表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
61/65

第60話 「FOXは松林の中にいる」

 西海岸公園。

 黒松林の中を、潮風が抜けていく。

『――ピー……』

 最初のFOXの電波が、断続的に響いていた。

「行くわよォ!!」

 亀田紗友里が真っ先に飛び出す。

「速っ!?」

 江南実業高校ARDF班が慌てて追う。

「なんで亀田さんって、毎回スタートダッシュ全力なんだろ……」

 真宵が呆れた。

「勢いで生きてるから」

 彩鼓が即答する。

 一方。

 華は、八木アンテナを前後逆に持っていた。

「これどう使うの?」

「まず向きを戻して」

 真宵が冷静に修正する。

「えっ」

「それだと多分、文明への反逆になる」

「難しい!」

 その横で。

 桜は静かに受信機へ耳を傾けていた。

『ピー……ピー……』

 弱い。

 でも、聞こえる。

 アンテナを少しだけ動かす。

 音が、変わる。

「……あっち」

 ぽつりと言った。

「え?」

 華が振り向く。

 桜は松林の奥を見ていた。

「たぶん、海側から少し内側」

 彩鼓が、少しだけ目を細める。

「理由は?」

「反射してる感じが少ないので」

 一瞬。

 真宵が感心した顔になる。

「ちゃんと聞いてる……」

 彩鼓は、にやっと笑った。

「行ってみよっか」

 松林の中へ入る。

 地面には松葉。

 足元は少し柔らかい。

『ピー……』

 少し強くなる。

「おおっ!」

 華が声を上げた。

「近い!?」

「たぶん」

 桜は歩みを止めない。

 アンテナをゆっくり回す。

 耳を澄ます。

 その姿を。

 彩鼓は後ろから見ていた。

(杏果さんに似てるなぁ)

 方向の探り方。

 音への集中。

 迷い方まで似ている。

 ただ。

(でも違う)

 杏果はもっと一直線だった。

 桜は、一回立ち止まって考える。

 その違いが、少し面白かった。

「待って」

 桜が突然止まる。

「ん?」

「さっきより弱い」

 真宵が受信機を見る。

「あ、本当だ」

「通り過ぎたかも」

「えぇー!?」

 華が慌てる。

「落ち着いて」

 桜はアンテナをゆっくり動かした。

『……ピー』

 一方向だけ、強い。

「あっちです」

 方向転換。

 数分後。

「……あった」

 松の根元。

 小さな送信機。

「FOXだー!!」

 華が飛びつきかける。

「踏まないで!」

 真宵が止めた。

 桜はチェック器具へ静かにパンチを入れる。

「すご……」

 華が素直に感心した。

 そのとき。

「うそっ!?」

 遠くから声。

 振り向くと。

 江南実業高校ARDF班の二人が、地図を見ながら混乱していた。

「なんで先にいるの!?」

「え?」

 華がきょとんとする。

「いや普通に探して……」

 江南実業高校側がざわつく。

「速くない?」

「紗友里先輩より先じゃん」

「マジで?」

 桜が一気に気まずくなる。

「いやその、偶然で……」

「偶然でFOXは見つからない」

 彩鼓が即答した。

 そのとき。

 松林の奥から。

「なんですってぇぇぇぇ!?」

 亀田紗友里の声が響く。

 数秒後。

 紗友里本人が飛び出してきた。

「もう見つけたの!?!?」

「はい」

 桜が小さく答える。

 紗友里が固まる。

 そして。

 震える指で桜を指差した。

「やっぱり!!」

 一呼吸。

「島見杏果の妹は強い!!」

「だからその理論やめてください!」

 真宵が頭を抱える。

 彩鼓は、少しだけ笑った。

(これは面白くなってきた)

 その頃。

 寺尾華は。

「次どこ!?」

 と言いながら、

 地図を上下逆に持っていた。

「華はまず北を覚えて」

 ARDF対抗戦は、

 まだ始まったばかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ