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16. 今日はみんなの態度が怪しい

ーー翌日の放課後


講義を終えた私は、いつものメンバーであるシャルロット、リリアナ、イザベラと裏庭に来ていた。


三人が話しをしている横で、私は昨日のルシアン様のことを思い返し無意識に言葉をこぼしていた。


「……思ってたよりいい人だった」

「……誰が?」


隣からシャルロットの声がして、ハッと我に返る。見れば、三人が一斉に私を見ていた。


「えっ、あ……別に?」


口を滑らせたことに焦って誤魔化そうとしたが、時すでに遅し。シャルロットは呆れたように眉をひそめ、リリアナに至ってはニヤニヤと楽しそうにこちらを伺っている。絶対に何か思っている顔だ。


「エレナ、最近ルシアン様とよく話してるよね」

「そう?…まぁ、最初はもっと冷たい人かと思ってたんだけど案外ちゃんとしてる人なんだなっていうか……」

「本人の前で言わない方がいいわよ」

「言わないよ。睨まれそうだし」


私がそう答えると、リリアナがさらに笑みを深めた。


「なるほどねぇ」

「……リリ、余計なことを言うのはやめなさい」


すかさずシャルロットから制止が入る。調子に乗っては怒られるリリアナの姿は通常運転である。


自分でも忘れかけていたような雑談をちゃんと覚えていてくれたルシアン様。

案外、義理堅い人なのかもしれない——そんなことを考えながら賑やかなやり取りを眺めているうちに、その日の雑談は終わりを迎えた。


◇ ◇ ◇


裏庭から校舎へ戻る途中、廊下の向こうから見覚えのある四人組が歩いてきた。


以前なら「城壁」としか思わなかった集団。けれど今日は——なぜか真っ先に、ルシアン様が目に入った。

向こうもこちらに気づき、一瞬視線が交差する。


「エレナ」

「ルシアン様。……昨日の資料、面白かったです」

「そうか」


言葉を交わしたのはほんの数秒。私たちはそのまま何事もなくすれ違った。


いつもの光景。別に何も変わっていない。

はずなのにーー数歩進んだところで、私は自分でも理由の分からない衝動に駆られ、ふと後ろを振り返っていた。


すると、少し離れた場所でルシアン様も同じようにこちらを振り返っていた。

目が合った事に驚き、私は慌てて反射的に前を向く。


「エレナ」


隣を歩くシャルロットが、少しおかしそうに微笑んでいる。


「……なに」

「別に?」


私のごまかしをそのまま返すような言葉に、思わず怪訝な顔を向けてしまう。けれど、シャルロットとリリアナは隠す気もなくニヤニヤとしており、控えめなイザベラまで口元を引き締めつつ目が笑っていた。今日はみんな揃って思わせぶりな態度ばかりで、どうにも落ち着かない。


納得いかない思いで歩き続けながらも、さっき目が合った瞬間が、妙に頭から離れなかった。


◇ ◇ ◇


一方、その少し後ろーー


振り返っていたルシアンの横で、三人が示し合わせたように口を噤んでいた。

セドリックは面白そうに口元をゆるめ、カイは意味ありげに眉をひそめている。そしてアレクシスに至っては、一見すると普段通りだが妙に生温かい視線だけをじっと注いできていた。


誰も何も言わない。だが、あからさまに無言のからかいを含んだ空気が全身に突き刺さる。

ルシアンは三人の顔を順番に見回すと、心底うっとうしそうに吐き捨てた。


「……顔がうるさい」


言いたいことを一切口に出さず、ただ態度だけで冷やかしてくる三人に眉をひそめ、ルシアンは不機嫌そうに前を見据えた。


なぜ振り返ってしまったのか。本人にも、よく分かっていなかった。

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