第4話 結成! 混ぜるな危険パーティー
「いい?フェングラン、あたしは魔王よ。この世界の理を知り尽くしているわ。スライム駆除など、指先一つで……」
「ダメ。エレン。目立ちすぎ。今はただの『自称・魔術師のお嬢様』って設定なんだから」
「むぅ……設定に厳しいわね、お前」
俺たちは、街の外れにある湿地帯にいた。依頼内容は「増えすぎたブルースライムのま引き」。
報酬は銀貨3枚。魔王城のディナー1食分にも満たない額だが、冒険者としての実績作りには欠かせない。
「よし、あそこに一匹。俺がハンマーで叩くので、エレンは魔法でトドメを……」
「まどろっこしい! 『極大消滅呪文』!!」
「ちょ、待っ――」
ドォォォォォン!!
湿地帯の一角が、文字通り地図から消えた。
スライムどころか、地形が変わっている。
「……エレン。これ『ま引き』じゃなくて『絶滅』な」
「あ、つい。久しぶりの外だったから出力設定を間違えたわ。てへっ」
「『てへっ』じゃない! てへっ、じゃ!ギルドにバレたら除名だろ、これ!」
慌てて土魔法でクレーターを埋め戻していると、背後から、聞き覚えのあるやけに澄んだ声が響いた。
「あら? そこで何をしてらっしゃるのですか?」
振り返ると、先日街で見かけたあの聖女様が立っていた。
真っ黒な髪に、吸い込まれそうな黒い瞳。
彼女は、ボコボコになった湿地と、泥まみれの俺、そして必死に角を隠している魔王を、順番に眺めた。
「……魔力の残滓から察するに、今ここで超高度な爆発級の魔法が放たれましたよね?」
「「い、いやぁ……気のせいじゃないですかね?」」
俺とエレンの声が、完璧にハモった。
聖女はふっと微笑むと、俺の耳元に顔を寄せて、小さく囁いた。
「……勇者様、ですよね? 召喚の儀式で、真っ先に窓から飛び降りた方の」
「!!」
「そして隣の方は……ラルの主。面白い組み合わせですね」
聖女様、察しが良すぎる。というか、召喚の現場を見ていたのか。
彼女は「ふふっ」と楽しげに笑うと、とんでもないことを言い出した。
「実はわたくし、神殿のガチガチな生活に飽きていたんです。ちょうど今、巡礼という名目で『バックレ』てきたところでして」
「えっ、あなたも?」
「はい。神の声を聞くフリをするのも疲れました。……というわけで、わたくしも混ぜてください」
「ダメよ! 定員オーバーよ!」
エレンが、即座に割り込んだ。ライバル(?)の出現に、魔王のプライドがうずいたらしい。
だが、聖女様は一枚上手だった。
「あら、わたくしがいれば回復魔法は万全ですよ? それに、神殿の隠し金庫から持ち出した『無記名の金貨1000枚』がありますが……これでもダメですか?」
「「……ようこそ、パーティーへ!!」」
現金な元勇者と、金に釣られた魔王。
こうして、世界を救うはずの勇者と、滅ぼすはずの魔王、そして導くはずの聖女という、「世界で一番関わりたくない混ぜるな危険パーティー」が結成された。
「行きましょう! まずは美味しいものを食べに、隣の国まで!」
聖女が、拳を突き上げる。
「ちょっと二人とも、目立つから走らないで!」
背後からは、魔王城の方角から「魔王様ー! どこですかー!」というベリアルの絶叫が、風に乗って聞こえてきた気がした。俺は全力で耳を塞いだ。
さて、俺ののんびり異世界ライフは、一体どこへ向かっているのだろうか。
なんでこうなった?




