66.予定確認
長期休暇まで、あと一週間ほど。
次の講義へ向かっていたエレナは、ふと思い出した。
「……そういえば、結局誰が来るんだろ」
長期休暇に入れば、エレナはそのままノワール領へ戻る。シャルロットたち三人も一度それぞれの領地へ帰ったあと、順次ノワール領へ来る予定になっていた。
問題は、以前ロイドから誘われていたアレクシスたちの方だ。
カイが即答で行くと決めたところまでは覚えている。だが、アレクシスたちは予定を確認してから返事をすることになっていたはずだ。
このまま帰ってから父や兄たちに説明するより、先に手紙を出しておいた方がいい。
(……聞いとこ)
そう決めたところで、ちょうど向かい側から見慣れた長身が歩いてくるのが見えた。
「カイカイ」
呼ばれたカイが足を止める。
「何だ」
「今日、講義終わったら殿下たちみんないつもの部屋にいる?」
「いると思うが」
「みんなに聞きたいことあるからもしものために、部屋にいてって言っといて」
「分かった」
伝言を頼むと講義室へ向かった。
その日の最後の講義が終わり、荷物をまとめていると、隣にいたリリアナが尋ねてくる。
「エレナ、このあとどうするの?」
「殿下たちの部屋に行ってくる」
「何しに?」
「辺境に誰が来るのか聞きに行く。父上とか兄上たちに先に手紙出しときたいし」
「じゃあ私も行く!暇だから!」
「私たちも行っていい?どうせ私たちも関係ある話でしょう?」
少し離れたところで聞いていたシャルロットとイザベラも加わる。
「じゃぁ、終わったらそのまま帰ろう」
一人で聞きに行くつもりだったが、いつものメンバーになったので、わいわいとたわいもない話をしながらアレクシス達のいる部屋に向かう。
扉をノックすると中から返事があったので入室すると、カイはきちんと伝えてくれていたのか全員揃っていた。
「全員いた」
「いるように言っただろ」
カイが当然のように返す。
「それはそうだけど」
エレナたち四人揃って控室へ来ること自体は、もう珍しくもない。ただ、少し前までとは違うことが一つだけある。
彼らは、それぞれ自分の思いを知っている。表に出すことはないためエレナたちに気づかれることはないが、四人揃って来るとは思っていなかった分、内心では少しだけ動揺していた。
「それで、何の用だ?」
アレクシスに聞かれ、エレナは空いている椅子へ腰を下ろした。
「長期休暇の話。もう一週間くらいしかないじゃん」
「ああ」
「私、帰る前にお父様と兄上たちに手紙出しときたいんだけど、結局誰がノワール領に来るの?」
話しの内容にアレクシスが頷いたので、エレナはまずカイを見た。
「カイカイは来るんだよね」
「ああ。俺は先に行く」
「それは知ってる。ロイド兄と手合わせしたいんでしょ」
「できるならな」
「やっぱりそこなんだ!カイカイ前からずっと楽しみにしてましたもんね!」
「まあな。あの人と手合わせできる機会なんて滅多にない」
返事に迷いが一切ないことに、リリアナが笑う。
エレナは他の三人にも視線を向ける。
「みんなは?」
「私も行くことになった。ただし、少し遅れる」
「許可下りたんだ」
「ああ。視察も兼ねてノワール領へ行くことになった」
「視察?」
アレクシスの返事にシャルロットが少し意外そうに聞き返す。
「王都から離れる以上、私的な訪問だけでは通しづらいからな。辺境の防衛状況や領地の様子を見るという名目も兼ねている」
「なるほどね〜。じゃあ殿下も来る、と。ルーは?」
「俺も殿下と一緒に行く」
「あ、やっぱりそうなったんだ。じゃあルーも後からね!セドリック様は?」
「私はカイと一緒に行くことになりました」
「セドリック様も先に?」
意外な返事にイザベラが不思議そうな顔をする。
「ええ。殿下たちが来る前の先行視察も兼ねています。現地の様子を確認して、一度王都へ連絡を入れる予定です」
「その連絡が届いてから、殿下たちが出発するってこと?」
「そういうことです」
エレナは指を折りながら整理する。
「じゃあ、先にカイカイとセドリック様が来て、そのあと殿下とルーが出発する感じか」
「結構時間空きそうね」
「王都からノワール領までは数日かかりますから。私たちが到着してから連絡を送り、それが王都へ届いてから殿下たちが出発することになります」
シャルロットの言葉にセドリックが頷いた。
シャルロットたち三人も、それぞれ一度領地へ戻り、家族に顔を見せてから向かう予定だ。
「じゃあ、殿下とルーが来る頃には私たちもみんな揃ってそう!」
「そうね。エレナ、また出発する時に手紙を出すわ」
リリアナの言葉にイザベラが続けた。エレナは一通り聞き終えると、満足そうに頷く。
「よし。じゃあ父上には、最初にカイカイとセドリック様が来て、あとから殿下とルーも来るって書いとく」
「ロイド殿には、手合わせの件も書いておいてくれ」
すかさずカイが付け加える。
「そこまで書くの?」
「頼む」
「自分で手紙出したら?」
「お前の兄だろ」
「だからって私経由にする必要ないじゃん」
言い返すエレナの横で、リリアナが楽しそうに笑う。
「書いてあげたらいいじゃん。『カイカイが手合わせしたくて仕方ないみたい』って」
「それはやめろ」
「じゃあ『毎日楽しみにしています』?」
「言ってない」
「似たようなもんでしょ」
「違う」
二人のやり取りを聞きながら、シャルロットが呆れたように口を挟む。
「余計なことを書いて、到着した瞬間にロイド様に連れて行かれても知りませんよ?」
「それはそれでいい」
「いいんだ……」
イザベラから漏れた呟きに、セドリックが小さく笑った。
それぞれが少しずつノワール領へ集まってくる。
エレナは久しぶりに帰る故郷が今年は随分と賑やかになることに胸を躍らせるのだった。
*長期休暇編突入です
長期休暇編はちょっと長めです




