100 ゴウマ2
「オラアッッ!!」
バゴンンッ!
耳をつんざく衝撃音が響き渡り、フォレストゴーレムがまた一体、木っ端微塵に破壊された。
上半身を吹き飛ばされたフォレストゴーレムが膝をつき、そのまま崩れるように地面に倒れ込む。
「ガハハハ! 雑魚ばっか寄越すんじゃねえよ! 貧弱エルフが!」
ゴウマの勢いは衰えるどころか、戦いの中でさらに勢いを増していく。拳を振るうたびに風がうなり、衝撃が空気を震わせていた。
俺は額の汗を拭い、精神を集中させて魔力を大地に送り込む。
「なら、こういうのはどうだ!? 来いっ――【人喰い花】!」
地面が裂け、巨大な蕾が勢いよく飛び出した。蕾はみるみる膨らんでいき、花弁がくぱぁと開く。現れたのは巨大な口のような花弁を持つ【人喰い花】だ。
「ギュィィィィィ!」
金切り声を上げながら、マンイーターの花弁から白く粘ついた液体が吐き出された。それは放物線を描き、ゴウマへと降り注いでいく。
ゴウマはそれを迎え撃とうと身構え――
「……クソがッ!」
何かを察したのか、咄嗟に大きく横に飛び退いた。
そして液体が地面に落ち――
ジュウウウウウウッ!
地面が黒く焼け焦げ、泡立ちながら煙を上げる。
「やはり毒か!」
ゴウマは声を上げるとすぐさま駆け出し、マンイーターの巨大な葉をむんずと掴んだ。
「雑草ごときが、手の込んだコトをしやがるじゃねえかっ!!」
そしてマンイーターを力任せに引き抜くと、大きく振りかぶって地面に叩きつけた。巨大な花が一撃でぐしゃりと潰れ、マンイーターはそれきり動かなくなる。
あんなに恐ろしいマンイーターですら、ゴウマの相手にはならないようだ。
だがそれでも、俺はゴウマが息をつく暇を与えるつもりはない。
「まだだ! いけっ!【森の巨人】三連星!」
ドゴォォォッ!
地面が爆ぜ、三体のフォレストゴーレムが一斉に立ち上がる。
三体同時創造は初めてだ。俺も戦いが始まる前よりはるかに速く、安定してゴーレムを創り出せている。確実に魔法の練度が上がっている実感があった。
緑の三連星が同時にゴウマに襲いかかる。
「ははっ! 無駄だ無駄だ!」
凶悪な笑みを浮かべ、殴りかかろうとするゴウマ。そこに俺は詠唱を重ねる。
「【大地の呪縛】(小)」
「ぬっ!?」
ゴウマの足元の土がわずかに盛り上がり、その足首をしっかりと絡め取った。
ゴウマの体勢がガクンと崩れる。それはわずか一瞬だったが、それだけで十分だった。
ドゴゴゴゴゴゴゴォッ!
三体の拳が一斉にゴウマに叩き込まれていく。
「ぐううううっ!」
慌てて両腕でガードするゴウマ。だがお構い無しにフォレストゴーレムの連打が雨あられのように降り注ぐ。
すると観客からブーイングが上がった。
「ああっ、族長!」「この卑怯モノー!」「セコいぞ!」「それでもキン◯マついてんのか!」「リーフ! 正々堂々勝負するのだ!」
「うるせー! 全球ストレート勝負を要求するバッターみたいなことを言いやがって! これが俺の戦い方だ! あとカナン、お前はどっちの味方なんだよアホ!」
味方からも野次られる理不尽に耐えつつ、さらにゴーレムを創り出そうとしていると――
「うおおおおおおおっ!!」
ドガアアアアアアアァァッ!
三体のゴーレムが一斉に吹き飛ばされた。
ゴウマは強引に両腕を振り回し、その勢いだけでゴーレムを弾き飛ばしたのだ。◯シアの赤きサイクロンかよ。
続けて三体を破壊したゴウマは、額から血を流しながら得意げに胸を張る。
「ガハハ! この程度で俺がどうにかなると思ったか!? ――ほらよ、お前にも返してやらぁ!」
ゴウマはフォレストゴーレムの破片をむんずと掴むと、それを俺に向かってブンッと投げつけた。
ヒュッ――
石塊が俺の顔面の真横を猛スピードで通り過ぎ、観客たちも慌てて飛び退く。そしてそのまま後方の民家へ――
バゴオオオオオオオン……!
民家が跡形もなく吹き飛んでしまった。なんちゅう威力だよ……!
観客のオーガの一人が泣き崩れる。
「ああー! 族長、なにやってくれてんだよ!」
「悪い、やっぱ投げんの下手だな俺。今度建て直し手伝ってやるから勘弁な!」
豪快に笑うゴウマを見て、俺の顔面は真っ青になった。
以前、石の欠片が当たった程度で気絶した俺だ。あんな直撃を食らったら、確実に肉片すら残らない。
ならば、やることはひとつ。
物量で押し続けるしかない。
なんかフォレストゴーレムとの戦闘を楽しんでやがるからな。それを切らすか飽きられたときに俺が終わる。だからその前に――
「いけっ! フォレストゴーレム!」
俺は再びフォレストゴーレムを呼び出しながら、ゴウマから必死に距離を取るのだった。
◇◇◇
「――はあ、はあ、はあ……」
「フン、そろそろ終わりか?」
もう何十体、ゴーレムが破壊されただろうか。
「まだだっ……! フォレストゴーレムっ!」
新たに創り出したフォレストゴーレムが飛び出していく。それをゴウマがひと撫でで破壊した。
その様子に周囲のオーガたちは大盛り上がりだ。
「いけいけ族長!」「エルフも弱ってきてるぞー!」「土人形がどんどん小さくなってるじゃねえか!」
確かにその通りだ。
俺が今作ったフォレストゴーレムは、当初の三メートルの巨体ではない。今やその半分の百五十センチほど。成人男性よりも一回り小さいサイズになっていた。
そんな俺の有り様に、観客たちはそろそろ決着だと思ったのだろう。観客のボルテージが一層高まっていく。
だが――
「ぐっ!」
ゴウマの拳が一瞬鈍る。その隙に新たなフォレストゴーレムの拳が、ゴウマのみぞおちを的確に打ち抜いた。
「チッ……クソがあっ!」
それを振り払い叩き壊すゴウマ。だがその顔には、これまで見せなかった困惑の色が浮かんでいた。
「おい、どうした族長!」「さすがの族長も体力切れか?」「いや、なんか様子がおかしいぞ……」
そんな観客のざわめきを聞きながら、俺は新たなフォレストゴーレムを創りだす。
今度はさらに形を整える。
戦いの中で磨き上げた、今の俺に作れる一番の造形。
そして――
完成した一体に周囲がざわめいた。
ウエストはキュッとくびれ、しなやかな身体のラインにはビキニを模した草花が生えている。顔立ちは可愛らしく、その頭には鬼の角。
「てめぇ……」
ゴウマが俺を睨みつける。――だがすぐにその表情が情けなく歪んだ。
ついに完成した。1/1スケール フォレストゴーレム鬼娘。
それを前にして、ゴウマはよろよろと後ずさりを始めるのだった。
次回決着。そしてついに100話です! ここまでお読みくださりありがとうございます。
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