ep.39 夜は続く
* * *
【サッチービレッジ 医療班】
「他にあるかな? 別に生命体関係じゃなくてもいいよ?」
「よいですかね。医療班から意見を言わせてもらっても」
先日の、子ども達には言えない話は明かされていない。
今日こそ確認しておきたい。
「ドクター。何か物資が不足した?」
「そうですね、物資はもともと少ないですからね。ただ、病気も怪我もほとんどないですからまだ持ちます」
「なら、よかった。で?」
「先日の件、『びっくり人間三星』という話の答えをもらってませんよ?」
今日は大人だけだ。
しかも研究班も警察?公安?もいる。
ごまかしはできないだろう。
「ああ、そっか。ごめんごめん。忘れてた」
「それね、ちょっと待ってね(サッチー姿をあらわしなさい。でもしゃべっちゃだめ)」
《(りょ!)》
三星さんの周りに、「浮かぶ玉」が現れた。
皆も驚いている。
「というわけさ」
「何が、どういうわけなんですか? 答えになっていませんが?」
思わず反論してしまう。
「それはね。私は天才科学者で――」
「三星さん、それはあまり通用しないと思いますよ?」
「えーこういう演出があってもいいじゃない? けちんぼだなあ1号は」
さっぱりわからない。
「その物体について説明しろとは言いません。ただ、なぜ三星さんがびっくり人間なのかは教えてください」
「チミも細かいねえ。この玉でごまかされてくれてもいいのに」
ごまかされそうになったけど、踏みとどまる。
「まあしゃあないね。これはね。エイリアンがくれたものだよ」
「はあ? エイリアン? そんな存在は見つかっていませんが?」
「ああ、ごめんごめん、この星由来じゃない。この星を観測しているエイリアンがくれたものだ」
「ウソですよね?」
それは絶対に嘘だ。
ごまかされない。
「1号、3号、あとハブちん」
「ええ、確かにエイリアンのものですね」
「うん、それはその通りだわな」
「なぜ私を証明につかう。おそらくエイリアンのものと自衛隊は見ている」
そんな、まさか。あり得ない?
いやあり得るのか?
だが、市役所の方も自衛隊の方も嘘をつくとは思えない。
「公安もいるし、その他のチューチューネズミ君たちもいるから説明は省くが」
「俺たちの方がここではエイリアンだぞ?」
* * *
【サッチービレッジ 三星】
まあここいらがタイミングだろうな。
この先、俺の発言に少しでも重みが出るなら良いだろう。
適当なことは言い続けるけどね。ぷっ。
「よいか? ざっと説明はするけど、わからなかったらまた聞きに来てね」
「この星というか星系も、俺たちと同じようにこの辺に突然移動だか湧いてきたらしい」
「そんで、それを観測した別の文明が、めちゃくちゃ時間をかけてここまで観測機器を飛ばした」
「偶然にも、その観測機器と俺は通信できた」
「観測機器は俺を観測対象に認定した」
「俺も観測を許可するかわりに、少しだけ手伝ってもらうことにした」
「例えば、水場がどこにあるか、とかね」
ふふふ、驚いてる驚いてる。
でも、おんぶにだっこは勘弁だからな。
釘は刺しておくに限る。
「だが、それほど便利じゃない。観測機器というか衛星なんだが、観測しか基本しない」
「すなわち、地形などはわかるが、どんな資源があるかまでは断定できない」
「加えて、やり取りできるのは俺だけだ。俺が死んだらもう情報は得られない」
「その理由? その遠い、遠い文明が許可を出した対象は、俺だけだからね」
「これを奪おうとは思わないことだな。君らには使いこなせん」
「そして、もし誰かを人質に取ろうとか考えるなら、全力で対抗する」
「消し炭にしてやるよ」
できないけどね。ぷっ。
できないよね?
「と、脅すような真似をしちゃったけど、基本的には皆家族だ」
「だから、そんなことがないとは思うけど、家族の中でもルールは必要だからね」
「少しだけ便利なカーナビがあると思ってくれればいい」
《(私はカーナビなどという低俗なマシンではないぞ)》
「それと、びっくり人間が結びつきませんが?」
あ、間違えちゃった。
てへへ。
* * *
【サッチービレッジ 橘】
三星さんらしいといえばらしいな。
盛大な展開で皆を惹きつけるかと思ったら、肝心の質問には答えてない。
私もどこまでサッチーの秘密を話すかにとらわれて、すっかり忘れていた。
「その4つの玉がどうびっくり人間に結び付くんですか?」
さあ、三星さん、ドクターの質問に何と答える?
「そっかそっか、それだったよね。ごめんね。四つの玉はまあいろんな機能があるが、それを動かすにはエネルギーが必要なんだよ」
「はあ」
「そのエネルギーは俺から搾取している」
「はい?」
「俺が食べたものをエネルギーにして動いているのよ」
「できませんが? そんなこと」
「できるのよ。すっごい文明だから」
はじめて聞いた。
サッチーが何か関係しているとは思ったけど、そんなことになっていたとは。
「わかりました。エネルギーについてはひとまず受け入れます。ですがまだびっくり人間が解決していません」
「そのエネルギーをとる装置は俺の体の中にある。胃袋付近なのか、腸なのかはわからない」
「なるほど、そういう理論なら理解できます。その装置が分析を兼ねているということですね? ですが毒物やアレルギーには対応できないのでは?」
ドクターとのやり取りを聞いているだけだが、確かにその通りだ。
危険であることに変わりはない。
「君らでいうところのバイタル?がわかるらしいのよ。それで何か危険な兆候があれば、吸収されないようにしてるとかなんとか」
「はあ、ずいぶん都合が良くできてますね」
「俺も実際わからん。多少体調悪い時もあるが、そこまで具合が悪くなったことはないからな」
そんなことしてたんですが?
ダメじゃないですか。
奥さんだって、猫たちだって悲しみますよ?
「まあ、そんなわけでさ、エイリアン、あーもう色々当てはまりすぎちゃうから、未知の文明と呼ぶね」
「それは俺の中に機械をおいて、食べられるか、ある程度安全か、エネルギーといったものをうまいことやってくれてると」
「なるほど。子どもにはうまく言えませんね。確かに」
私には思いつかない質問だったが、専門家とのやり取りは確かに重要だった。
そして、三星さんがかなり無茶していることもわかった。
だめですよ、三星さん。
私だって、あなたのことを大切に思っているのですから。
うふ、うふふ。
* * *
【サッチービレッジ 三星】
まあこの程度ならバラしても問題ないだろう。
むしろ、余計に混乱するやつら(ねずみ)が増えるだろうからな。
勝手に詮索すればいいさ。
俺自身はサッチーを(そんなに)利用したり、悪用したりする気は(あまり)ないんだから。
「これで回答になったかな?」
「はい、まあ納得はできませんが理解はしました」
しゃーなし。
俺を解剖されても困るからその程度にしてくれ。
俺が死んだあとは好きにすればいい。
「あと質問はある?」
「あ、ついでと言ってはなんですが、ボクもいいですか?」
えーっと誰だっけかな?
「この後の方針について教えてください。あ、教師です」
「思い出した。新卒高校教師、センセイとあだ名をつけた子だな」
「子扱いはひどいなあ。若造だから仕方ないですが」
ボクと言ってはいるが、れっきとした女性だ。
そう憧れのボクっ子である。満足である。
「そうだなー。大まかな流れだけでいいか? 発見とかトラブルがあれば変わる前提で聞いてもらえるとうれしい」
「それでも十分です」
「まずは、ここである程度の生活というか社会を成立させるのが第一弾。水と食料の確保だね」
「更には動物達が暮らしていけるのか、他の場所が必要かもじっくり見る」
「人間、動物、それらを含めてこの環境でやっていけるかの観察が主目的だ」
「その目途は?」
「具体的なものはないなあ。ただ、少なくとも例の植物っぽいものが食べられるなら、早めに押さえたいね。どういう言い方が適切かわからないけど、千葉県内の人々の食料の足しになればうれしい」
「なるほどです」
「第二弾としては、すでに先発隊も出しているけど、第二集落ポイントの開拓だ」
「人員をわけるのですか?」
「ある程度はここから人を出してもいいが、最初から参加できなかった人たちも多い。また地域社会に馴染めなかった人も増えるだろう。その受け皿にしたいね」
「トラブルが起こるのでは?」
「まあその辺はうまくやるしかないなあ」
おそらく次に来るのは一癖も二癖もある人物がまじるだろうからな。
こちらを掃き溜めにされるのは困るが、受け皿としての機能は持たせないとな。
「それについては自衛隊と警察に任せるよ」
「第三弾というかそれ以降は?」
「うん、他にはね、この集落の更なる発展、例えば農作物とかだね、あとは動物の飼育。これは食べられる方の動物ね」
「ちょっとかわいそうな気もしますけど」
「最初から食べる前提で育てはしないよ? もし植物っぽいので必要な栄養素が摂れるならそっちをメインに。だが、リスクは負えない」
「それは理解できますが」
これまでだって、スーパーに並んだ肉は食べてたんだ。
愛着がわいたからって食べられないってのはわがままだと思うけどな。
まあ、俺も食べられない方だけどね。
「とりあえずは、地球産の植物、動物がどれだけこの環境に馴染むか。並行してこの星独自の生態系を俺たちが受け入れられるのか。その二点だな」
「ボクたちが勝手にここの生物や生態系を壊してもいいんですかね?」
「無責任だけどさ、俺には判断できないな。それは」
「ですが……」
「言わんとすることはわかるよ? でもさ、闇雲に乱獲したり、環境を壊すんじゃなければ、少しぐらい居候させてもらうしかないよね」
「うーん」
「俺たちも人間という一種の生物として振舞おう。驕ってはダメだ。また恐れてもだめだ」
他にやりようがないよ。
いや、もしかしたらあるのかも知れないけどさ。
少なくとも俺には思い浮かばないし、家族を守るとは相いれなくなる。
「俺たち人間の中でも倫理がある。最低限の倫理は絶対に必要。暴力はだめだ。また弱い者いじめもだめだ」
「だけど、極端な意見は軋轢を生む。なあなあである必要はないし、意見を封じ込めるつもりもない」
「俺は自分の考えを全員が守れ、とか守るな、とかいうんじゃないよ?」
「俺たちは侵略者。それならおとなしく、少しだけこの地の富をわけてもらう。そういう謙虚さがあってもいいんでない?って言いたいわけ」
地球なら、文明があれば、守ってくれる力があれば、生きるのに困窮しないのであれば
安全な場所からいくらでも意見を述べ、自己を主張することはできた。
だが、ここでは生きることが大前提だ。安全な場所なんてないかも知れない。
自分で自分の生き方を決める。
誰かに決めてもらうことはできない。
だが、ここは道化を演じる者がいた方がいいだろうな。
1号や3号、にさにさ、ハブちん、そのほかでもない。
俺じゃないとダメなんだろうな。
はあ……
「俺は皆を守る。皆は俺に守られろ。皆も皆で協力する。そして俺は食っちゃ寝をする。これで万事解決!」
こんなんで理解してくださいな。
話すのは疲れたよ。
最近、多いなあ。
仮病使っちゃおうかな。
* * *
【サッチービレッジ 橋爪三佐】
なるほどな。
難しい話はわからんが、三星の言いたいことはわかる。
弱いものを守る。
それだけだ。
自衛隊だって根っこは同じだ。
わかりやすい。
大変だな。
色んな人の相手をしなきゃならん。
あいつはリーダーではないが、人を惹きつける魅力はある。
本人は絶対に嫌がるだろうが、この星においてはしばらくの間、必要な人間なんだろう。
だから、ハブさんや、警察、その他の集団も気にかけてるのだろう。
わかったよ。
俺がお前を守る。
お前は俺より弱い。
なら守られろ。
お前の言う通りなんだから、抵抗はできまい。
だから、そろそろお見合いというか、出会いの場をセッティングしてください。
一人寝は寂しいです。
「三星!」
「うお、なんだ突然?」
「見合いの場をセッティングしてけろください」
「けろください? カエルにでもなりそうなのか?」
しまった。方言が出てしまった。
「なんでもない。もうそろそろいいだろう? その方が建てる家も少なくて済むかもしれん」
「はっはっは。ごまかさんでもいいよ。3号。だが、お前の要望には応えよう」
「お! さすが三星だ」
「Bさん、1号、よろしくセッティングしてやってください」
「私がか?」
「私もですか?」
どっちでもいい、頼む。
「Bさんなら人となりというか人を見る目はあるだろう?」
「まあ、職業柄な」
「1号はなんでも係だからな」
「まったくこういう時だけ都合よく」
「というわけで、そっちは協力できないので、よろしく頼んだ」
よろしくお願いします。
* * *
【サッチービレッジ にさにさ】
よくやった橋爪!
私もよろしくお願いします!
にさにさは幸せになります!




