第8話 豪華客船
マルミーエ国の大臣に連れられて来た港には立派な船が停泊していた。
サラ「これがアンタの言うプレゼントかい?」
大臣「この船でリガンが待つマルミーエ城の近くまで一気に移動できます」
ジャック「一般の市民も乗船しているようだが?」
大臣「この船は豪華な船旅を売りにしたマルミーエ国の事業でもありますので富裕層も乗船します。なので船内で皆さんの仕事も捗るかと」
トニー「金策と輸送を兼ねるなんて気が利きますね…富裕層だけにっ!」
大臣の用意した船に盗賊団が乗船する。そして船が出航するとさっそく獲物の品定めを始めた。
サラ「ただの船旅なのに乗客たちは随分と宝石や貴金属で着飾ってるね」
ジャック「船内のヒエラルキーでマウントを取るためだな。自分の地位や財力を自慢する場でもあるんだろ」
トニー「片っ端から強奪していきますか?」
トニーの提案をジャックはニヤリと笑って否定する。
ジャック「最近は高レベルに胡座をかいて正面から堂々と奪っていたからこっそりといくぞ」
サラ「どのみち盗まれたことに気づいて騒ぎ出すんじゃないかい?」
ジャック「それは船を降りるときにわかるはずだ」
ジャックの指示で盗賊団は気づかれないように乗客から金品を盗んでいった。すると1人で行動していたサラに老人が話しかけてきた。
老人「これはこれは美しいお嬢さんだ。お名前を聞いてもよろしいですかな?」
サラ「フン! 女はね、ミステリアスのままの方がいい女に見えるのさ」
老人「ほっほっほっ。これは一本取られましたな。実はお嬢さんが若い頃に亡くなった妻に似ていたのでつい声をかけてしまいました。この船に乗ったのも2人の思い出をめぐるための旅でしてな。失礼をお詫びしますぞ」
老人が去ると入れ替わるようにジャックがサラの所に来た。
ジャック「話をしていたようだがあの爺さんは?」
サラ「なんだい? 妬いてるなんて可愛いとこあるじゃないさ」
ジャック「ぬかせ。只者じゃないということだ」
もう見えなくなった老人がいた方向に顔を向けてサラがジャックに問いかける。
サラ「何者だい?」
ジャック「さあな」
客室を物色していると高齢者や教師で構成された平和活動の団体客も乗船していることがわかった。
トニー「そういえば平和活動家ってなんで高齢者が多いんですかね?」
サラ「平和主義者を演じるためさ。年寄りは自分を守るために若者を戦場に行かせるんだけどそれは戦争を主導する行為で主犯だからね。戦後に罪に問われたり親を亡くした子供の面倒を見るのを避けるために自分は最初から戦争反対派だったって嘘をついて逃げるんだよ。だから年寄りが多いのは戦争責任から逃げるためと見捨てられた人を見てきたから次は自分の番だって警戒してるからさ」
ジャック「教師も子供にお国のために戦って死ねと教育してたようだ。目の前で教師が手のひらを返すところを見た子供は驚いただろうな。でも教師の戦争責任に気づくような感の鋭い子供は教師に嫌われるんだ」
トニー「こんな船に乗れるなら金はあるところにはあるってことなのに酷い話ですね」
船がマルミーエ城近くの港に着く頃には一通り盗み終えていた。そしてジャックたちは船を降りていく乗客の反応を見る。
サラ「おや? 騒いでいる乗客があまりいないね」
トニー「どういうことですか?」
ジャック「豪華客船の乗客は結婚記念日の夫婦とかが多いから離婚が怖くて夫婦喧嘩を避けようとしてるんじゃないか? それと結婚記念日の類は失敗できないから彼らに十分な補償がされてもこの船にはもう乗らないだろうな」
大した騒ぎになることもなく下船したジャックたちは次のチート勇者が待つマルミーエ城へと向かった。
???「追い詰められたが大丈夫か? 貴様のチートも当てにはならんな」
勇者リガン「くっ! …こうなったらこの私が直接相手になってあげましょう」




