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第67話 一人ずつ聞かせてください

 「皆さんの日常は、よく分かりました」

 吉田がメモ帳を閉じた。

「ありがとうございます」

「いえ」

 真宵が答える。

 すると。

「今度は、一人ずつお話を伺ってもいいですか?」

 巻が尋ねた。

「ドラマを作る以上、それぞれの人柄も知りたいんです」

「なるほど」

 真宵が頷く。

「誰からにします?」

「部長さんからお願いします」

 豊栄が言った。

「はい!」

 華が元気よく返事をした。

 桜は少し安心した。

 筋肉痛もすっかり治り、いつもの華に戻っている。

「部長になったきっかけを教えてください」

 吉田が尋ねる。

 華は少し考えた。

「気が付いたら部長でした」

 沈黙。

「え?」

 豊栄が聞き返す。

「いつの間にか」

 華は本気だった。

「部室に来たら部長になってました」

「そういうものなんですか?」

 巻が真宵を見る。

「いいえ」

 真宵は首を振った。

「彩鼓先輩が『華なら来年も部長を続けられるから』と言い出しまして」

「それだけ?」

「それだけです」

「本人の意思は?」

「聞いてません」

「聞かれてません」

 華も頷いた。

 吉田のペンが止まらない。

「脚本みたいですね」

「実話です」

 真宵が即答した。

 巻が笑う。

「部長になって困ったことはありますか?」

「いっぱいあります!」

 華は元気よく答えた。

「でも」

「でも?」

「みんな助けてくれるから大丈夫です!」

 真宵と澄香が顔を見合わせる。

「まあ」

「間違ってはいませんわね」

 次に吉田は真宵へ向き直った。

「副部長として苦労はありますか?」

「毎日です」

 即答だった。

 部室に笑いが起こる。

「部長が天然で」

 華が首をかしげる。

「相談役は思い付きで動いて」

 彩鼓が笑う。

「庶務はお菓子を配って」

「必要なことですわ」

 澄香は真顔だった。

「その三人をまとめるのが私です」

「ご苦労さまです」

 巻が思わず頭を下げた。

 桜も小さく頷いた。

 それには全面的に同意だった。

 その様子を見ながら。

 吉田は静かに呟く。

「なるほど……」

「何か分かりましたか?」

 桜が聞く。

「皆さん、役割が自然にできているんですね」

「役割?」

「はい」

 吉田は部員を見渡した。

「誰かが目立つんじゃなくて、それぞれが違う役目を持っている」

「意識したことはありませんけど」

 真宵が言う。

「それが自然なんでしょうね」

 巻も頷いた。

 ドラマの参考にするつもりだった。

 しかし。

 いつの間にか。

 取材班自身が、はむぶという部活の雰囲気に引き込まれ始めていた。

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