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22 やってる感

 そして翌日。俺たちはさっそく町を出て森を見に行くことにした。


 久々に引きこもれた宿から出るのは正直しんどかったが、森に行くとなるとさすがに俺も出るしかない。


 あまりスーリヤをイライラさせて愛想を尽かされたら、俺の人生が詰む可能性があるからな。森ならともかく、こんな町のど真ん中で単独行動できるほど俺は強くはないのだ。


 俺が引きこもっても見捨てられないギリギリのラインを見極めるのが、これからの俺の最大の課題となりそうだ。社会復帰ではなく、関係維持のための最低限の外出である。


 相手を納得させるための「やってる感」。俺が前世でこれに気づいていれば、身体を壊すこともなかったかもなあ……。


 などと、ちょっとしんみりしつつ外出の準備をしていると、スーリヤが俺の手荷物に気づいた。


「ん? リーフ。これってなに?」


「ああ、これか」


 俺は風呂敷包みを開き、スーリヤに見せてやる。


 そこには昨日、俺が作った土製フィギュアが三体入っていた。町の露店で人や鳥、馬の木彫りの人形みたいな置物が売られているのを見て、ふと俺の趣味であるフィギュアも売れるんじゃないかと思ったのだ。


 ならコイツを卸してやれば、少しは金になるかもしれない。そうなれば俺の発言力もほんの少しは上がるかもしれないしな。


 ちなみに今回作ったのは某鬼を滅するスレイヤー的なアニメのフィギュアだ。キャラのオリエンタルな雰囲気がこの世界の人々の目を引くだろうという判断だ。


 できればすべての柱の分を作りたかったけれど、そこまでやると徹夜確定なので諦めた。同じ部屋にスーリヤもいたからな……。むしろ三体も作れた自分を褒めたい。


 俺の渾身のフィギュアを見て、スーリヤが感心したように唸る。


「おおー、これを売るんだ。リーフにしては気が利いてるじゃーん」


「ふふん。そうだろう」


 だから俺を見捨てないでね。という本音は胸にしまっておく。


『結構な心がけです。これからも励むのですよ』


 ……こいつに褒められても一切嬉しくないのはなんでだろうな。


 ◇◇◇


 それから門へと向かう前に、土産物を売っている露店へと立ち寄った。


 さっそく声のデカい露店のおっさんに、いくらでもいいのでこれを買ってくれないかと声をかける。


 ボッタくられたって別に構わない。原価は0だし、そもそも俺の趣味の一環だからな! できれば今日の昼食代くらいにはなってほしいけどな!


 ……などと、なるべく自分の中で期待値をゴリゴリに下げながら、おっさんにフィギュアを手渡す。


「んー。ウチはそういうの、やってねえんだけどなあ……」


 ぶつぶつ文句を言いながらもおっさんはフィギュアを手に取ってくれた。人のいいおっさんである。


 そしておっさんはフィギュアを見るなり、目をギョッと見開いた。


「なっ……! これは……木じゃねえよな? なんだこの材質……。もしかして土なのか? しかも表面処理もヤベえ、磨きだけでこのツヤは出ねえはずだ。そしてなによりこの造形! 立ち姿の軸がブレてねえし、角度を変えても印象が崩れねえ。形そのものが完成してやがる。それに布の表現なんて、まるでその瞬間を切り取ったみてえだ。くうっ、今にも動き出しそうだぜ……!」


 なんか思った以上に食いつかれて怖い。


「間違いねえ、これを作ったのは未だ世に出ていねえ天才職人に違いない! おい、これを作ったのは誰だ!? 名前を教えてくれ。なあ、頼む! このとおりだ!!」


「い、いやあ。俺たちも露店で売られていたものを買っただけで、その露店も今はもう無くなってて……」


 こんな危ない反応をするおっさんに『俺が作りました』なんてとても言えない。そしてまさか俺が作ったとも思わなかったのか、おっさんは素直に信じて肩を落とす。


「そ、そうか。残念だ……。だが、これは売ってくれるんだな!?」


「あ、ああ。それはもちろん……」


 ということで謎の熱意に押されつつ、フィギュアはあっさりと売れてしまった。しかも三体で五万G。昼食代どころか、野盗からひん剥いたのと同額になってしまった。


 こんな値段で買い取って、本当に露店で売れるのだろうか。他人事ながらも気になったのだが、フィギュアをガン見しながらつぶやくおっさんの声が耳に入る。


「はあはあはあはあはぁ……。これは俺のモノだ、俺のモノだ、俺のモノだ! 絶対に誰にも売ったり渡したりしねえぞ……!」


 えっ、怖。どうやらフィギュアは個人的におっさんの琴線に触れたらしい。


 ちなみに血走った目で見ているのは乳のデカい柱のフィギュアだ。展示用か、観賞用か、もしくは夜な夜な愛でる用か。まあ買い取ったからには、好きに使ってくれていいけどね。

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