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変わらない明日を君と  作者: 夏露
第一章
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28話 花言葉をめぐる迷推理

 久々に軽く走ったせいか、可南は風呂上がりに心地いい倦怠感を覚えていた。

 まだ熱の引かない体に部屋着を纏い、濡れた髪をタオルで拭きながらリビングのソファーへ腰かける。


(それにしても、あんな近場でプロジェクションマッピングなんてやってたんだな。今度から地元の情報もチェックしておかないと)


 ついさっき、龍と一緒に見た美しく精巧な映像作品を頭の中で再現していると、ふと、ある一つの言葉が気になりだした。


 そういえばあの時、龍は「ここの花は僕らに合う」と言った。


 俺に合う花としてガーベラを挙げて説明してくれたが、その時の俺は目の前の景色の方に関心が行ってしまって、彼に合う花を尋ねるのをすっかり忘れていた。


 彼は普段から意味のない余計なことまで喋るタイプではない。だから発言には大概、何かしらの意味や意図が含まれている。

 あの言葉にも何か意図があったのではないだろうか。例えば何かの相談や報告、もしくはキャリアアップについてビジョンを共有したいとか、1対1で話したかった何かが。


 あの言葉に一体どんな意味があったのか。可南はタオルを動かす手を止め、ガーデンに咲いていた花たちを端から順番に思い出す。

 

 龍がわざわざ「自分に合う」と言うのだから、陰湿な花言葉を持つものはまず除外した。俺の中で彼は物静かで優しく、そして温かい……まるで陽だまりのような人物だからだ。次に、あの場の流れにそぐわない言葉を持つ花も同じように除外していく。


 そうして論理的に選択肢を削っていくと、候補はだいぶ絞られてきた。

 残ったのはポピーの"いたわり""思いやり"、ゼラニウムの"尊敬""信頼"、藤の"優しさ"、マーガレットの"誠実"。そしてギリギリ入りそうなラベンダーの"期待""あなたを待っている"。


 ゼラニウムどラベンダーは彼自身に合うというよりは、彼が誰かに抱く気持ちになってしまうが、いつも細やかな気遣いができる龍ならば、俺に向けて言ってきそうな言葉ではあった。仕事の相談や評価について、遠回しに俺に何か伝えたかったんだとしたらこの2つも合うだろう。


(どれだ? そしてこれに何の意図が?今度聞いてみようか)


◆◇◆◇


 可南の並外れた記憶力によって最初にリストアップされた花の一覧には、龍が言おうとしていたハナミズキも確かに含まれていた。


 しかし可南は、龍が自分に対してただの好意すら持っているとは思っていなかった。そのため、恋愛や情愛といった系統の言葉を持つ花は、考察の初期段階で早々に除外してしまっていたのだった。


 彼がいつも自分に手を差し伸べ、あれほど気を遣ってくれるのは、彼が元来優しい性質で、他人のことをどうしても放っておけないからなのだと──可南は本心からそう解釈していた。


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