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第68話 取材終了

 時計の針は17時を回っていた。


「長時間ありがとうございました」


 巻が頭を下げる。


「こちらこそ」


 真宵たちも一礼する。


 部室には取材中に書かれたメモやスケッチが並んでいた。


 栃尾は最後に部室を見回す。


「この部室の雰囲気、いいですね」


「ありがとうございます」


 華が嬉しそうに答えた。


「飾り過ぎていない感じが、すごく自然です」


「普段どおりですから」


 真宵が笑う。


 吉田は分厚くなったメモ帳を閉じた。


「今日は本当に参考になりました」


「お役に立てましたか?」


 桜が尋ねる。


「十分すぎるくらいに」


 吉田は頷いた。


「無線のことだけじゃなくて、皆さんのやり取りや空気感も知ることができました」


 巻も続ける。


「最初はアマチュア無線という題材に興味があったんですが」


 少し間を置いて笑った。


「今日一日で、『この部活だから面白い』ということがよく分かりました」


「ありがとうございます」


 澄香が静かに頭を下げる。


 豊栄はホワイトボードを見る。


 まだ『今日の予定』が残っていた。


 一 交信練習


 二 アンテナの点検


 三 おやつ


 思わず笑みがこぼれる。


「これもそのまま使いたくなりますね」


「脚本担当じゃないのにですか?」


 真宵が聞く。


「つい」


 豊栄は苦笑した。


「部活動らしくて印象に残りました」


 華は嬉しそうだった。


「おやつは大事です!」


「そこは変えませんね」


 桜が小さく笑う。


 荷物をまとめ終えた巻が改めて部員たちに向き直る。


「ドラマが完成したら、ぜひ皆さんにも見ていただきたいと思っています」


「楽しみにしています」


 みなみが答えた。


「出演するのは私ですけど」


「現場ではよろしくお願いします」


 巻が微笑む。


「こちらこそお願いします」


 みなみも笑顔で返した。


 取材班は部室を後にする。


「失礼しました」


「ありがとうございました!」


 ドアが閉まり、廊下を歩く足音が遠ざかっていく。


 部室に静けさが戻った。


「終わったね」


 真宵が椅子に腰掛ける。


「終わりましたね」


 桜もほっとした表情を見せた。


「ちゃんと取材になってたのかな」


 華が首を傾げる。


「なってたと思うよ」


 みなみが笑う。


「みんな、普段どおりだったし」


「それが一番参考になったみたいですわね」


 澄香が紅茶を口に運ぶ。


 彩鼓も珍しく真面目な表情だった。


「ドラマになると、どんな部活になるんだろうね」


「さあ」


 真宵は肩をすくめる。


「少なくとも、私たちそのままではないでしょう」


「そうですよね」


 桜も頷く。


 ドラマはドラマ。


 現実は現実だ。


 それでも。


 自分たちの日常が、誰かの物語を作るきっかけになった。


 それは少しだけ、不思議で嬉しい出来事だった。


 こうして、越後放送の取材は無事に終了した。


 部室には、いつもの穏やかな放課後が戻ってきたのだった。

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