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第77話 真夏の18時間

 午後八時三十分。

 月潟リゾート木崎湖キャンプ場。

 夕暮れも終わり、湖畔には静かな夜が訪れていた。

 テントの横にはアンテナが立ち並ぶ。

 7MHz用ワイヤーアンテナ。

 21MHz用の3エレメント八木アンテナ。

 そして華が担当する145MHz帯用のモービルホイップ。

「みんな、準備はいい?」

 真宵が確認する。

「7MHz、準備完了」

 彩鼓が答える。

「21MHzも大丈夫ですわ」

 澄香がログソフトを起動する。

「145MHz、受信良好です!」

 華が元気よく返事をする。

 桜はコンテスト規約を再確認していた。

「開始まで、あと五分です」

 時計の針が午後九時を指す。

「始まりました!」

 華が声を上げる。

 今年のフィールドデーコンテストが始まった。

 最初は7MHz。

 彩鼓がマイクを握る。

「CQフィールドデーコンテスト、CQフィールドデーコンテスト――」

 数秒後。

 すぐに応答が返ってくる。

「来ました!」

 桜がログを入力する。

「北海道です」

「次!」

 さらに東北。

 関東。

 東海。

 立て続けに交信が続く。

「さすが7MHz」

 真宵が頷く。

「よく飛ぶね」

 一方。

 澄香は21MHzを担当する。

「こちらも開けてきましたわ」

 コンディションが上がり始める。

 西日本。

 九州。

 沖縄。

 昼間とは違う伝搬状況を楽しみながら交信を重ねていく。

 そして。

 華は145MHz。

「CQ、CQ、こちらは……」

 V・UHF帯らしく。

 交信相手は近県が中心だった。

「長野市、入りました!」

「松本市!」

「上田市!」

 木崎湖という立地もあり、県内各地の局と次々につながっていく。

「華、順調だね」

 杏果が言う。

「はい!」

 華は笑顔だった。

「去年よりたくさん聞こえます!」

 夜が更けても。

 運用は続く。

 担当を交代しながら。

 休憩を取りながら。

 眠気と戦いながら。

 交信局数を積み重ねていく。

 やがて。

 東の空が白み始めた。

「朝ですね」

 桜がコーヒーを片手に空を見上げる。

「夜通し運用したんだ……」

 華は少し眠そうだったが。

 無線機の前へ座ると、すぐに表情が引き締まる。

 朝になると。

 21MHzのコンディションが一気に変化した。

「開けました!」

 澄香が声を上げる。

「すごい勢いですわ」

 コールが途切れない。

 彩鼓も笑顔になる。

「楽しい!」

 真宵はログを見ながら言った。

「去年よりペースがいいかも」

 昼前。

 木崎湖では湖水浴を楽しむ家族連れが増え始めていた。

 そんな賑わいの横で。

 はむぶは黙々とマイクを握り続ける。

 午後三時。

「終了!」

 真宵が時計を見て宣言する。

 一斉にマイクを置く部員たち。

「終わったぁ!」

 華は椅子にもたれかかった。

「疲れました!」

「でも楽しかったですね」

 桜も笑顔だった。

 彩鼓はログを見つめる。

「去年より交信できたかな」

「集計してみましょう」

 澄香がパソコンを開く。

 夏の木崎湖。

 湖畔に吹く風は心地よかった。

 徹夜の疲れはあった。

 それでも。

 全員の顔には達成感が浮かんでいた。

 今年のフィールドデーコンテストも。

 はむぶにとって忘れられない夏の一ページとなった。

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