23 森の内見に行こう
臨時収入を得た後は、珍しくスーリヤに褒められながら町を出た。
ちなみに臨時収入五万Gはしれっとスーリヤのサイフに入ったが、削っていた食費のグレードアップを約束してくれたのでまあヨシとする。今夜は久しぶりの肉が食えそうだ。
こうしてウキウキ気分で北に向かいながら、スーリヤの見慣れた背中を見続けること二時間。俺たちは目的の森へと到着した。
「おお。スーリヤ君。森だよ、森ぃ……」
「だねえ、リーフ君。森だねえ……」
久々の森を眺める。俺はもちろんだが、スーリヤもなんだかんだで森を見て嬉しそうに頬を緩ませている。やはり森育ちのエルフには森成分が必要不可欠なのだろう。
俺たちは顔を見合わせると、迷いなく森の中へと足を踏み入れた。
それからしばらく森を歩いていく。
するとなんとなくわかってくるのだが――どうやらこの森は世界樹の森に比べて、木々が全体的に低く、食べられそうな実のなる樹木も少ないようだ。悪くはないが、豊かとは言い難い。
ふとしゃがみ込み、おもむろに土を掴む。……うーむ、やはり土魔法が得意な俺から言わせると、滋養も魔素も乏しいスカスカな土のように思える。とはいえ、森が痩せたり枯れたりしているわけではないことを考えると、これくらいが普通の森の土なのだろう。
そしてこれが普通なのだとすると、やはり世界樹には森を豊かにする加護があったということだ。さすがエルフのタワマンと呼ばれる(呼ばれてない)だけはあるぜ。
とはいえ、マイナス点ばかり上げたが、それでもやはり森は森だ。
土と葉の匂い、風に揺れる草木の音が、俺の心を落ち着かせてくれる。町にいるときより自然と呼吸も深くなるね。これで森の中の家に引き込もれれば最高なんだけどな。
ちなみに種のヤツからは、森についてこれといった感想は聞こえてこない。普段なら一言二言、なにか偉そうなお言葉があると思ったんだけど、珍しいこともあるもんだよ。
「おい、種。この森についてはどう思うんだ?」
『お前は本当に愚かですね。例えばお前は人と対面しながら、その人の感想を目の前で言えますか? 森に失礼ですよ、もっと気を遣いなさい』
世界樹の種子の視点になるとそうなるのか? というか、コイツ俺には結構失礼なことを言ってるよね? つまり俺ってコイツからすると森以下なのか……。
などと思いつつも、感想が言えないってことは種も俺と同じような評価なんだろう。やたら好条件を掲げていたし、コイツがこの森で満足するわけないのだ。まあコイツが満足しようがするまいが、俺には関係ないけどね。
そうして森をあてもなく適当に歩いていく。しばらくすると、俺の直感が人の気配を感じ取った。
「待て、スーリヤ」
「……いるの?」
「ああ」
スーリヤが足を止めたのを確認し、俺は気配のする方に顔を向けて声をかける。
「……えーと、この森に住んでいるエルフの方ですか? ちょっとお話がしたいので、出てきてくれませんかねー?」
すると遠くの木々がざわりと揺れ、その陰から一人のエルフの男が姿を現した。狩りの途中だったのか、弓を背負ったいかにもなエルフだ。ちなみにエルフは魔法の他に弓が得意な者も多い。俺はからっきしだけどね。
その風貌は人族なら二十代くらいに見えるが、同種族だからかなんとなく分かる。おそらく三百歳くらいの中堅エルフだ。ちなみに俺やスーリヤのような百歳は、まだまだ若造扱いである。
その中堅エルフ男は、俺たち若造を警戒心アリアリの目で見つめてきた。
「……ここへ、何をしにきた?」
「ええと……。私たち、この森に移住したいと思ってきたんですけど……」
スーリヤが一歩前に出て、会話を始める。交渉役はスーリヤ担当だ。俺だと失礼なことを言いそうってことでスーリヤ自ら立候補した。実に適材適所である。
「ほう、どこに住んでいたエルフだ?」
「ファルトスの西にある世界樹の森にいました」
そのスーリヤの言葉にエルフ男の眉がピクリと跳ねた。
「世界樹の森ぃ……? あそこは豊かな森だろう。それがなぜわざわざこの森にやって来たのだ」
「実は帝国が攻めてきて、世界樹が焼かれてしまったんです」
「なんと、そのようなことが……」
絶句するエルフ男。その表情には確かに憐れみの感情が浮かんでいた。だが続けてエルフはキッパリと言い放つ。
「可哀想だとは思うが、世界樹の森のエルフを受け入れることはできん。今すぐ立ち去れ。さもなくば、この森の掟に従い力ずくで排除することになる」
おぉん? なんだコイツ。
そういや世界樹の森って言った瞬間、顔色が変わったんだよな。もしかしてエルフのタワマン嫉妬民か?




