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第78話 コンテストのあとのお約束

 8月2日。 午後三時。

 フィールドデーコンテストが終了した。

「終わったぁー!」

 華が大きく伸びをする。

「二十四時間……いや、正確には十八時間でしたけど、長かったです」

 「でも楽しかったですね」

 桜がログを保存しながら微笑む。

「7MHzも21MHzもよく開けていました」

「145MHzも思ったよりたくさん交信できました!」

 華も満足そうだ。

「木崎湖という立地も良かったのでしょうね」

 澄香が頷く。

「皆さん、お疲れさまでした」

 アンテナをそのままにして。

 一行は夕方までのんびり過ごす。

 そして。

 午後五時。

 炭に火が入り始めた。

「今年も恒例!」

 華がトングを掲げる。

「バーベキュー大会です!」

「肉ー!」

 みなみも両手を挙げる。

 テーブルには。

 信州産の野菜。

 ソーセージ。

 牛肉。

 豚肉。

 焼きおにぎり。

 澄香が縁川商店で買ってきた食材がずらりと並ぶ。

「いただきます!」

 全員の声が重なる。

 炭火の上で肉が焼ける音。

 香ばしい香りが湖畔に広がる。

「これ、おいしい!」

 華が目を輝かせる。

「信州の野菜って甘いですね」

 桜も感心する。

「採れたてですもの」

 澄香が微笑んだ。

 しばらく食事を楽しんだあと。

 杏果が缶のノンアルコール飲料を置いて口を開いた。

「そういえば」

「何ですか?」

 真宵が聞く。

「私、このあと長野へ戻る予定だったんだけど」

「はい」

「予定を変えた」

 彩鼓が首を傾げる。

「どうして?」

「三日から五日まで夏休みを取ってるの」

「へぇ」

「だから急いで帰る必要がなくなった」

 杏果は笑った。

「せっかくだから、新潟まで一緒に帰るよ」

「お姉ちゃん、本当?」

 桜が嬉しそうな表情になる。

「うん」

 杏果は頷いた。

「ただし」

 その視線が彩鼓へ向く。

「白根さん」

「はい」

「帰りは私が助手席に乗る」

「え?」

「新潟まで運転の練習をしましょう」

 彩鼓は目を丸くした。

「運転の練習?」

「そう」

 杏果は穏やかに言う。

「この前も話したけど、運転は経験も大切だから」

「確かに……」

「助手席で気付いたことは全部伝える」

 真宵が思わず笑う。

「出張教習ですね」

「まあ、そんなところかな」

 杏果も笑った。

「もちろん危ないことをさせるつもりはないよ」

「安全第一です」

 澄香も頷く。

「その方が安心できますわ」

 華はほっと胸をなで下ろした。

「それなら帰りも安心ですね」

「うん」

 桜も大きく頷く。

「お姉ちゃんが助手席なら心強いです」

 彩鼓は少し照れくさそうに笑った。

「じゃあ、ちゃんと教わります」

「その意気」

 杏果が微笑む。

「運転は慣れだけじゃなく、自分の癖を知ることも大事だからね」

「はい!」

 その返事は、いつになく素直だった。

 真宵は焼きおにぎりをひっくり返しながら小さくつぶやく。

「これで帰りは少し安心かな」

「少し?」

 みなみが笑う。

「まだ"少し"なんですね」

「相手は彩鼓先輩だから」

 真宵が苦笑すると、一同も思わず笑い出した。

 木崎湖の夕暮れ。

 コンテストを終えた達成感と、美味しい食事。

 そして帰路へ向けた新しい約束。

 はむぶの夏合宿は、穏やかな笑い声に包まれながら夜を迎えていくのだった。

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