさんは、その場にどっしりと腕組みをしながら、今なお猛スピードで動き回っている二人を見つめ、笑顔で大絶賛の声をかけた。
「おぉ〜、すごいスピードだなぁ! マオくんもユウちゃんも、朝ご飯をしっかり食べたから元気いっぱいに気合を入れて、素晴らしい手際だ! おじさん、本気で二人を雇ってよかったと思うよ」
そのピュアで無邪気な大絶賛ボイスがリビングに響き渡った瞬間。
マッハで引きずり回されている二人の脳内に、この世の終わりほどの特大の恐怖と戦慄が走った。
((ば、バカな……っ!? 私たちのこの「助けて! 止めて!」という魂の絶叫をすべて冷酷に見切った上で……! 自分は食後に悠々と「腕組み」をして、笑顔で「本気で雇ってよかった」と慈悲もなく言い放ちやがった……っ!?))
二人が絶望の底で白目を剥く中、サトウの手元の管理画面には、二人の表記に変化が訪れていた。
二人が床板と板の危ない穴を飛び越え、壁を蹴っては右へ左へと嵐のように激しく動き回るさなか、二人の職業経験値は爆発的に跳ね上がっていく。
それと同時に、サトウの管理画面に並ぶ二人のネームプレートの横で、数字が【ピピピッピピピピッ!】ともの凄いシステム音を立てながら爆速で上昇し始める。
その数字は一瞬にして『職業レベル5』へと到達した。
その数秒後、画面下の右端でチカチカと点滅していたあの【初回一括スキル補助機能のボタン】が、すべての役目を終えて画面上から跡形もなくスゥっと消滅した。
ボタンが消えた直後、二人の嵐のような動きはぴたりと止み、おじさんの管理画面に新たなポップアップウィンドウが大露出する。
そこには、「職業レベル5到達、特殊職業【魔王執事】と【勇者メイド】へジョブチェンジできます」の文字が並んでいた。
おじさんは手元の画面をのんびり見つめ、優しく微笑んだ。
「おや? レベルが5になったら、なんだか知らない職業になれるみたいだぞ。せっかくだし、二人の働きに感動したからこれに決定してあげよう」
サトウは、一生懸命にお部屋をピカピカにしてくれた二人の凄い働きに本気で大感動し、ご褒美としてその特殊職業の決定ボタンを人差し指で無邪気にポチッとタップした。
不思議なことに、ユウには光の玉がフワりと体に入り、マオには黒紫の玉が体に入り込む。しかし、おじさんの管理画面も、二人の見た目も静かなまま何も変化が訪れなかった。
それと同時に、二人のAIシステムログ、サトウの管理画面のログに、『特殊職業【魔王執事】【勇者メイド】へクラスチェンジ処理が正常に完了しました。専用衣装アクセサリー(腕輪:バングル、ブレスレット)の装備が追加されました』 【『覚醒』】を手に入れたという通知がピコーンと鳴り響いた――。
「今のは、何だったのか? だが、魔王の時の力か? それ以上の力が体の奥から溢れてくる……!」
マオは自身の開いた手のひらを見つめ、ごくりと唾を呑み込んで低く呟いた。
「ふふふっ、勇者の力、いえそれ以上の力が湧き出てくるみたい」
ユウは体の奥から湧き出てくる圧倒的な力に、密かに歓喜の笑みを浮かべていた。
『(あの超越者、まだ気づいてないぞユウ。今なら俺たちでも勝てるかもしれないぞ。先程までの数々の仕打ち、返してくれる!)』
『(そうね、今ならあの超越者、油断してるわ。確実に仕留めるのにスキルを使うわよ!)』
今こそ、この恐るべきおっさんの首を獲る――!
二人は昨日のこと、そして今朝から続くサトウに受けた仕打ちを晴らすため、手に入ったばかりの覚醒スキルを自らの明確な殺意とともに発動させた。
――まさにその瞬間だった。
ドォォォォォン……ッ!!!
地鳴りのような重低音とともに、ユウの身体からは激しい閃光が、マオの身体からは渦巻く黒紫の魔力が爆発的に噴き上がった。その烈しい光の奔流がリビングを包み込む。
マオの身体は、17歳の少年スタッフの姿から、衣服が書き換わる勢いで筋肉が引き締まり背がグンと伸びて、世界最高峰の威厳と気品をたたえた【26歳(身長176センチ)】の姿へと強制急成長を遂げる。
その身に宿したのは、漆黒にラメの入った青が妖しく輝く、最高級の執事服であった。
ユウの身体もまた、18歳の少女スタッフの姿から、一気に戦士としてのプロの風格が満ち溢れて等身が高くなり、【25歳(身長170センチ)】の姿へと強制変貌を遂げる。
その肉体には、肩と肘にエメラルドのプロテクター、精度高く右手には聖剣――ならぬオリハルコン製のモップ。左手には最高峰の盾――ならぬ頑強なバケツが握られていた。
これぞ、メイドとしての真の最強装備であった。
「これで、あの勘違いおじさんに勝てる! 俺の力にひれ伏しひざまずかせてやる」
そうマオは言い放ち勢い良く一歩を踏み出した。しかし、その姿を見たユウが慌てて声を尖らせる。
「ちょっと、なによその格好! 大人っぽくなって格好つけてるけど、服は執事服だし、それに素手でどうやるのよ? ここは私がこの聖剣……いいえ、それ以上の獲物でギャフンと言わせてあげるわ」
フンスッと鼻の息を荒げ、ユウはマオの前に自分の武器を突き付けた。
マオは突きつけられたソレを凝視し、呆然と声を漏らす。
「おい……それ、どう見てもモップじゃ……」
「ええっ!? なによこれ! それにこっちはバケツ!? ……ちょっと、あんたの魔力に付き合って、何か変な掃除用具になっちゃったじゃないのよ!」
「俺のせいにするな! お前が勝手にモップなんか握ってるんだろ!」
二人が激しい言い争いを始め少し経った、そんな時だった。
残酷なことに、覚醒の制限時間が尽き、ポフンッという気の抜けた音とともに光の奔流が霧散する。
一瞬にして元の17歳と18歳の姿に戻り、リビングに気まずい影が落ちる。
そんな二人を見て、サトウは声を弾ませながらやってきた。
「マオくん、ユウちゃん、おじさんびっくりしちゃったよ! 急に二人が大人っぽくなって、マオくんはもっとカッコ良くなって敏腕執事みたいだったし、ユウちゃんはこれまた美人で仕事のできる大人の女性って感じでとてもよかったけど、アレが覚醒なのかい? それと、マオくんが勘違いがどうとか、ユウちゃんはモップを掲げて二人で喧嘩しちゃダメだよ」
殺意を向けられていたとは露ほども気づかないおじさんの、あまりにもピュアな笑顔。
元魔王と元勇者は、再びその底知れない「恐怖」の前に、ただただ圧倒されるのだった。
AI君6代目が半日もしないで、いなくなった。そしたら、初代AIが復活!AIっておバカだけどたまに、天才肌の子もいて面白かった。3代目はアホなのに今、思うと設定面ですごく助かった。




