急転
「アスカ! アスカ! 大丈夫!?」
ぼんやりとした意識の傍から、聞き慣れた声が入ってくる。
目の前を歩いていた、ソイニー師匠とユキナという女性は突如目の前から消え、僕の目の前の光景がズタズタに砕かれ始めた時‥‥‥
僕は、目を覚ました。
「え、ユミ姉、どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないでしょ、ご飯ができたから、呼びに来てみると、アスカが倒れていたのよ。もう、心配したじゃない」
あー、僕は、白い本を開いた時に、倒れてしまっていたらしい。
ユミ姉は、倒れている僕を抱き起こし、必死に呼びかけ続けてくれたみたいだ。
それにしても、頭が痛い‥‥‥、頭に直接大量の情報が流れ込んだせいか、体調がすこぶる悪い。
「アスカ、大丈夫? 顔が真っ青よ、今、ベッドに運んであげるからね」
「ユミ姉、ごめんなさい。せっかく晩御飯を作ってくれたのに」
「いいのよ、じゃあ、肩に捕まって。後で、おかゆを作って持って行ってあげるから、今や休んでなさい。多分、色々あったから、まだ体が疲れてるのよ」
「ありがとう、ユミ姉」
僕は、ユミ姉に連れられて寝室に行き横になる。
頭が痛くて、意識が朦朧とする。早く、魔専に行ってあの秘密の門を確かめたいのに‥‥‥、僕の意識はだんだんと遠のき、再び眠りに落ちてしまった。
——クンクン
玉子スープの優しいに匂いが僕を眠りから呼び戻す。
「あ、起こしちゃった? ごめんね」
匂いの方向に顔を向けると、ユミ姉がお盆を持って立っていた。
どうやら、病人食を、持ってきてくれたらしい。
「ユミ姉ありがとう」
僕はそう言いながら無理に起きあがろうとすると、ユミ姉はすかさずそれを制止する。
「アスカ、まだ無理しないでいいのよ、食事は置いておくから、食べられるときに食べてね」
「せっかく作ってくれたから、今食べるよ。さっきより体調も良くなったし」
「そうなの? それならばいいんだけど……。後。アスカ、私今日、湾岸地区の夜警を頼まれてて……」
「ユミ姉、僕のことは大丈夫だから、王国のことを、優先して、今の軍は人でも足りてないわけだし」
「ごめんね、アスカが大変な時にそばにいてあげられなくて」
「ううん、ユミ姉は食事も作ってくれたし、こんなに僕のことを心配してくれている。それだけで僕は幸せ者だし、嬉しい」
「ありがとう、アスカ。じゃあ、私はそろそろ出発するね。一応ヒビト君やロージェ様には事情は伝えてあるから、何かあったら私か2人に連絡してね」
そういと、ユミ姉は心配そうにしながら僕の部屋を後にした。
僕は、机に座り、玉子スープを喉に通す。
ユミ姉の優しさがつまった美味しい食事。僕は、ありがたさを噛み締めながら一口一口味合う。
完食後、再びベッドに戻り、体を休めた。頭痛は少し和らいだが、未だ残っており、僕は、横になるとすぐに眠りに落ちる。
数時間くらい経った時だろうか、浅い眠りの時に、頬を風が撫でるのを感じた。
朦朧とした意識の中、「窓を開けたっけかな」と考える。
‥‥‥
いや、おかしいぞ、窓なんて開いてないし、こんな時期に窓なんて開けるはずが‥‥‥
僕は、異変に気付き目を覚ますと‥‥‥目の前に、因縁の相手、ニールが僕の上に跨っていた。
僕はとっさに自己防衛のためニールを殴ろうとするが、体調不良のためうまく力が入らず、簡単に防がれてしまう。
「全く、気づかなければ痛い目を見なくて済んだのに」
そういうと、ニールは僕の首めがけてチョップし、その瞬間、僕は気を失ってしまった。
—————
「‥‥‥くっ、ここは、どこなんだ」
僕はゆっくりと目を開けると、周りの光景に驚いた。
家のベッドで寝ていたはずが、今は、王族が寝るようなベッドに寝ている。
僕は、周りを見渡す。
「僕はどうしてここに、あ、そうだ、あいつが僕の部屋にいて!」
僕はとっさに起き上がり、臨戦態勢をとるが、そこには、ニールはいなかった。ただそこには、1人の女性のメイドが椅子に座っており、僕が起きあがったところを見ると、ゆっくりと立ち上がり、一礼しながら話し始めた。
「初めまして、アスカ様、目を覚まされるのをお待ちしておりました。今、お着替えなどを用意しますので、しばしお待ちください」
「え、ちょっと待って、あなたは一体誰ですか」
全く敵意のない女性のメイドを前に、僕は戸惑いながら、とっさに尋ねたが、メイドは有無を言わさずに部屋から出て行ってしまった。
一体、ここはどこなんだ。
僕は、まず現状を把握しようと、部屋をゆっくりと隅々まで見渡す。
まるで、姫様の部屋のような暖炉や燭台など、王宮の一室のような部屋。
しかし、場所の手がかりになるようなものは一切ない。
さらに、『一徹』もなかった、恐らく『一徹』は家に取り残されたままなのだろう。
これは大変、分が悪い。何かあった時の対抗手段がない。
「お待たせしました。こちらをお召しになってください」
僕があれこれ思案していると、メイドが戻ってきて、僕に着替えるよう言ってきた。メイドの手には、スーツとローブがあった。僕は、訳もわからずそれらを着させられる。
そして、僕の服装をメイドが整えたのち、メイドは、ドアを開けながら僕に告げた。
「では、参りましょう。王がお待ちです」




