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第80話 ドラマ『はむぶ』の撮影現場

 九月上旬。


 新潟中央女子学園・はむぶ部室。


「そういえば、今度のドラマの撮影現場、見学できるんだよね?」


 みなみがスマートフォンを見ながら言った。


「越後放送開局75周年記念特別ドラマ『はむぶ』ですね」


 真宵が答える。


「そうそう!」


 みなみが嬉しそうに頷く。


 以前、越後放送のスタッフが取材に訪れた企画が、正式にドラマ化されるものだ。


「せっかくだから、みんなで見に行きましょう」


 澄香も賛成する。


「私たちを題材にした作品ですもの。どのようになっているのか興味がありますわ」


「私も見たいです!」


 華が手を挙げる。


 数日後。


 越後放送のドラマ撮影現場。


「うわ……」


 華が目を丸くした。


 そこには、新潟中央女子学園の部室を思わせるセットが組まれていた。


 机。


 椅子。


 無線機…交信証。


 壁に貼られた部活動の予定表。


「本物の部室みたい!」


 みなみも驚く。


「本物より片付いてますけどね」


 真宵が苦笑した。


「それは言わない約束」


 彩鼓が笑う。


 やがて、出演者の紹介が始まった。


「部長役は、大山みさきさんです」


「よろしくお願いします」


 登場したのは、ドッペル坂16の大山みさき。


 普段は落ち着いた、お姉さんらしい雰囲気のメンバーだ。


「大山さんが部長役なんだ」


 みなみが嬉しそうに言う。


「ただし、今回の役は普段の大山さんとはかなり違います」


 スタッフが説明する。


「少しブッ飛んだ感じの部長です」


「えっ?」


 華が驚く。


 大山は穏やかに笑っている。


「本当にこの人が?」


「本当にこの人が、です」


 真宵が頷く。


 続いて。


「副部長役は、松崎レナさん」


 ドッペル坂16のセンター。


 普段のステージでは元気いっぱいの彼女だが。


「副部長は、かなり落ち着いた理屈っぽいキャラクターです」


「なるほど」


 真宵が興味深そうに見る。


 そして撮影が始まる。


「部長、その判断は感情的すぎます。もう少し合理的に考えてください」


 松崎レナが淡々と台詞を言う。


「……」


 みなみが目を丸くする。


「レナちゃんが、こんな喋り方してる……」


「アイドルの時とは全然違いますね」


 桜も感心する。


 さらに。


「庶務役は、山の下めぐさん」


 新潟市出身で、かつては天才子役といわれた女優だ。


 上品な制服姿でセットに入り、優雅に微笑む。


「まあ、新しいお茶を持ってきましたわ」


「……」


 澄香がじっと見ている。


「どうしました?」


 桜が尋ねる。


「とても上手なお嬢様ですわね」


「澄香先輩もそういうキャラクターですけど」


「ええ」


 澄香は微笑んだ。


「だからこそ、興味深いのです」


 そして。


「新入部員役は、中条みなみさん」


 みなみが手を挙げる。


「はい!」


 ドラマでは、みなみが演じる新入部員が主人公。


 アマチュア無線をほとんど知らない少女が、ひょんなことから無線部に入部する。


 個性的な部長。


 理屈っぽい副部長。


 お嬢様タイプの庶務。


 そんな先輩たちに囲まれながら、無線の世界を知っていく物語だ。


「主人公なんだよね」


 華が言う。


「そう!」


 みなみは笑った。


「私、主人公なんです」


「現実でもアイドルで、ドラマでも主人公かぁ」


 真宵が感心する。


「なんか変な感じ」


 みなみは照れ笑いした。


 その時。


「本番、いきます!」


 スタッフの声が響いた。


 大山みさきが部長役として部室セットの中央に立つ。


 さっきまでの落ち着いた雰囲気が一変する。


「新入部員だとぉーっ!?」


「ええっ!?」


 華が思わず声を上げた。


 ものすごい勢いだった。


「……すごい」


 桜が呟く。


「普段の大山さんと全然違いますね」


 みなみもモニターを見つめる。


 続いて、松崎レナ演じる副部長が冷静に言う。


「部長。まず本人の意思を確認してください。勢いだけで判断するのは適切ではありません」


「お前は冷静すぎる!」


 部長が叫ぶ。


 その掛け合いに、見学していたはむぶの面々から笑いが起こった。


「面白い!」


 華が笑う。


「私たちの部活とはかなり違いますけど」


 真宵も笑った。


「これはこれで面白いですね」


 澄香も頷く。


「ドラマとして楽しめそうですわ」


 桜はモニターを見ながら言った。


「みなみさん、主人公として頑張ってください」


「任せて!」


 みなみが胸を張る。


 その後も撮影は続いた。


 現実の「はむぶ」とは違うキャラクター。


 現実にはない出来事。


 そして、ドラマならではの展開。


 それでも。


 アマチュア無線を題材にした作品ということで、はむぶの部員たちは興味深そうに撮影を見守っていた。


「完成したら絶対見たいですね」


 華が言う。


「うん!」


 みなみも頷いた。


「私も完成版を見るの楽しみ」


 こうして。


 新潟中央女子学園はむぶのメンバーによる、ドラマ撮影現場の見学は終了した。


 現実の「はむぶ」と。


 ドラマの『はむぶ』。


 同じ名前を持つ二つの「はむぶ」だが、ドラマはドラマとして独立した一つの作品。


 部員たちは、純粋に一視聴者として完成を楽しみにしながら、撮影現場を後にした。

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