第62話 「勝ったけれど、終わりじゃない」
西海岸公園。
第五FOX発見後。
参加者たちはスタート地点近くへ戻ってきていた。
海風が吹く。
松林が揺れる。
「疲れたぁぁぁ……」
寺尾華がベンチへ倒れ込んだ。
「華ちゃん、最後の方はARDFより体力勝負だったよね」
真宵が言う。
「だって広いんだもん!」
その横では、各チームのチェックカードの確認が行われていた。
「FOX1」
「あり」
「FOX2」
「あり」
「FOX3」
「あり」
「FOX4」
「あり」
「FOX5」
「あり」
確認役の男性が頷く。
「両チーム、全FOX発見」
拍手が起きた。
「おおー!」
華が喜ぶ。
「じゃあ引き分け?」
「違う」
彩鼓が言った。
「ARDFは時間勝負」
「え?」
結果表が渡される。
真宵が覗き込む。
「うわ」
「どうだった?」
桜が聞く。
「結構差が付いてる」
結果。
新潟中央女子学園はむぶ
全FOX発見
江南実業高校無線部ARDF班
全FOX発見
発見数は同じ。
だが。
所要時間で、はむぶが上回っていた。
「勝った……?」
桜が呟く。
「勝ったね」
彩鼓が笑う。
「おおおお!」
華が飛び上がった。
「優勝!?」
「参加二チームだけだけどね」
「優勝!」
「話聞いて」
その頃。
江南実業高校ARDF班では。
「負けたぁ……」
「悔しい……」
「第五FOXで時間取られたなぁ」
そんな声が聞こえていた。
亀田紗友里は腕を組んでいた。
「うむ」
「うむじゃないですよ」
部員の一人が言う。
「亀田さんが勝手に対抗戦にしたんでしょう」
「結果オーライよ!」
「負けてます」
「細かいことはいいの!」
全然良くなかった。
そんな中。
一人の女子生徒がこちらへ歩いてきた。
江南実業高校のジャージ。
ショートカット。
一年生らしい顔立ち。
桜の前で立ち止まる。
「えっと」
桜が首を傾げる。
「私」
女子生徒は頭を下げた。
「中野山ハル」
「江南実業高校一年」
「島見さんですよね」
「あ、はい」
少しだけ緊張した空気。
真宵が様子を見守る。
華はお菓子を食べている。
澄香は紅茶を注いでいる。
いつも通りだった。
ハルは小さく笑った。
「今回は完敗だったわ」
桜が慌てる。
「いや、そんな」
「ううん」
ハルは首を振った。
「第五FOXの判断」
「すごかった」
桜は少し照れた。
「ありがとうございます」
「でも」
ハルの目が少しだけ真剣になる。
「次は私達が勝つ」
その言葉に。
桜も自然と笑った。
「はい」
「負けません」
一瞬。
ハルも笑う。
「言うじゃない」
そして。
くるりと振り返る。
「じゃあまた」
「また会おう」
そう言って。
江南実業高校ARDF班の仲間たちの元へ戻っていった。
その後ろ姿を見ながら。
桜は思う。
昨日までは。
「島見杏果の妹」として見られるのが嫌だった。
でも今日は違う。
中野山ハルは。
自分自身を見ていた。
島見杏果の妹ではなく。
島見桜として。
「ライバルができたね」
彩鼓が隣で言った。
「ライバル……ですかね」
「そういうものは」
彩鼓が海を見る。
「気付いたらできてるんだよ」
潮風が吹く。
遠くで。
「彩鼓ぉぉぉぉ!!」
亀田紗友里が叫んでいた。
「次は負けないわよぉぉぉ!!」
「私は出るって言ってない」
即答だった。
笑い声が広がる。
こうして。
はむぶ初のARDF対抗戦は幕を閉じた。




