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第79話 それぞれの8月31日

 8月31日。


 夏休み最後の日。


 それぞれが、違う場所で最後の一日を過ごしていた。


---


 午前10時。


 寺尾華の部屋。


「……終わらない」


 机の上には夏休みの宿題が山積みになっていた。


 数学。


 英語。


 国語。


 理科。


 社会。


「あと1日あるから大丈夫!」


 華は自分に言い聞かせる。


 しかし。


 壁には大きなカレンダー。


 今日は。


 8月31日。


「……今日じゃん」


 ようやく現実に気付いた。


「なんで遊びすぎたんだろう……」


 木崎湖。


 夏祭り。


 プール。


 映画。


 友達との買い物。


「全部楽しかったから!」


 現実逃避だった。


---


 午前11時。


 新潟市南区。


 白根電波工房。


「真宵ちゃーん!」


 二階から彩鼓が顔を出す。


「ちょっと来てー!」


「今忙しいです!」


 真宵は店頭で無線機を並べながら答える。


「お願い!」


「嫌です」


「即答!」


 彩鼓が大げさに驚く。


「今日でバイト最終日なんだから!」


「だからこそ仕事を片付けたいんです」


 真宵は伝票を整理する。


 夏休みの間続けてきたアルバイトも今日で終わり。


「じゃあ、この新製品のカタログを……」


「自分で並べてください」


「えー」


「彩鼓先輩」


 真宵が振り向く。


「店員は私一人じゃありません」


「はい……」


 彩鼓はしょんぼりしながらカタログを持って歩いていった。


 その姿を見て。


 店長である彩鼓の父は笑う。


「真宵ちゃんがいてくれて助かったよ」


「こちらこそ勉強になりました」


「また来年も頼むね」


「予定が合えば」


 真宵は笑顔で答えた。


---


 午後1時。


 月潟本邸。


 広い庭園を望むテラス。


 澄香は優雅にアイスティーを飲んでいた。


 風が木々を揺らす。


 テーブルには焼き菓子。


 本は海外文学。


「……平和ですわ」


 夏休み最後の日。


 予定は何も入れていない。


 鳥のさえずりを聞きながらページをめくる。


 それだけで十分だった。


---


 午後1時30分。


「緊張します……」


 桜は受付前で深呼吸していた。


 今日は原付免許の試験日。


「高校生(いま)のうちに取っておきたいですから」


 必要書類を確認する。


 筆記用具。


 受験票。


 身分証明書。


「よし」


 静かに試験室へ向かって歩き出した。


---


 午後2時。


 。


「ありがとうございましたー!」


 ステージから手を振る。


 ドッペル坂16のライブイベント。


 夏休み最後ということもあり、多くのファンが集まっていた。


 みなみも笑顔で踊り切る。


「お疲れさま!」


 メンバーが声を掛ける。


「ありがとう!」


 汗を拭きながら笑う。


「明日から学校だね」


「うん」


 みなみは頷いた。


「アイドルも、高校生活も、どっちも頑張らなきゃ」


---


 そして。


 明日、9月1日。


 新潟中央女子学園では新学期が始まる。


 木崎湖での夏合宿。


 越後放送75周年ドラマ。


 そして、それぞれの夏休み。


 思い出を胸に。


 はむぶの新しい学期が始まろうとしていた。

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