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【完結】呪われた王子と幸せにしたい少女  作者: Nadi
三章

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71/77

ディナディアラピス

三回も四回も書き直してました。

お待たせしました。

 しばらく歩くと、ぼやっとした青白い光が見えてきて、その光の方へと歩いて行く。


光に近づくと、こんなとこには似つかわしくない滑らかな布の巨大なカーテンがフェリクスたちの背を遥かに超える高さから吊り下げられている。


吊り下げているもとは暗くて見えなくなっている。


 カーテンは何枚も重なっていて、その布の向こうに光の原因があるようだ。


 「これ、どっからつられてんのかしら? カーテンもキラキラしててきれいねー」


こんな非現実的な光景に素直に感動して、ゼノが上を見上げる。


 フェリクスは、迷わずカーテンをかき分けて、光源へと向かって進んで行き、それにロゼたちも続いた。


 カーテンの先には、キエリの瞳の色に似た透き通る水色の巨大な結晶が鎮座していた。


 ロゼが目を見開いて驚き、口があんぐりと開く。


 「な、にこれ、大きい! 魔力を持つ結晶? これもキエリと同じ魔力みたいだけど‥‥」


ゼノは、驚きと欲望にまみれた目をギラギラと輝かせている。


 「う、う、う、うそー!? こんな大量の魔力を持つ結晶が存在するのー!? はぁ、はぁ、研究に持って帰ってもいいわよね」


ゼノが、じゅるりとよだれを拭って結晶に触ろうとするので、ロゼが止めに後ろからゼノを羽交い絞めにした。


 「ちょっと、こんなとこにあるものなんて普通じゃないでしょ! 一旦落ち着いて」

 「離しなさい! この子はアタクシが貰うんだからー!」

 「頼むゼノ、静かにしてくれ。彼女と話しがしたいんだ」


ロゼとゼノはきょとんとして、彼女とはいったい誰なのかわからず、フェリクスを見る。


フェリクスの視線は巨大な結晶に向けられていた。


 『あなたは、フェリクスね。わたしもあなたと話してみたかった。あの子があれだけ大事に想う、あなたに‥‥』


ロゼが驚きのあまりにゼノから手を離して後ずさった。


 「話した? この結晶が話しているのですか?」

 「みたいだな」


静かにしろと言われたのに、余計にゼノの研究欲に火がついて騒ぎ出す。


 「素晴らしいわ! お、お願い、アナタを研究させてよぉ~、悪いようにはしないからん」

 「ちょっとゼノ、空気読んでよ!」

 『いいよ、わたしはわたしを望むものを拒まない‥‥拒めない。あなたが望むならわたしのからだから、欠片をとって』


水色の美しい光に意識がいっていたが、結晶をよく見ると、何度も削り取られた痕があった。


それが痛々しい傷に見えて、ゼノは興奮をやっと抑えて落ち着いた。


 「‥‥まずアナタのこと知らなきゃだったわね。アタクシってばせっかちさんだったわ。ごめんなさいね」

 『わたしのこと‥‥? わたしは人間からディナィアラピスと、願いを叶える石と呼ばれている』

 「願いを叶える‥‥ふーむ、たしかにこんなに莫大な魔力を使えればいろんなことに使えちゃうわねん。可能性は無限大」


フェリクスが顎に手をあてて考えていたが、顔を上げて結晶を見る。


 「ディナディアラピス、先ほど『あの子』と言っていたが、もしかしてキエリのことか? 俺のことを知っているようだし、一体そなたは何者なんだ」


 ディナディアラピスはしばらく何も言わなかったが、放つ水色の淡い光が不安定に弱くなったり、強くなったりを繰り返していて、まるで何か悩んでいるようだった。


 『あの子はわたしの欠片から生まれたの。ある人の手によって‥‥そして今はあの人の所にいる』


フェリクスは目を見開き、ディナディアラピスに詰め寄った。


 「頼む! 彼女の居場所を知っているなら教えてくれ! キエリは、俺にとってかけがえのない人なんだ。助けたいんだ‥‥頼む」


フェリクスの必死の訴えにディナディアラピスの淡い光がより弱くなる。


 『迷っていたの‥‥あの人はあなたがこないことを望んでいる。望みを叶えるのがわたしの存在意義。それを無視すれば、わたしはただの石と変わりない』

 『‥‥けれど、わたしはあの子と繋がってしまった時、伝わった。キエリ‥‥あなたがくれたあの子の名前。あなたに名前を呼ばれると、あの子はとても心が温まっていたわ』

 『あの子を通して、知ってしまった。望みを叶える以外でも、心が満たされることがあるだなんて知らなかった』


結晶の放つ光がフェリクスたちの前に集まり、空間が歪むと黒く重厚な扉が現れた。


 『そこからあの人の所に行ける。でも、気を付けて‥‥彼は残酷よ』

 「‥‥ありがとう」


フェリクスは、そっとディナディアラピスに触れて、目を伏せて頭を下げた。


結晶のからだには温度などなく、ひんやりとするが、放たれる光は温かく感じた。


 「ディナディアラピス、そなたは俺から見れば、立派に感情を持っていて、ちゃんと人格もある。願いを叶えないだけで、そなたがただの石ころになるだなんて思えないよ」


 大人しくしていたゼノが優しくディナディアラピスに微笑んだ。


 「そうよん、キエリのもとなだけあって謙虚さんね。あなたには十二分に価値があるのよ。キエリを助けて、無事に帰ってきたらじっくり、たぁ~っぷり調べつくしてあげるから、待っててねん」


ディナディアラピスは少し光が揺らいだが、フェリクスたちには表情のわからない彼女の気持ちを完全にはくみとれなかった。


 『‥‥‥あの子があなた達と出会えていてよかった。わたしの影響で一時はあの子の心は不安定になっていたけど、きっとあなたと‥‥フェリクスと一緒にいれば大丈夫』

 『あの子はもう、キエリとして生きている‥‥あの子を頼みます』


フェリクスは力強く頷いて、黒く重厚な扉の取っ手に手をかけた。

変わった名前にするんじゃなかった

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