第61話 「第五FOXはどこだ?」
西海岸公園。
赤松林の中。
残るFOXは一つ。
第五FOXのみ。
『――ピー……』
受信機から信号が聞こえる。
だが。
「分からん」
白根彩鼓が言った。
「彩鼓先輩が?」
桜が驚く。
「分からんものは分からん」
真宵も地図を見ていた。
「強くなったと思ったら弱くなる」
「松林や砂の盛り上がっている所の反射かな」
「海もあるしね」
受信機の音だけでは判断が難しい。
実際。
江南実業高校ARDF班も苦戦していた。
「こっちだ!」
「違う!」
「さっき強かった!」
「今弱い!」
完全に混乱している。
その様子を見ていた華が言う。
「みんな迷子だ」
「華にだけは言われたくない」
真宵が即答した。
そのとき。
「ふふふ……」
亀田紗友里が腕を組む。
「どうやら苦戦しているようね」
「場所知ってるんでしょ」
彩鼓が言う。
「知らないわよ」
全員が振り向いた。
「え?」
「知らない」
「隠したの亀田さんじゃないの?」
桜が聞く。
「今回は違うわ」
紗友里は胸を張った。
「うちの父の会社の社員さんに頼んだ!」
沈黙。
「なんで」
真宵が聞く。
「公平性よ!」
「そこだけはまともだ」
彩鼓が感心した。
「だから私も場所を知らない!」
紗友里はドヤ顔だった。
「ドヤるところじゃない」
つまり。
誰も場所を知らない。
本当にARDFだけで探すしかない。
『ピー……』
桜は受信機に耳を傾ける。
強い。
でも近い感じがしない。
「変ですね……」
「何が?」
澄香が聞く。
「強さの割に位置が定まらないんです」
アンテナをゆっくり回す。
どこを向いても聞こえる。
「おかしいな」
彩鼓も受信機を見る。
「これだけ強いならもっと絞れるはずなんだけど」
桜は周囲を見回した。
海。
松林。
遊歩道。
(反射……?)
ふと。
姉と移動運用へ行った時のことを思い出す。
『強い信号が正解とは限らないんだよ』
杏果が言っていた。
『反射してる場合もあるから』
桜は歩き始めた。
「桜ちゃん?」
華が聞く。
「ちょっと確認したいことがあります」
松林を抜ける。
遊歩道へ出る。
再び測る。
『ピー……』
強い。
さらに移動する。
今度は弱くなる。
そして。
もう一度方向を取る。
「……あ」
「分かった?」
彩鼓が聞く。
「たぶん」
桜は地図を見る。
何本かの方位線を頭の中で重ねる。
強い方向。
弱い方向。
反射しそうな場所。
すると。
一箇所だけ。
説明がつく場所があった。
「こっちです」
管理用通路。
普段あまり人が入らない区域。
「本当に?」
真宵が聞く。
「自信はないです」
「正直でよろしい」
彩鼓が笑う。
全員で進む。
数分後。
『ピー……』
急に信号が強くなる。
「近い!」
華が叫ぶ。
「静かに」
桜はアンテナをゆっくり動かした。
方向が定まる。
一歩。
また一歩。
低木の陰。
その奥。
「ありました」
小さな送信機。
第五FOX。
一瞬。
全員が固まる。
「おおおおおっ!!」
華が飛び上がった。
「本当にあった!」
江南実業高校ARDF班も駆け寄ってくる。
「見つけた!?」
「マジか……」
「すげぇ……」
紗友里も到着する。
「なにぃぃぃぃぃ!?」
そして。
「どこにあったの!?」
「そこです」
「見れば分かる!」
彩鼓がツッコんだ。
紗友里は送信機を見て唸る。
「社員さんめ……」
「良い場所に隠しやがったわね……」
「知らなかったんだ」
真宵が改めて確認する。
「知らないわよ!」
「じゃあ本当に公平だったんだ」
「当然!」
そのとき。
彩鼓が桜を見る。
「よく見つけたね」
「たまたまです」
「違う」
彩鼓は首を振った。
「ちゃんと考えてた」
桜は少し照れる。
「姉に教わったことを思い出しただけです」
「へぇ」
彩鼓は少しだけ笑った。
「でも見つけたのは桜ちゃんだよ」
その言葉に。
桜は少しだけ嬉しくなった。
初めてのARDF。
最後のFOX。
そして。
初めて。
「島見杏果の妹」ではなく、
「島見桜」として認められた気がした。




